65−誘い
ちょっと、本当にちょっとだけ長めです。
こんにちは、引き続き、紅葉青海です。
今、私は鳳凰高校の屋上のベンチの上で一緒に静香さんと座っています。
静香さんはノスタルジックな風貌で青空を見上げています。
あぁ、どこから見ても静香さんは綺麗なお方です……。女神様みたいな人です。私は一目で惚れてしまいました。
「あ、すみません。ちょっと物思いに耽ってしまいましたね……」
「い、いえ! 良ければお話ください!」
「いいのですか? とはいってもあまり良いお話にはなりませんけど」
「だ、大丈夫です!」
「私の過去は、そうですねどこからお話しましょうか?」
「えっと、じゃあ、静香さんがチルドレンになった時のことをっ……!」
「わかりました。私がチルドレンになったのは五才の時でした」
「ご、五才っ!」
「はい。でもはっきりと覚えています。オリジナル達の名前は闇千華と夢光明。私の祖父母でした」
「えっ!?」
「ええ。闇千華の方が一番でしたね。ですが幼少の頃でしたので詳しいことは覚えてはいません。ですが闇千華は「貴殿には理解できるか? この混沌の世の末になにがあるのか―――」と言い、夢光明は「貴方は道なき未知へと辿りつけますか? この世界の果てを探し出してみなさい―――」と私に言い残して姿を消してしまいました」
「そうだったんですか……」
「紅葉さんはどうだったのですか?」
「し、静香さん。紅葉ではなくて青海って呼んでください。私もそっちの方が良いです」
「わかりました。それでは青海さんはどうだったのですか?」
「私は先週、チルドレンになりました」
「え?」
「はい、流水香さんという方でした。とても綺麗な方で……あ、でも静香さんの方が綺麗ですよ!」
「ふふ、ありがとうございます。そうですか。そうだったのですか。大変でしたね」
「はい、でも私には夢がありますから!」
「夢、ですか?」
「はい。私主体じゃないんですけど、この三年間、私に初めてできたお友達でいつも私を支えてきてくれたんです。でもその人が先週、死んじゃって……」
静香さんは静かに、でも優しい目で私の話を聞いてくれています。だから静香さんには全部打ち明けられる。そんな気がします。
「だから、私はその人が死ぬ前に託してくれた夢を叶えてあげるのです」
「そうなのですか………。だからチルドレンを?」
「はい!」
「そうですか。それで青海さんのお友達の夢はルネサンスの真実の公表ですか?」
「え? な、なんで?」
「青海さんがチルドレンでその存在を知っているのにルネサンスに入ってないからです。違いますか……?」
「そ、それは……」
ど、どうしましょう。ま、まさか静香さんにここまでばれてしまうなんてっ!? では、どうしたらいいのしょうか……?
「え、えっと……」
「すみません。不躾すぎましたね」
「い、いいえ……! そ、そんなことは。でも、はい……。静香さんの言ってる通りです」
「そうですか」
静香さんの顔にはちょっと翳りが差しましたが、ちょっと無理しながらも笑みを作ってくれました。
「それじゃ、頑張ってくださいね」
「えっ?」
私はてっきり注意されるのか、あるいは連行されると思っていましたが、静香さんは励まして? 応援してくれました。
「な、なんで?」
「青海さんには青海さんの事情がおありでしょうし、そんな情報を手に入れるほどのことです。お友達の夢はそれ程の価値があるものだということぐらいはわかります」
「あ、ありがとうございますっ! で、でも、このことは―――」
「ええ、大丈夫です。誰にも言いません」
静香さん、あなたは私にとって地上の女神さまです!
「ですが、このままだと青海さんの立場が危うくなるのは必然です」
「そうなのですか?」
「はい、早かれ遅かれ青海さんが所持している情報は国家機密ですから。ですので、青海さん。紅葉青海さん」
静香さんが立ち上がり、私の正面に向き合います。
「は、はい!」
私の背筋は益々きりっと伸ばしました。
「ルネサンスに入りませんか?」
静香さんの言葉はとても穏やかで、すんなりと聞いていると誘い込まれそうな甘い香りまでしてきました。
「でも、ルネサンスに入るって事は―――」
「はい。ですが、そうなりましたら私が青海さんを守ります」
「静香さんっ!」
私は感情のままに正面の静香さんに抱きついていました。一瞬、静香さんが驚いたように体を硬直させましたが、すぐに緩和されて私の頭を撫でてくれました。
「だから、青海さんも私を守ってくださいね?」
「はいっ!」
静香さんの声は優しくて、とっても透き通っています。そんな人が私のことを気遣って、守ってくれると言ってくれました。
なら、私もお返しをしなければなりません。昔からそう教え込まれています。
「私も、頑張ります!」
静香さんは私の顔を見下ろしながら微笑を浮かべて、
「一緒に頑張りましょうね」
と言ってくれました。
その後、私は何度はいっ! はいっ! っていったのかは覚えてはいません。
MIKOTOさん、私はルネサンスに入ります。でも、あなたの夢を諦めたわけではありません。私自身がルネサンスに入って、この身で体験してきます。
チルドレンとはなんなのか。オリジナルとはダレなのか。ルネサンスは、MBSは、リベリオンは一体どんな組織なのかを。
百聞は一見にしかず……この言葉を試してみたいと思います。私の心意気がどこまで続くかはわかりません。でも、諦めることだけはしないつもりです。
だから、後もう少しだけ、待っていてもらえますか?
私はそう胸にしまいこんで、冬の晴天に現れた一群の白雲を仰ぎました。
「というわけで、今日を持ちましてルネサンスに入ることにいたしました! 紅葉青海です、よろしくお願います!」
私はスペースの扉でまだ中にいらした四人の方に挨拶をしました。
「「!?」」
皆さんの表情が硬直しているのが見て取れました。
思い出してみても、十分前にここから逃げ出したのは事実ですのでこういった反応がでるのも当たり前なのですが……。でも、私はめげません。
丁度良く、モニターにハヤブサさんがいらしたので、ハヤブサさんにも報告しておきました。
「も、紅葉殿。お考え直されたほうが………」
「いえ! もう決めたことです。私もチルドレンとしてルネサンスに入りたいですっ!」
「さ、作用でございますか……」
ハヤブサさんは困った風な感じに眉を顰めているのがモニター越しにも判ります。
「で、ですが……」
ハヤブサさんは中々認めてくれせん。でも、ここで諦めるわけには行きません! そんな私を手助けしてくれたのが、私の女神さまこと静香さんです。
「ハヤブサ総司令、私も紅葉青海さんのルネサンスへの入隊をおすすめ致します」
「シズカ、お前もか……」
ハヤブサさんは本当に煮え湯を飲まされたような感じな顔でした。そんなに私のことが嫌なんでしょうか? じゃ、ちょっと女の武器を使いましょう。
まだ承認をくれないハヤブサさんに向かって私は、
「ハヤブサさんは私のことそんなにキライなんですか?」
ちょっと上目遣いで涙目を作ってみました。
「……わかりました……」
ハヤブサさんはイチコロでした。
この時、私はルネサンスの一員となったのです。
これで揃いました。このお話の主要キャラっ! やったー! はてさて、こんなことを言うとあれなのでしょうがちょっと一息いれれます。




