28−リベリオンMBS襲撃事件(5)
俺とモモは誰もいなくて警報だけが鳴り響く廊下を総司令室まで走った。
総司令室は中央の本棟、二階にある。俺たちはもう一階下へと桃と一緒に下りてきている。
俺たちが走る反対側の廊下からは銃声や怒号が聞こえてきたが、今いる廊下は戦場と化してはいなかった。
こちら側が優勢ということで若干安堵していたのだが、それは次の瞬間不安と恐怖に掻き立てられた。
なんと俺とモモの目の前にリベリオンの服を着た男が立ち塞がったからだ。
「「!?」」
俺とモモは声を出さずに驚きの声をあげた。
俺の口は目前の男の名前を無意識のうちに呟いていた。
「シコン……!」
シコン、広島リベリオンのリーダー。若干18という若さでリベリオンリーダーを務め、その実力はMBSのグレード1の隊員でも侮ることはできない。
「俺も結構有名になったもんだな、お前たちみたいな子供にまで名前が知れてるなんてな。ホント、運が悪かったな」
「ど、どうしてお前がっ!?」
「ん? なんだ、お前男か……。くくく、最近のMBSは変わり者が多いんだな。お前、似合ってるぞ」
「んなことはどうだっていいんだよっ! なんでお前がここにいる!?」
「なに、簡単なことさ。本部の総司令を潰せば目的は達成される。下調べ通り今日はグレードの高い連中が出払ってるからな」
俺の胸の心拍数は激しく上昇していた。なぜならシコンと戦い、生き残った隊員はまだ現れてはいないからだ。それに加え、グレードの高いチルドレン隊員は本部から規制をかけられ戦闘を行うことはなかった。
くそっ、どうすればいいっ!?
「シ、シルキ。ここは桃に任せて」
「おい、モモっ!」
モモは体を震わせながら、同じ恐怖と立ち向かいながらシコンの前に一歩踏み出した。
「ほお、お前が相手か? 俺もあんまり女の子相手に気が進まないが仕方がない」
シコンの右手からは白い煙が立ち上り始めた。
モモは膝を震わせながらも、意志のこもった瞳をシコンの目に向けた。
モモの能力はすでに作動している。
「それじゃ、消えな」
シコンが右手を横に凪ぐと、横一文字の炎が迸った。
「伏せてっ!!」
モモがそう叫び、俺もすぐさま呼応して屈んだ。
「へえ、ならこれならどうだ? 戦塵斬り・火炎焼死」
シコンは両手を広げそれを縦横無尽に振り翳した。
すると、大量の一文字の炎が廊下内を駆け巡った。
モモはぎりぎりまでシコンの目を見つめて、またも叫んだ、
「シルキ、右っ!!」
「わ、わかった!」
俺とモモは転がるように右の方に避けた。
するといくつもの炎が俺たちの横を迸り、俺とモモは外無傷に済んだ。
「お前、俺の技が見切れるのか? それとも、俺の思考を読み取れるのか……。いや、そんなことできるやつは聞いた事がないな。ならまぐれか……。じゃあ、死ね」
シコンは懐から短剣を取り出し、その先端部分に炎を螺旋状に絡ませた。
すると、見る見る内に、シコンの短剣は炎の大剣と化した。
シコンは一気に駆け出し、モモの前に躍り出た。そして炎によって延ばされた短剣を振り上げた。
いくらモモが思考を読み取れてもこれじゃ避けきれない!
「モモっ!」
俺は前方のモモを横に押しやった。
「きゃっ!」
とモモは声をあげ、俺はシコンの一撃をまともに喰らった。
「ぐわっ!!」
俺はシコンの一閃で肩から腹部まで火傷を負った。そして灼熱に熱せられた短剣で皮膚も斬られた。
激痛が体の表面に走り、背中まで貫かれた炎を刃のせいでできた過度の火傷は俺の感覚神経を麻痺させた。
俺は後方に飛ばされ、
「シルキ!」
モモが俺のほうに駆け寄り、俺を受け止めてくれた。
「へえ、女を庇うか少年。名前は……シルキだったな。覚えといてやるぜお前の名前、ここ出るまでな」
シコンは自分の獲物を解除して、短剣を納めた。そして、そのまま振り返って立ち去ろうとしていた。
しかし、シコンは不意に立ち止まって思い出したかのように告げた。
「ひとつ教えておいてやる。俺たちチルドレンはこういった力を使える。自然の力をだ。だがな、自然ってのは自らに然りって書く。そのままの通り、結局チルドレンは自然によってじゃない、自然に生まれてきたもんなんだよ。だから、命は預けておいてやる。じゃあな」
シコンは俺たちに背を向け総司令室の方へと歩いていった。
俺は掠れていく視界の中、左肩のリボンを解いた。
「に、逃がすかよ……」
左肩にはバズーカ砲が現れ、俺はモモに支えられながらトリガーを引いた。
弾丸はまっすぐに飛来し、シコンの右肩に被弾した。
シコンだ。漢字だと紫紺って書くな。ま、どうでもいいんだが。ちなみに18だ。酒がまだ飲めないのが癪なんだけどな。ま、早いとこMBSを落として家に帰りたいもんだ。俺もリベリオンのリーダーになったっていっても子供まで殺しはしないさ。現に俺の下にもあいつらと同じぐらいの子がいるからな。
この俺が同情心か……。ま、チルドレン同士。なんでこんなにしてまで戦うんだろうな……。




