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一話 彼は不幸にも異世界転移って奴に巻き込まれました

新作です。

メインは別の方なのでゆっくりと気紛れに投稿していきます。

そんな感じですが、よければお読みください。


作品タイトルは仮題です。

!にするか?にするかを悩んでおります。

……え? そんなちっちゃい事気にすんなって?

……すんません。

因みに、題名にある『ラッキーパンチ』は、元の意味合いとは若干違う意味で使っております。

ご理解をお願いいたします。


「ようこそ、異世界より来たりし勇者達よ。早速ですが、皆様にお願いがあります」


 中世の城の広間の様な一室で、状況が分からず戸惑い、座り込んでいた三十名程の少年少女達を目の前に、豪奢なドレスを着た、美しい同世代の金髪少女がそう切り出した。

 少年少女達の視線が少女を見る。

 それに臆する事も無く、少女は深く、深く頭を下げた。


「私達に力を貸してください!」


 そんな少女の言葉に、少年少女達は千差万別の反応を見せる。


「俺達は元の世界に帰れるのかよ?」


 その中の誰かがそう言った。

 少女は、端整な顔立ちを悲し気に歪め、首を振る。


「皆様をお帰しする術は見つかってないんです。……ですが、何時か皆様を元の世界にお帰し出来る様にするので、それまで力をお貸し下さいませんか?」


 そんな真摯な少女の言葉に、帰れないのかと言う悲嘆と絶望が少年少女達の表情に出る。

 だが、その中で特に目立つ端整な顔立ちの少年が立ち上がる。


「帰れないのなら仕方がないよね。……俺は貴女が俺達を騙している様には見えない。だから、帰るまでなら、力を貸してあげたいと思うんだ。皆はどう?」


 そんな少年の言葉に、周囲の少年少女達も口々に「仕方なよね」とか「そうだね」など同意を示し始める。

 そんな声に、少女は下げていた頭を上げ、


「有難うございます! 私はこの国、ヴァスプリースの王女、クレアと言います。これからよろしくお願いします!」


 少女は眼の端に涙を浮かべながらも、実に美しく微笑んだ。






「……結局巻き込まれてしまった」


 周囲にいた少年少女が、まるで彼等が好む小説(ライトノベル)の様な状況に、興奮や期待、不安と、様々な反応を見せる中、その中にいた一人の少年は深い溜息を吐いた。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()……。


 別に一度転移したことがある、と言う訳ではない。


 少年は昔から不運であった。

 幼い頃に両親が彼を残して死んでしまった事から始まり、大なり小なり、様々な()()に見舞われて来た。

 例えば、


 登校中に靴が壊れてしまう。

 休日に自転車で走っていたらコケてしまう。

 盗難や窃盗、暴力等々小さな事件に巻き込まれるなんてザラにあった。

 だからこそ、少年は自分が不幸だと思っていた。


 だが、彼は()()()()()()()()()()()


 両親が亡くなった後、高額な宝くじに当たり、生活面は何とかなる。

 登校中に靴が壊れ、それを直そうと止まったが故に暴走したトラックが目の前を通り過ぎ、無事で済む。

 自転車でコケたが、かすり傷一つ負わずに済む。

 それと同時に、少年は幼い頃から異常に頑丈な身体と、異常に高い身体能力を持っていた。

 下校中、グラウンドから飛んできたボールが顔面に直撃しても「あ、痛っ」で済んだり、柄の悪い輩に絡まれた際も乱闘だったにも拘わらず、無傷で済んだりと、逸話には事欠かない。

 コンクリート程度なら殴って壊せる程で、それは化物と言っても良かった。


 だが、少年はそれを表には出さず、故にハブられる事も無く、至って普通の学生生活を送っている

 それが彼――佐藤(さとう)悠木(ゆうき)の日常である。





「ねーそう言えばさー」


「さて、次の授業の準備をしないとなー」


「昨日のアニメ見たかよ! 面白かったよな!」


「えー? ホントにー? じゃ、今度行こうよー」


「あー腹減ったなぁ……」


 授業と授業の合間の数分だけの休憩時間中、とあるクラスでも、皆が皆、会話したり、携帯を弄ったり、早弁したり、寝たりと思い思いに過ごしていた。

 彼等が通っているのはとある県立の高校である。

 頭が良い生徒もいれば、悪い生徒もいる。

 特殊技能や才能を持ってる生徒もいる。

 そんな、言ってしまえば当たり前の、普通の学校だ。

 そしてそんなクラスの後ろの扉から、佐藤悠木が入って来る。


「おーい康之(やすゆき)! 教科書貸しに来たぞー」


 友人である高梨(たかなし)康之に古文の教科書を貸しに来たのだ。


「おう! 悪いな悠木。購買で何か奢ってやるからよ」


 そんな友人の言葉に、悠木は苦笑いで、


「期待せずに待ってるよ」


 そう返した。

 そして、さて帰ろう、と扉に向かって歩き始めようとした瞬間、


「――ぅおっ!」


「――きゃっ!」


「な、なんだ!?」


「これ、魔法陣……か?」


「え? マジかよ!」


 突如、眩い光が教室を()から照らす。

 そして、その中で、光るモノの正体を見た生徒の何人かが反応した。

 だが、皆が驚いて動けない中、一人だけ動き出した者がいた。


「……クソッ! 今度はこれかよ!?」


 悠木である。

 悠木は逃げようと、友人に何を言うでもなく、急いで出口へ駆け出す。

 だが、扉を開けようと手を掛けたその時、魔法陣は生徒達を取り込み、消えたのだった。

 光が消え去った後、そこには机と椅子を残し、誰もいなかった。




ブックマーク宜しくお願いします。


別作品『黒のルドビレ』も宜しくお願いします。

黒のルドビレ http://ncode.syosetu.com/n8255dt/

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