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ノック

見てたラブコメもののアニメがひと段落した所で私はヘッドホンを外し机の上に置いた。


長い時間パソコンの画面を見てたからか目をギュッと閉じるとこめかみの奥が鈍く傷む。


パソコンの隅に表示された時刻を見るともうおよそ半日ほど時間が飛んでいた。

私には時間遡行の能力でもあったのだろうか...!

まあないかー。

仲春さんにオススメされたアニメ。どれも本当に面白かった。今までなぜこんな素晴らしい作品を見てこなかったんだと言うほどに。


「さてと...」

仲春さんにオススメされたアニメは数作品見た。流石に全部は数が多すぎて見れなかったけど。

ライトノベルもながらでだったけど全部よんだ。


一区切りだ。

もう昨日一晩泊めてもらったんだからもうこれ以上長居するわけにはいかない。いくら昔からよく来ていて本当のお兄ちゃんみたいな間柄の人であったとしてもこれ以上の迷惑はかける訳にはいかない。

昨日だって前触れもなしに突然泊めてもらったのだ。


もう家に帰らないと......


「あーー...帰りたくないな......」

昴に会いたくない。会いたいけど会いたくない。すごく矛盾した気持ちが渦巻く。


どうせ私はなんの才能もない。特別なものは何も持ってない。


比野守さんみたいな才能もないし、比野守さんみたいに可愛くもないし、凄くヤキモチ焼きだ。自分はなんの努力もしてないくせに。

ずっと昴は私の傍にいてくれるんだって勝手に思い込んでただけなのだ。

そんなことあるわけないのに。


「私は...『選ばれし者』にはなれない。」

さっき見たアニメの主人公のように。


今まで散々振り回してきたのだ。

振り向いたらいつでもそこに昴はいると思ってただけなのだ。

そう思いたかっただけなのだ。


だから気がついたら昴はそこからいなくなってた。振り向いてもそこには誰もいなくて。


でもいいんだ。

きっと昴は私なんかより比野守さんみたいな人と一緒にいる方がいいに決まってる。


涙は枯れたのかいくら悲しくっても胸が痛くても出てこない。

きっとどこかでこれが夢だったらいいのにだなんてまた都合のいいことを考えていて現実逃避してるのだ。


私が...私さえ我慢すれば......いつも通りでいれば何も変わることはない。

昴は幸せにならないといけないんだから。


もうだいぶ遅い時間になってきた。

そろそろ帰ろう。


そう思っていたときーーー


コンコン


扉がノックされた。

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