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箱入り娘とすれ違い片想い

向かいあって二人で作ったチャーハンを口に運ぶ。

パラッとしていてなかなかの出来だと思う。

結局天は途中で断念してしまったため結局ほとんど俺が作ることになったが。


「天ってさ...」

機嫌もだいぶ直ってるようだったのでいよいよそう切り出す。

「んー?ふぁにぃ?」

「うん、何言ってるのかわからん。」

口いっぱいにチャーハンを頬張っていたので何言ってるのかがよく聞き取れなかった。

「何って言ったの。」

きちんと噛んで飲み込んでから天がもう一度言い直す。

「あー...えっと...」

自分から話を切り出したはいいもののどういえばいいのかが分からず口篭る。


「そこまで言ったなら最後まで言って。気になるし。」

「まあ、それもそうだよな。」

天の言ってることは最もだと思い覚悟を決める。

「...天って学校ではどんな感じなんだ?」

「...学校...」

天の顔が一瞬で曇った。

「なんでそんなこと聞くの?」

「なんでって...いや、えと、単純に気になったっていうか...ほら、この前比野...クラスメイトと会ったとき様子が変だったから。」

比野守と言いかけて慌てて言い直す。

さすがに機嫌が直ったとはいえ比野守の名前を出すことはやめておきたい。


天はしばらく渋っていたがやがて諦めたように溜息をついた。

「...まあ、いっか。昴なら。」

なんだかんだ理由をつけて断られると思っていたが案外あっさりと教えてくれるようだ。


「私ね、学校で嫌がらせを受けているんだよね。」

「...っ!」

嫌がらせ?

比野守はファンクラブなんて言っていたけどやはりそれは嘘ってことか。

「い、嫌がらせって...」

天は顔を伏せたまま重々しく口を開いた。


「例えば...毎日靴箱に大量の手紙が入っていたり...」

「ほう。」

「その手紙の内容も『放課後に屋上に来てください』とかって感じで......」

「ん...?」

それって...

「それに学校で歩いていたらすごく色々な人にジロジロ見られるし、私に話しかけようとする人がいたら他の人たちが必死でその人を止めるの。私に話しかけないようにって。」


それは天への嫌がらせでそうしているんじゃなくてただ抜け駆けするやつがいないようにしてるだけなんじゃ...

「あとはペアとかグループになるときに誰も私と組んでくれなかったりとか...」

うん、たぶんそれもそうだな。

うっかり天とペアなんかになったりしたらファンクラブとやらからの怒りを買いかねない。


「やっぱり、私嫌われてるのかな...」


なんて勘違いしてんだぁぁぁっ!?


違うだろ!むしろ逆じゃん!超人気者じゃねぇか!!

毎日呼び出しのための手紙って!それ『告白』のためだろ!!

「ち、ちなみにだけど、天、今まで異性との交流ってあったか?」

「え?...ええっと、ないかな。中学まではずっと市内の女子校で。寮に入ってたから。ここには高校になってから戻って来てて。」

女子校にいたのならそういうことに疎くても納得いく話かもしれない。

それにしても疎すぎな気はするが。

今どき靴箱に手紙を入れるやつがいるなんてことにも驚きだがそれにしても自分に向けられている好意を嫌がらせとして認識しているという天に驚きだ。

いくらなんでも無知すぎる。

「あ、そういえば。昔お父さんがまだいた頃に『男はみんな天に害を与える敵だ』って言ってたから小さいときからあまり男の子とは遊んで来なかったなぁ。」

しみじみと天がそう言う。


天のお父さんよ。

気持ちは分かるけどさすがに徹底し過ぎだ。おかげでこんなに無知な子に...


「友達とかっているか?」

「え...と、とも、だち...」

今までの質問の中で1番言いたくなさそうにする。

「ま、まず!どこからどこまでが友達なのか定義してもらえない?」

「...」

うん、友達と呼べる存在はいないみたいだ。

まあ、俺もだが。


「ま、まあいいんだよ!学校は勉強する場所だから!」

取り乱したかのように声を張ってなにやら残念なことを言い出した。

確かに間違ってはないけど...

「と、とにかく!この話はおしまい!せっかくの夏休み中だから学校ではのことはどうでもいいの!」

そう言い天は残っていたチャーハンを勢いよく掻き込む。

そして変なところに入ったのか盛大にむせた。


それを見ながらどうしたもんかと考える。

学校のやつが天を嫌っているということはいるということはなさそうだ。というか話を聞く限りむしろ天に好意しか持っていないように思う。

ただ好きだからこその行動が少し過剰なだけ。


ファンクラブのやつらも大概だがそらも天だ。


むせる天を見ながらどうしたもんかと俺は一人頭を抱えた。

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