表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
失恋  作者: Re:over
19/20

大学3年生春休み


 フラれたその次の日のことだ。大学の保健室から電話が来ていた。俺は濃厚接触者になったのだ。


 2週間の自宅待機。別に、何でもない時なら仕方ない、という言葉で済ませることができた。しかし、ただでさえ拗れていた恋愛がようやく成就し、ハッピーエンドかと思えば即自滅し、精神はズタボロ。彼女と別れたのは他の誰でもない、自分のせいであり、その苦痛を誰かに押し付けて逃げることもできなければ、友達と騒いで忘れることもできない。この2週間はずっと自分と向き合い、ずっとどうすればよかったか、これからどうするべきか、を考えていた。


 でも、そんな早く開き直ることもできず、毎晩、彼女と復縁する夢を見た。しかし、現実は酷なもので、彼女――いや、元カノだが――にTwitterをブロックされていることに気がついた。そしてまた精神にダメージを負う。


 もういっそ、次の恋ができればどんなに楽だろうかと思った。何か、別の気持ちで上書きして、めちゃくちゃにして、その辺の川に投げ捨ててしまえば何事もなく呼吸できるのに、朝に眠る生活は留まるところを知らなかった。2週間ずっと昼夜逆転、1日1食、酒に浸り、好きなだけ眠る。人として最悪の生活を送った。


 現実逃避ばかりしていても、ふとした瞬間に過去がフラッシュバックして、胸に穴が空く。喪失感。右から来ては左から来る。上から来ては無から現れる。これがボクシングなら観客は飽きて帰ってる。


 いろんな友達は「付き合えたから前進してる」と言って励ましてくれた。けど、俺にはとても、前進とは思えなかった。自分が最低な人間であるということが自分でも分かったからだ。


 俺は彼女の「恋愛の道具」という言葉に納得したのだ。改めて考えれば、俺は彼女のことを「恋愛の道具」として見ていたと思う。なぜなら、「自分では自分のことを肯定できないから、誰かのことを肯定することで、その人から肯定されたい」という考え方をしていた時期があったからだ。おそらく、俺は共依存したいだけの人間なのだ。そう考えると、俺はもう恋愛しない方がいいのではないか。


 自分の思ったことをすぐに口にしてしまうのも、考え方や価値観も、明らかに普通ではないと思う。このシリーズだって、普通の人間はこんな恥ずかしい話を書いて、公開することなんてしない。前提が普通だったが、蓋を開けてみればマイナスな異常と分かったということは、見かけ上、後退していることになる。


 こういったねじ曲がった考えを固めた頃に自粛期間が終わった。


 自分が最低な人間だとしっかりと認識したところで、自分のことが嫌いになった。いや、嫌いになれた、というべきかもしれない。


 執筆活動をやっている理由の1つは生きていた証を残したい、というものなので、しばらく執筆できていない。就活だって、自己PRを書ける気がしない。例え、ボランティア活動をやっていた経験があったとしても、それは地域や自然ではなく、自分のためにやったことだろうから。


 生きていても、俺は誰かのために何もできない。そんな気がした。


 また1つ、拗れたところで俺は21歳になった。そして、今年もMからお祝いメッセージが届いた。俺は、Mともう1回出掛けたりしたらワンチャンないかな、なんて思った。本当にクズだと思う。


 しかし、お祝いメッセージともう1つ、メッセージが来た。それは「もう、この関係を終わらせよう」といった旨のものであった。俺は改めてフラれたのだ。俺に「嫌だ」と言う権利はない。これから頑張ってね、と在り来りな言葉を返した。


 もうすぐ春休みが終わる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ