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4.勇者四人組

 勇者がやって来た。

 四人組で、三人が男性一人が女性という組み合わせ。


「お前が魔王か! 悪いがここで倒させてもらう!」


 一番に勇ましい声をあげたのは、剣を抱える十六歳くらいの少年。お金がないのか地味な装備だが、剣だけは質の良さそうなものを持っている。


「我が国の誇りをかけて、魔の者は殲滅させていただきます」


 二番目に発したのは、二十代半ばくらいと思われる青年。凛々しい顔つきとさらりとした長めの金髪が麗しい。重そうな鎧を身にまとい、詩人男性が隠れられるぐらい大きな盾を片手で持っている。力持ちか。


「アタイが皆ぶっ潰してやる! 覚悟しな!」


 三番目に強気な言葉を投げてきたのは、四人組の中で唯一の女性。これまた、十六歳くらいの外見をしている。少女ながら少年のような声と表情。薄着なので、腹筋が発達している様子を目にすることができる。


「パパラパラティラパパラパラティラパパラパラティラ」


 四番目に何か言ったのは、フードで顔がほとんど見えない男性。四人の中で唯一陰気な雰囲気を醸し出している。彼はどちらかというと、魔王の手下の方が似合いそうだ。


「貴方達と争う気はありません。お団子を差し上げるので、速やかにお帰り下さい」


 四人に向かって、私ははっきりとそう言った。

 それに対し素早く返してきたのは、鎧を身にまとった青年。


「何を馬鹿げたことを……!」

「美味しいですよ、お団子」

「ふざけないでいただきたい! 我々は食料を貰いに来たのでは——」


 だが、お団子の魅力に抗えたのは彼一人だけだった。


「う……上手そうだな、団子……ホントにくれんのかよ……?」

「アタイは好きだぜ! 団子は何味でもうまいよな!」

「パパラパラティラダンゴパラティラパパラパラティラダンダンゴ」


 剣士の少年、強気な少女、フードの男性は、お団子という言葉に魅了され戦闘意欲を失っている。


「では出します……お団子出し放題!」


 すると、眩い光が空間を満たし、数秒後、大量のお団子が室内に現れた。すべて皿に乗っている。


「さぁ、好きなだけ持って帰って下さいね」


 私は笑顔で言う。

 すると、剣士の少年、強気な少女、フードの男性は、お団子を拾い始めた。


「よっしゃ、これゲット」

「おい! それは俺のだろ! 取るなよ!」

「はぁ? どう考えてもアタイが先に拾ってただろ」

「俺が一番多く拾うんだ!」


 少年と少女は喧嘩している。


「知るかってんだ。大体、落ちてるもんなんてな、取った方のもんだろ」

「ふざけるな! 俺の方が活躍しただろ!」

「パパラパラティラダンゴパラティラパパラパラティラダンダンゴ」


 お団子欲しさに少年と少女の間で喧嘩が勃発。その隙に、フードの男性はそそくさとお団子を回収していく。結果、最終的にフードの男性が一番多くお団子を手に入れることとなり。今度は、少年と少女が同時に、フードの男性に当たり散らす。


「アタイらが話し合ってる隙に取ってんじゃない!」

「抜け駆けはずるいぞ!」

「パパラパラティラダンゴパラティラパパタラパラティラ」


 しまいに三人は掴み合いの喧嘩を始めた。

 唯一お団子取りに参加していなかった盾と鎧の男性はとっくに帰ってしまっているが、三人は気づいていない。


「アタイの話、聞いてんのか!?」

「パパラパラティラダンゴパラティラパパラパラティラダンダンゴ」


 こうして、仲違いした三人は、バラバラになって帰っていった。

 お団子だけを懐に詰めて。



 ◆



「す、素晴らしい撃退でした!」


 プルルは私を褒めてくれた。


「さすがは魔王様!」

「褒めすぎです」

「やはり、人間の方は我々とは違う! 人間の意地汚さを理解していらっしゃいますね! 感服致しました!!」

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