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開けられた扉

仲春さんに話を聞いたあと俺は天のいる部屋の前まで来ていた。


『頑張って青春してくださいな。』


ここに向かう前に仲春さんに言われた言葉が頭の中でリフレインする。

何かのアニメで聞いたことがあるような台詞セリフーーーでもなんだか温かい言葉。


俺はゆっくりと深呼吸をしてーーー


ある決意をした。


いや、決意を固め直した、という方が正しいか。

天に例え好きな人がいたとしても俺の気持ちは変わらない。

なんだか傷心しているところにつけ込むみたいで申し訳ない気持ちはあるけど。

でも止まらなかった。


「...よし......」

小さくそう呟き俺は扉をノックする。


返事はない。

しばらくすると内側からゆっくりと扉が開けられた。

「ごめんなさい。仲春さん。今日なんです...け......ど...」


ラフなスウェット姿で少し乱れた髪のまま天が出てきて扉を叩いたのが俺だと認識した瞬間ーーー天は固まった。

「ええっと...迎えに来た...」

最後まで言う前に勢いよく扉を閉められる。


「えっ!?ちょっ!?」

「待って!」

扉の向こうから慌てたような声が聞こえ俺は冷静さを少し取り戻す。

「十分だけ!十分だけでいいからちょっと待って!」

「え...あー、うん。わかった。」


そしてバタバタと音が聞こえ出す。

概ね片付けとかをしてるんだろう。

時折ものが倒れたりする音も聞こえる。


そして十分を少し回った。

扉の横に寄りかかってボーッとしているとバタンと勢いよく扉が開けられた。

よほど慌ててたのか顔を赤くしたそらは可愛らしい私服に身を包み髪は一つに括っていた。

肩には少し大きめの鞄が掛けられている。

「じゃ、じゃあ!帰ろうかっ!!」

思いっきり声が裏返っていた。


「あの...あのな、天。」

せっかく機会が訪れたのだから言う事を言わないとと口を開くもその声は届いていないのか天はそのまま階段を降りてしまった。

ポツンと取り残される俺。


「...まあ、帰り道にもチャンスはあるよな?」

先送りにするのは良くないとは思っていても今はそうするしかなさそうだ。

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