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始まりの冬  作者: Karyu
33/82

32−トウキ、カゲフミの影の中で(2)



 俺は空の上にいる。


 飛行機の技術は過去最高に達し、昔なら七時間掛かる航空時間も僅か三時間という時間で俺はインドの空港に降り立った。


 子供の頃からでかかった体は冷やかされたり、貶されたりして辛い時期もあったが年が経つにつれ俺の利点になっていったからだ。


 だからこういった時役に立つ。


 俺のことを迎えに来ていたインド風の人物が俺の名前が書かれてあるプレートを掲げていた。


「ミスター・コンドウ?」


「ああ」


「お待ちしておりました。ではどうぞこちらへ」


「流暢な日本語だな」


「はい、恐れ入ります。私はミスター・コンドウのお世話をさせてもらいます、シャムと申します」


「そうか、俺のことはトウキでいいぞ」


「わかりましたトウキ。お荷物お持ちいたしましょう」


「いや、これぐらいは自分でやれるさ。なんせ鍛錬にきたんだからな」


「そうですか、わかりました」


 俺はシャムと名乗る男に先導され用意された車に乗り込み出発した。


 シャムは全身を白のローブと宗教的な帽子だろうか? それを来ていて背は高いが俺よりは多少短い。


 車は空港から出て山の奥地へと進んで行き、もう道がないところにまできてやっと止まった。その時間、2、3時間。


「うへぇ、すごいところだなここ」


「はい、昔釈迦が修行に来ていたと噂される聖地たるところですので」


「そうなのか。それで、ここからは歩きか?」


「はい」


「車は置いてくのか?」


「いえ、もっていきます」


「どうやって……」


「トウキが引っ張っていくのです」


「なっ!?」


「それがオリジナル、ヤミチカからの伝言です。いまからこの車を山の中腹まで運んでいってもらいます。できなかったらこの車で帰ってくださいとのことです」


「そうか、わかった」


「尚、力の使用は禁じられています」


「わ、わかった」


「それでは」


 とだけ言うとシャムの体は黒くなり、靄となり消えてしまった。


「なるほど、さっきのはオリジナルの技ってか……。にしても気付かなかったな。でもま、ここまで来たかいがあるってもんだ」


 俺は早速車の後部に回り、車を上に押し上げていった。


 そして小三時間が経った。こっちに着いたのが夜だから、きっと今は夜中だろう。


 しかも道のない山の中、車の前方は絡み合った幹や草の根のせいで前のほうから引っ張らなければ進まないのが一般的な考え方だ。


 だが俺は森という森のことは熟知している。始めてくる場所でも、土や樹の質を見るだけで自分の手足のようにわかる。


 そしてそれから五時間……。


「ふぅ、後もう少しだな」


 俺はシャツ一丁で腕には様々な小さな虫がついていた。


 夜の月光も俺の上を覆う木々のせいであまり差し込まず、俺は大木の幹の上に座り休んだ。


「森はいつでも落ち着けるな……」


 俺の能力は森の力だ。どんなに重労働でも森、樹の周りにいれば俺は体力の衰えを感じることはない。


 だから俺はすぐさま休憩を終え、登り始めた。


 そして……。


「あんたが闇千華か?」


 山の中腹の半ば開けた場所で一人の影が闇の中に潜んでいた。


 月光がなければ恐らく見えないだろう男は背が高く、白髪が長かった。


「お前がトウキか?」


「ああ」


「カゲフミからの頼みとなっては仕方があるまい、さっそく訓練を始める。だがその前にその車のトランクを開けろ」


「?」


 たしかトランクの中には俺の鞄しかなかった筈だ。


 俺は不思議に思いながらもいままで押し上げてきた車のトランクを開けた。


 すると中には、


「これはっ!?」


 俺はすぐさま後ろにいる闇千華を振り返った。


 闇千華は微かに嗤っていた。





ヤミチカである。我はオリジナルなり。それ以下、それ以上でもない。だが野望はある。


生前は倉木闇千華という名で人生を全うしていた。だが今では名などには固執されてはいない。だが一人の孫のことが気がかりではあり心残りではある。


静香よ。お前は今、どこにいるのであろうな……。

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