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プロローグ
昔の偉い人は言った。
天才とは1%の才能と99%の努力をした者を言うのだと。
だが、俺はそうは思わない。
なぜならどんなに血のにじむような努力を重ねてもそれが必ずしも実るなんてことは確証されないからだ。
努力が報われないなんてことはこの世に五万と溢れてる。
俺だって昔、この世は綺麗な物で溢れているものだ、なんてことを無邪気に思っていた子供時代には努力をすれば絶対に報われるんだ、なんてことを信じていたものだ。
しかし、そんな幻想は歳を重ね、この世の不条理さを理解し経験していくことによって壊れた。
周りと違う人間は徹底的に排除される運命だ。
皆が平等である事を望む。
普通と違うだなんて許されない。
凡人は所詮天才には敵わないのだから。
それがこの世界の理不尽な決め事。
だが、俺のそんな考えは180度覆される。
ある夏の日に出会った少女ーーー水無月天によって。