いつも通りすぎる朝
「......ばる...昴ってば!昴さーん!あっさですよー!」
翌日。
俺の意識はそんな声で覚醒した。
いつの間にか開けられていた窓から差し込む光から逃れようと布団の中に退避しようとする。
だが声の主に布団を強引に剥ぎ取られそれも叶わない。
「む...」
光からの退避場所を奪われ渋々目を開けると天がいた。
「...なんだよ、せっかくの休みだってのに...」
「せっかくのって昴毎日休んでるじゃん。毎日昼にならないと起きないし。」
「ああ...、いや、まあ確かにそうではあるけど。...ああ、あれだ。俺は一日一日を大切にするために毎日新鮮な気持ちでいることを大事にしてんだよ。」
「なにそれー。」
そう言いながら天は小さく笑う。
ふむ、それとなく見る限りいつもと何も変わらないように見える。
化粧でもしているのかクマもない。
時計を見るとまだ朝の七時だった。
天の部屋を最後に見たのは午前三時頃だったはずだからそれからすぐ寝たとしても睡眠時間は四時間ほど。
だが天の睡眠時間はもっと少ないだろう。
だって俺が部屋に帰るそのときにも天はペンを置く気配がなかった。
いっそ昨日、正確には今日見た光景が俺の見間違いか、夢の中の話であったというほうがまだ説得力がある。
だが、それはない。
なぜならいつも以上に頭が重く寝不足なためな頭痛がするから。
天の睡眠時間のほうが少ないだろうが俺の今日の睡眠時間も四時間ほどなのだ。
いつも少なくても六時間は睡眠時間を取っている俺からしてみれば睡眠時間4時間というのは全然寝足りない。
「それで...こんな時間に起こしたってことは何か理由があるんだろうな?」
「うん、今日お母さんが市内のショッピングモールに連れていってくれるんだって!」
「市内?」
「うん、分かりやすく言うと県庁所在地。中心地。つまりここよりちょっと都会ってことだよ!」
「うん...そっか。いってらっしゃい。」
「何言ってるの?昴も行くんだよ。じゃないとこうして起こしたりしないって!」
「はあ!?」
俺に話も通さず何故か勝手にメンバーに数えられていた。
「ちょっと待て!俺は行くなんて一言も...」
「なに言ってんのさ!せっかくの遠出だよ!お出かけだよ!」
「えー...、いや、でも俺は...」
「どうせ予定はないでしょ?ええと...それにほら!それに市内にはここより大きな本屋とかもあるよ!」
「よーし、すぐに着替えるから外出待っててくれ。」
なんだ、それをもっと早く言ってくれないと。
本音を言うとこの町に来て唯一それだけかが不満ではあったんだよな。
この町にも何件か本屋はあるけどやはりもっと品揃えが充実しているところに行きたいし。
「...昴ってほんと単純だよね...」
天が呆れたようにそう言ったが敢えて聞き流し嬉々として俺は着替えを選び始めた。
まだ時間はある。
天のことはまだ知らないことの方が多い。
そりゃそうだ。だいぶ話しては来ているがまだ天と知り合ってそんなに時間は経っていないのだ。
大事な事を聞くのは今じゃなくてまたタイミングがあったときに聞けばいいか。