第3話 絶望とスキル
主人公は、復習に熱を燃やす感じじゃありません。
ただ、暇だからあの国滅ぼそうか、的な感じで国を丸々滅します。
第3話 絶望とスキル
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冷たい。それが、初めに感じた事だった。
僕は、冷たさによって目を覚ます。
そして、見てしまった。
グルゥゥゥゥ。グルゥゥゥゥ。グルゥゥゥゥ。
何匹もの獣が、目を充血させ。よだれを出しながらこっちを見ている。
「な、なんだ。ここはどこだ。」
わからない。何もわからない。だけど、一つだけわかる事がある。
逃げなければ、死ぬ事だけが分かった。
走った。走って走って走り続けた。肺が痛くなっても、足が痛くなっても、息が続かなくなっても、逃げ続けた。
「はあはあはあはあはあ。逃げれたか?」
そして、初めて後ろを見た。見てしまった、それを。
グルゥゥゥゥ。グルゥゥゥゥ。グルゥゥゥゥ。ガァァァァア。
さっきよりも多い獣が、さっきよりも目を充血させ、さっきよりもよだれを出しながら、こっちを見ていた。
「はっははっはっは。なんだよこれ。はははははははははっははあっはははは」
笑った、初めて笑った。そして、もう全て分かってしまった。
逃げられない事も、食われる事も、全て分かってしまった。
(この時の僕は、スキルの事を忘れていた。)
僕は、両手を大きく広げ獣に向かって言った。
「はははは、いいよ来いよ。最後の足掻きだしね」
獣に向かって走った。最後に一発くらい殴ってやりたかったから。
そして、右手を食われた。
「ガアアァァッァアあああああああ。イタイイタイ」
右腕を食われた。
「アアああアガああああがががが」
左足を食われた。
「アアがアアウアあががががががあ」
右脇腹を食われた。
「ぁぁぁぁぁッァアッァアガガァア」
もう、どこを食われたかもわからない。
死んでるのか、生きてるのかさえも分からなくなってきている。
そんな時に、走馬灯のように自分の人生を思い出した。
何もなかった。何もない人生だった。
人間は、二つの人間で分けられる。なんていう人間がいるが、僕はそうは思わない
奪われる人間と奪う人間。
殺される人間と殺す人間。
支配される人間と支配される人間。
他にも様々な人間がいるだろう。
だけど、二つで分けられる、というのは納得出来る。
そして僕は、『何かをされる』人間だったのだろう。
そして、それが僕という人間なのだろう。
納得しようと思う。納得しようと思え。だって、僕には何もないんんだから。
納得しろ。嫌だ。しろ。いやだ。しろ。いやだ。しろ。いやだ。しろ。いやだ。
僕は、こんな僕が心底嫌いだ。
何も無いと諦めている、僕が嫌いだ。
だから、否定しよう。
僕は、僕を否定する。
僕は、何も無い僕を否定する。
僕は、否定する。僕にまつわる全てを、否定する。
だんだん、気が遠くなっていく。
『スキル:『否定者』を獲得。能力:所持者がそうではないと打ち消す事。偽ること。定めた事柄を否定すること』
何かが頭に響く。スキル・・・ああ、ナニカが言っていた事か。
否定 否定者か。そうではないと打ち消す。偽る事、定めた事柄を否定する事か。
はっはっはっはははは。
じゃあ、否定しよう。
否定し続けよう。僕が、俺になるために。
「ぼくは・・・、俺は、俺が怪我をしたとゆう事を否定する」
すると、痛みが消え。右腕が左足が、体の怪我とゆう怪我が時間の巻き戻しのように治っていく。
立つ事が出来るようになり、改めて獣を見据える。
獣は、俺の怪我が治った事が不思議でならないのか、戸惑っている。
「はっはっははははははは」
笑う。何に対してだろうか、喜びか、悲しみか、怒りか、楽しみか、今までの何もなかった人生からの脱却に対してか。わからないけど笑った。
狂気に歪んだ顔で、狂気に満ちた顔で、狂気を孕んだ顔で笑った。
「スキル:否定者か、俺にピッタリのスキルじゃないか。なにも無かった人生を”否定”するための力。何もかもを”否定”する力。いいじゃないか、いいじゃないか」
一通り満足するまで笑った。そして目の前の獣を見据える。
「さっきはよくも俺の体を食ってくてたな。まあいいさ、あの時は俺が弱かっただけなんだから。でも、今度はお前らが喰われるばんだぜぇ。くっくっく」
獣は、俺の変化に驚いているようで、理性のない獣が本能的に怯えている。
「じゃあ、早速スキルを使おうか。俺がそうではないと打ち消す力」
「じゃあ、死ねよ獣共。『俺はお前たちの存在を否定する』ケッケッケ」
俺がそう言うと、獣は一斉に止まった。そして内側から何かが破裂したように弾け飛んだ。
「カッカッカカカカカカカカッカカカカ、はあ。面白かった、それでここどこだ?」
改めて周りを見る。薄暗く、床も壁も天井も土でできていて。なんだか不気味なところだ。
「勇者として召喚されるはずだったのに、なんでこんな所に飛ばされているんだ?」
可能性は幾つかある。
一つ、召喚自体が失敗した可能性。
一つ、俺だけが召喚に失敗した可能性。
一つ、第三者による干渉でこうなった可能性。
一つ、”ナニカ”が故意にここに飛ばした可能性。
出そうと思えばいくらでもある。ただ、そんな事はもうどうでもいい。
「とりあえず、眠いから寝るか。その前にスキルを使うか」
「まず『半径10メートルに俺以外の生命体の存在を否定する』『俺の身に起こるあらゆる損傷を否定する』『俺の寿命の上限の存在を否定する』こんな所か」
そうして、俺は壁に背をつけ座りながら寝た。
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その頃、天界のある女神が異世界に召喚された人間を観察していた。
『なんですか、これは。神の力を完全に無効化しているなんて、ありえてはいけないはずです。・・・でも、これは。ああ、そうか。そう言うことですか” ”様」
女神は、ブツブツと独り言を言いながら、何か合点がいったような表情になり。虚空を見つめながら何かを言った。
次話の投稿は明日のよる7時かもです。^^
それでは。