表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/11

1.魔王様になる

 気がついたら、見知らぬ場所にいた。


 白い石の壁に囲まれ、床には赤いカーペットが敷かれた、そんな場所。

 しかも私は、ソファのような椅子に座っていて、頭には金色の王冠が被せられている。


 ……何が起きた?


 私の名前は、大海(おおみ) (そら)。日本の大学生。一人っ子で家族とマンションで暮らし趣味はゲームという、探せば百人に数人はいそうな女子だった。


 その私が、どうしてこんなところにいるのか。わけが分からない。


 見知らぬ場所で一人戸惑っていると、やがて、私が座っている椅子を直進したところにある大きな扉が開いた。


 そして、誰かが現れる。


「おおっ! これはこれは!」


 開いた扉から現れたのは、人間ではなかった。

 いや、体自体は人間のようなのだ。ただ、頭部がスライムのようで、ぷるぷるしている。目と口と鼻は一応あるから、人間に近い気もする。が、緑色のスライム部分が常にぷるぷる震えているので、それによって人間らしさがグッと下がってしまっている。


「貴女様が今回の魔王様ですか!」

「……え」

「状況が掴めていらっしゃらないようですので、ご説明致します!」


 言葉を発する度、緑色のスライム部分が微かに震える。

 この状況を説明してくれるというならありがたいことだが、正直、ぷるぷるしているのが気になって仕方がない。そちらについて先に説明してほしい、と思ってしまうくらい。


「我々の国では、五年に一度魔王様を入れ替えるという制度がありまして。五年に一度、魔王様召喚の儀式を行うのでございます。そして、その際に召喚されたお方に、五年間、この国の魔王様を務めていただくのです」


 ということは、私が今回の魔王様?

 そんな馬鹿な。


「これから五年間、よろしくお願い致します!」

「えっと……意味が分かりません」

「んなっ!? 丁寧に説明したにもかかわらず、ご理解いただけないと!?」

「元の世界に返して下さい」


 分かるわけがない。

 いきなりこんな奇妙なことに巻き込まれて、すんなり「はい、そうですか」なんて言えない。


「それは不可能なのです!」

「どうしてですか」

「貴女様が、今回の魔王様に選ばれてしまったからです!」


 知るか! という気分だ。

 このままここに残ったら、日本の私は失踪したことになるだろう。そうなれば、警察に迷惑がかかるだろうし、親や近所の人たちを心配させることになってしまうかもしれない。そんなのは困る。


「魔王をする気はありません。帰ります」

「不可能です!」

「……どうしてですか」

「召喚された時点で五年契約は完了しておりますので!」


 言いきって、満足そうに顔をぷるぷるさせてくる。

 不愉快でしかない。


「では早速! 魔王様のお名前をお聞かせ下さい!」

「……大海 空です」

「オオミ ソラ様ですね! 承知しました!」


 頭部だけスライムの彼は、一度しっかり頭を下げる。そしてゆっくりと頭を上げると、「自分はプルルと申します。魔王様に事情を説明する役割を長年務めてまいりました。よろしくお願い致します!」とスピーディーに自己紹介をしてきた。


 こうして、私の魔王様人生が始まった……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ