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新宗教的な何か

「い、今...なんて?」


比野守の突然の豹変に戸惑う。


困らせたかった?

比野守はそう言っただろうか。

それに泥棒...ブタ野郎ってどういう...


「はあ?二度も言ったのにそれで理解出来ないなんて頭がとても残念なのね。」

「いや、そういうことじゃなくて...」

俺の煮え切らない態度が気に入らなかったのか比野守はますます表情を険しくした。

「ますます理解出来ない。...なんでこんな奴なんかに『そらさま』は...」


「天、さま...?」

クラスメイトを様付けするということが馴染みがなさすぎてもはや違和感しかない。


あだ名にしてはあまりにも仰々し過ぎるし、もはやいじめのレベルではないだろうか。

『天さま(笑)』みたいな感じで...


そういえば前に天が比野守と会ったとき天は比野守ともう1人の子に対し敬語で話していたしなんだか気まずそうな顔をしていた。

比野守は溜息をついて冷たい目で俺を見る。

「まさか天さまが現れるなんて完全に想定外よ。本当はあんたをあたしに惚れさせて完全にあんたが引き返せないようなところまでいってからあんたへの天さまの好感度を下げようと思ってたのに...」

なんか恐ろしい計画を立ててやがった!?


あれ...この言い方だとまるで天に気づいていたような...


比野守のその顔は演技って感じじゃない。

むしろ今思えばほとんど初対面の俺にあんなに懐いていたという方が異常だったのだ。

どうしてそんな簡単なことに気づかなかったんだ。

そんなの決まってる。

きっと... 俺は自分でも気づかないくらい飢えていたのだ。

人から向けられる好意に...


「まあ、いいや。むしろ好都合だし。さすがあたしの機転力♪」」

比野守ひのもり...お前、一体なんなんだ?」

「答えるのがとても面倒だしそもそもあんたとなんて馴れ合うつもりもないんだけど...まあ、いいわ。この際だからあんたとあたしのハッキリした違いを分からせてあげる。」

そう言い比野守はベンチから立ち上がった。

そして腰に手を置き胸を張って堂々と声を張った。


「あたしは『天さまファンクラブ』会長の比野守那由佳。天さまを崇め、奉り、見守るために生きてるわ!」

なんだその団体は!?しかも存在理由が重すぎる!?崇めって!奉りって!

あまりにも重すぎる宣言にどう反応を返せばいいのかすら分からない。


「ふん、あまりにも大きなわたしの愛にびっくりして声も出ないようね。そうよ、いとこというだけで天さまにお近づきになっただけのあんたとは次元が違うのよ!」

「いや!なんでそんな理由で敵視されにゃならねぇんだ!だいたい俺はいとこだぞ!?」

「いとこでもよ!そんなの私たちファンクラブの会員には通じない理屈だわ!あの天さまと同じ家に住み、一緒に行動するだなんて!羨ましすぎる!!」

後半本音がダダ漏れだし!


「理不尽だ!だいたいなんで俺が天の家で住んでること知ってんだ!」

そんなことこの前は言わなかったのに。

「それ!天さまのことを呼び捨てで馴れ馴れしく呼ぶのもムカつくわ!あと家のことは見てれば分かる!」

「みっ...!!」

見てればって俺たち二人の様子を見てればってことだよな!?

まさか『俺たち2人が住んでいるあの家の中の様子を見て』なんてストーカーチックなことじゃないよな!?


「ああ、もう!うるさいわね!いい?こんなことで終わるだなんて思わないことね!私たちファンクラブを差し置いて天さまとお近づきになったこと!地獄で後悔させてやるわ!ぽっと出のキモオタ童貞のくせにっ!!」

「おい、おまえ!言ってはならんことを!?勢いに任せて俺に暴言を吐いてるだけなんだよな!?」

「うるさい!反省してるならファンクラブに今すぐ入会して毎日朝晩に天さまのいる方向に向かって祈りを捧げなさい!」

「いや、それなんの宗教だよ!?」

そんな俺のツッコミも虚しく比野守はスタスタと怒りをあらわにしながら公園から出て行った。


完全に言いたい事だけ言っていったって感じ。

もしかしたら俺は変なやつに目をつけられたのかもしれない。

ていうか...


「そもそも天...ファンクラブなんてのがあるって知ってんのか...?」

それは天に聞いてみるしかなさそうだ。

だが、あいにくすぐにそれを実行出来ない。


「天、やっぱり怒ってるよな...」

早く帰って誤解を解かないと...


歩きながら初めて比野守と出会ったときの天の顔を思い出す。


あの気まずそうな顔は比野守の正体を知っての顔なのか、それとも他に理由でも...

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