表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/11

11.私の魔王様暮らし

 黄金の女神から放たれたのは、虹色の輝き。

 心の奥底まで照らすような、目が燃え尽きそうなそんな強い輝きだった。


 一体何が起ころうとしているのか理解することはできない。


 それでも私は信じる。女神はきっとこの国を護るための力を与えてくれる、と。彼女がそう言ったのだからそうなのだ、と、私は自分に言い聞かせる。


 そして、虹色の光が消え去った時。

 男の子の勇者二人は全身の力を失い、立てなくなっていた。


「な、なんだこれ……ちからがにゅける……?」

「オメ……タス……?」


 痩せ細り、脱力し、その場で消滅した。

 泣いていた女の子勇者も同様だ。


「き、消えた……!」


 勇者に帰ってもらいたいとは考えていたものの、まさか消滅するとは思わず。驚きを隠せない。

 愕然とする私に、女神は話しかけてくる。


『問題ありません。彼らはもといた場所へ戻されただけのことです。死んだのではありません』

「なら良かった……」

『これで勇者はしばらく訪れないでしょう。少しは穏やかに暮らすことができるはずです』

「ありがとうございます、女神様」


 なぜ魔王様の能力に女神を呼び出すものが入っているのかは謎だ。真逆に位置するような存在だけに、どうやって呼び出したのか謎である。ただ、呼び出せたということは事実。そして、願いを叶えてもらえたということも事実である。


『それでは、また』


 そう言って、女神は消える。

 姿が見えなくなる直前、彼女がほんの一瞬だけ微笑んだ気がした。


「や、やりましたね! ソラ様!」


 一番に声をあげたのはプルル。

 顔面を激しく震わせながら、嬉しそうな声を発する。


「さすがですわ」


 メディも柔らかな笑みを浮かべながら褒めてくれる。


「さっ、さすがは魔王様!」

「凄いの! びっくりびっくりなの!」

「素晴らしいにんじん」


 皆それぞれ個性的な容姿をしているが、嬉しそうな顔をしていることだけは共通している。

 それを見ていたら、私まで明るい気持ちになってきた。



 ◆



 こうして、二度目の勇者撃退に成功した私は、魔王様としてさらに崇められることになった。

 正直、「魔王様、魔王様」と呼ばれるのはしっくりこない。だって私は魔王様ではないから。私は人間で、空という名前がある。それゆえ、プルルやメディのように「ソラ」を付けて呼んでもらえる方が好きだ。

 でも、魔王様と呼ぶからといって嫌いになるわけではない。

 人間だからと嘲笑うのでなく、人間であっても受け入れ同じように扱ってくれる皆が、私は好き。そして大切。



 ◆



「いやぁ、平和ですね!」

「そうですね」


 あれ以来、勇者の襲撃は大幅に減少した。

 物凄く弱そうな単独の勇者が迷い込んできたりすることはあるが、魔王様退治を本気で思い向かってくる勇者はもういない。諦めてくれたのだろうか。


「これからもずっとこんな風に平和だと良いですね」

「ソラ様がいて下されば、心配などありません!」


 魔王様を務める契約は五年。

 私が魔王様であれる時間はまだまだある。


 召喚された当初は早く帰りたかった。こんなところで過ごすなんて嫌だと思っている頃もあって。しかし今はもう嫌だなんて思っていない。もちろん、日本にいる家族のことが気になることはあるけれど。でも、契約が終わるその日までは、この場所が我が家。


「けど、勇者があまり来なくなったら、私の仕事がなくなってしまいますね」

「勇者を減らすという大仕事を成し遂げて下さったのはソラ様ですよ!」

「いいえ。それは違います。それは、あの女神様がしてくれたこと。私の成果ではありません」

「えぇっ!? そんな、謙虚な!!」


 平和になったこの国で、私の魔王様暮らしはまだ続く。



 —完—

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ある日突然、「魔王様」になった主人公が、段々とその世界に居場所を見つけていくストーリーに、とても惹き込まれました。また、勇者を撃退する方法も興味深く、与えられたお団子とみかんの力も、面白か…
[良い点]  種族は問題ではなく。ただ、彼らが彼らだから。  育まれた親愛が温かく。その分勇者パーティーとの差を感じました。  ハズレスキルのように思えても、要は使い方次第。平和主義なところも現代人っ…
[良い点] 能力がお団子だせるだけとかって、魔王らしからぬ力がとても面白かったです。あと最初の勇者パーティの四人目。 ( *´艸`)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ