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プチデビル☆なゆか

「ひ、比野守ひのもり...那由佳なゆか...」


「わぁ!先輩あたしの名前、覚えててくれたんですね!」

つい、フルネームで呼んでしまったが比野守は気にしてないようで手を叩きながらテンション高くそう言った。

ひとまず幽霊的なものではなかったようで安心した。


「それで先輩はこんなところでなに黄昏たそがれてるんですか?」

「黄昏って...まあ、行き先もなく散歩してたら疲れたから休憩してただけっていうか。」

まさか『キミのクラスメイトの裸をうっかり覗いちゃって思わず家を飛びだして来ました。』だなんて口が裂けても言えない。


「へぇ、先輩って意外とアクティブ系だったんですね!」

「まあ、な...それで比野守...さんはどうしたんだ?こんなところで。」

「ただのバイトの帰りですよ。それにあたしの方が後輩ですし『さん』付けはしなくてもいいですって!」

「バイトしてるんだ。なんか意外...」

そこまで言ってハッと口を閉じる。


さすがに失礼だったかもしれない。

その証拠に比野守は少しムッと口を尖らせた。

その可愛らしい仕草に一瞬ドキッとする。

「意外じゃないですよ!もう、先輩は失礼です!」

「ごめん!悪かったって。確かに『意外』なんて言葉で人に自分の理想を押し付けるのは失礼だった!ほんと申し訳ありません!」


『意外』なんて言葉を使うのはその人に自分の都合の良いイメージをつけてて、実際はそのイメージと違うことがあったからそう思うのだ...と俺は思っている。

人の理想なんて都合良く勝手に押し付けるべきものじゃない。


「あはは、先輩なにマジになってるんですかぁ?あたし、そんなに気にしてないですから大丈夫ですって」

幸い比野守はそこまで気にしてなかったようでそう言って笑い『あ、そうだ。』と手をパンっと打つ。

「あたし、この後ちょーうど暇なんですよねぇ。」

「へ、へぇ、そうなんだ。だったら家に帰って休むとか、あ、あとせっかくの夏休みなんだから友達と遊ぶとか...」

上目遣いでこちらをチラチラ見ながらわざとらしくそう言う比野守。


さすがにその言葉が指している真意は察したが自分からそれを言って自意識過剰なんて言われるのも嫌だし、それにまだ知り合って間もない一つ下の後輩、しかも天のクラスメイトをたぶらかすみたいな感じになりそうだったので自然を装いそう返す。

というかこれは一種の『逃げ』だ。


だが、比野守は食い下がらない。

「あたしこの後ちょーうど暇なんですよね!」

「いや、...だから...」

「あたしこの後ちょーうど年上の先輩と遊びたいと思ってたんですよねぇ?」

「...」

完全に狙われてる。

しかもなかなか手強い...


よし、こうなったら...

「じ、実はこの後ちょっと用事が...」

「先輩が望むならちょーっとえっちな要求も特別に聞いてあげますよ?」

「なっ...!?」


「まだ夜じゃないですけど...先輩のために夜のレッスンしてあげますよ?こう見えてもあたし...」

そう言いチラリと穿いていたスカートの裾をめくった。

その中が見えるか見えないかのギリギリのライン。


『リアル女子に恋はしない!』がモットーの俺だが、つい男の性で視線が比野守のスカートに吸い寄せられてしまう。


「せんぱぁい♪あたしぃ...先輩と遊びたいなぁ?」

「うっ...わ、わかった、わかったから!スカート元に戻せ!」

結局比野守の攻撃に負けて顔を逸らしながらそう言うしかなかった。

比野守がスカートを整えるのを見てようやく安堵する。


「あはっ、サンキューです!先輩!」

キランとあざとくポーズを決めながら比野守は笑った。

「あ、遊ぶって...どこかに行くの?」

先程の比野守の発言を思い出して言葉がつっかえる。

「そうですねぇ、じゃあ、そうしましょうか。賑やかなところに行きましょう。」

そこまで言って比野守はクスッと笑う。

「だって、静かなところに行ったら先輩、襲って来そうな感じですしぃ...」

「ばっ...!そんなことしないって!」

「冗談ですって!ほら行きましょうよ!」

「わ、分かったから引っ張んなっ!」

比野守に腕を掴まれながら引っ張られていく。

今まで人と触れ合うことがほとんどなかったからこんな風に誰かと遊びにいくだなんてこと初めてかもしれない。

ほとんど比野守に押されて半ば強引に決まったことではあるけど俺の心は自然とその空気を受け入れていった。



ーーーだから、気づかなかったんだろう。

比野守のその笑顔の真意、そして遠くから俺と比野守の様子を伺っていた人影にーーー


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