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私はきっと、この先暗闇に包まれる

波の音が聞こえる。


行ったりーーー返ったりーーー

何回も何回も、途切れること無く。

こうやって水は巡回しているのだ。


酸素不足で頭がぼーっとする。喉もカラカラだ。

やはり普段からあまり運動していないのが原因だろうか。


そのときポタリ、ポタリと雨が降ってきた。

だが何かがおかしい。

空はこんなにも清々しいほどに晴れているというのに。


この雨を降らせているのは...


私はそれを拭うことも億劫に感じ服が汚れることも気にしないで砂浜の上で座り込んだ。

ぼんやりとした頭の中で先程見た光景が浮かぶ。

頭を振り、耳を塞いでそれを振り払おうとしても全然消えてくれない。


「......んで......なんでっ......」

ずっと心を閉ざしていたという昴が頑張って周りと触れ合おうとしているのは良いことなのだ。いずれ心から信頼出来る人を作って、毎日笑って楽しく過ごして...結婚して...自分の居場所を作るのだろう。


そしたら私の入る余地なんてあるのかな?

私と変わらずにいてくれるのかな?


その答えは分からない。

だが一つだけ確かな事がある。


いずれ私も今の家を出る日がくる。

その場所に昴はいないだろう。こんな風にいつも一緒に居られる日はなくなってしまう。

一度失った物はもう取り返す事なんて出来ないんだから。


そんなの......昔、身を持って体験したことだ。


涙は止まってくれない。このまま身体中の水分がなくなってしまうんじゃないかと思えるほどに。


今は何時だろう。急いで出てきたから携帯や時計なんてものは持ってない。


こっそり家を出て来たからお母さんも心配するかもしれない。

でも帰りたくなかった。

昴と会うのが怖い。表面から見えない心の言葉を気にしてしまう。

表面上では良くしてくれているけど、でも本音は違うんじゃないかと...


「あれ?そらちゃん?」

後ろの方から聞き覚えのある声が聞こえ慌てて涙を拭う。

「お、おはよう...ございます。」

涙は拭ったが多分バレバレなのだろう。

顔も引きつってるかもしれない。


「...天ちゃん。......良いとこ...行こうか?」


「いいとこ?」

「パーっと楽しい気分になれるよ、きっと。僕の『好き』を全部教えてあげる!」

「はあ...」

まあ、今日は特に予定もなかったし、お母さんへの連絡は後ですればいいだろう。

それにしばらく家には帰りたくなかったし。


「...分かりました。」

「よし来た!じゃあ行こう!」

そう言って歩き出す『警察の制服』を着た近所に住むお兄さんに私は重い足を引きずりながらついて行った。

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