決戦への案内標識
仲春さんと悠陽くんに挨拶をして外に出た頃にはもう空は暗くなっていた。
俺は天の数歩後ろを歩きタイミングを図るもなかなかチャンスは訪れない。
ヤバいかな...
このままだと話せないまま家に着いてしまう。
そしたらきっともう機会はないだろう。
そのときふとある案内標識を見つけた。
傍にある小さめの山の方に矢印が向いており『城山』と書かれている。
空には星が輝いている。ここでもこんなに綺麗に見えるんだ。
きっと山の上からならもっと綺麗に見えるだろう。
「なあ、天。」
そう呼び止めると天はビクッと体を震わせ硬直した。
「な、なななナンデショウ!?」
いや、まだ呼んだだけなのに動揺しすぎ。
「ここ、登ってみない?」
案内標識を指差しながらそう言う。
「で、でもあんまり遅いとお母さんが心配するかも...だし...」
「そうだな。」
俺はスマホを取り出しメールを打つ。
送り先と内容は決まってる。
「...昴?」
お、もう来た。早いな。
「オッケーだってさ。」
画面を天に見せる。
「え、えぇぇ!?」
「よし、行くかー。」
わざとらしく棒読みでそう言って矢印で示されている方向に向かう。
天は少しの間呆然としていたがついてきてくれた。
それを確認し内心ホッとする。
ここで『そんなの関係ない』って帰られたら打つ手なしだったからな。
さあ、行こう。
ドキドキと早鐘を打つ心臓をそっと押さえつける。
決戦の舞台に。




