62 魔力駆動式高機動自動荷車
ペーパーマリオRPGリメイクを買った……懐かしい
ギルドでの話し合いの数日、ルートは優太に頼まれていた物を持って優太の元へと訪れていた。
「おーい兄ちゃん! 頼まれていた物を持って来たぞー」
ルートがそう声を上げると、宿の扉からではなく宿の裏から優太が現れた。
うっすらと汗が滲んでいる姿から何かしら訓練をしていたようだ。
「自分経営の宿だからって無防備過ぎないか?」
「宿だけじゃないぞ、周りも全部家が関わってる」
元々取っていた宿をキャンセルしてルートが経営している宿へと移っていた優太達はルートならと空間魔法の説明と許可を取って結構自由にしていた。
最初は少し収納機能を羨ましがっていたが「暇な時は手伝う」と優太が言うと落ち着いた。
「それより、訓練してたのか? 魔導師なのに珍しいな」
「師匠が特殊だったんだ……少し湯浴みをしてくる」
風呂へと向かった優太を見送ると、暫くしてレイナとルナも汗を滲ましてやって来た。
そして、一言ルートに挨拶をすると二人も風呂へと向かって行った。
少し時間が経ち、三人が湯浴みから戻った所で今回の本題に入る。
「それで持って来た物は何処に置けば良い?」
「それなんだが……この宿の馬車置き場を借りたい」
優太の言葉にルートは「ああ」と納得する。
「成る程、例の魔法で……何かするから人目を避けたいと……了解」
「察しが良くて助かる」
話が付いたので早速荷車を移動させる。
荷車を馬車置き場に移動させると優太が鍵を作り馬車置き場の鍵穴にはめて回す。
すると、馬車置き場の扉が開くとこの先は白い空間が広がっていた。
「話には聞いていたが……すげぇな」
「普通の空間魔法じゃないのか?」
「ばか言うな、空間魔法なんて現魔王だって物の保管が精一杯で人が余裕で入れる空間なんて作った上で維持するなんて不可能だ」
ルートの言葉に優太は「そうか」と呟くとそのまま荷車を空間へと押し込む。
そして、扉を閉めると予め待機していた千夜が様々なアイテムを持って優太の元へとやって来る。
「ユウタ様、言われた通りに例の扉にてクリエスティアへと向かいスライムクッションを集めて参りました。こちら鍵の返却です」
「ご苦労」
優太は予め千夜にクリエスティアに適当に作って置いた扉への鍵を渡し、スライムクッションを大量に集めさせていた。
「そして、こちらは私の甲殻です……丁度ムズムズ来てて良かったです……あと、何個か自身の為に食してしまいました……すみません」
「ああ、えっとかまわない苦労を掛けたな」
無表情な千夜は少しスッキリした顔で優太に報告している。
その姿を見てルートは色々と言いたかったが優太から信頼されている証拠だと思い何も言わなかった。
そして、優太の目の前に有るのは超稀少素材のサウザンドセンチピードの甲殻……要するに千夜は脱皮したことになる……
「……ルート様、そんなに見られると……恥ずかしいです」
「え、すいません……成長したの?」
顔を赤くしていた千夜はルート言葉に嬉しそうに頷く。
「脱皮なんて600年ぶりです……きっとユウタ様の影響ですねまだ強くなれるなんて、心なしか何時もより甲殻にも艶があります」
「はは、良かったな」
千夜の言葉にルートは渇いた笑いが出る。
そんなやり取りを横目に優太は黙々と作業を開始させていた。
まず始めに使う素材を魔道具にして合成する。
〈サウザンドセンチピードの夜甲殻〉……サウザンドセンチピードが食べたナイトモンド鉱石が魔力と混じり合い更に硬質化した甲殻、硬く、魔力を吸収する。
この千夜の甲殻とスライムクッションを掛け合わせれば良い緩衝材になるかも知れないと優太は思ったのだった。
「よし、それじゃあ……早速……」
優太が作業を始めるとルート達も興味深く優太に注目する。
優太の手元の素材が混ざり合い形を変える。
「……」
「何だこれ?」
出来上がった黒い物体を見てルートが不思議そうに首を傾げる。
しかし、優太の反応は違った。
出来上がった黒いを持ち上げて力を入れる、固い感触に高い反発力に引っ張ると若干伸びてまた戻る。
「不思議な物体になりましたね」
「固いのに柔らかい? 伸びるけど戻ってしまいますね」
「俺が知ってる素材に似てる……これはゴムにそっくりだ」
優太の言葉にレイナ達は首を傾げる。
「ゴム? 何ですかそれは?」
「ゴムは弾力性と伸縮性を持ち衝撃を吸収する物質だ……加工すれば色々な用途に使える……衝撃を吸収するなら平面」
レイナの質問に優太はそう説明すると、軽く出来た物体を地面に投げつける。
すると、黒い物体は少ししか弾まない。
優太はそれを確認すると、黒い物体を掴み形を球体に変える。
「四角いと平面だから接地面が広くて弾みにくいが、球体にすれば接地面が少なくなって弾み易くなる」
今度は球体になった物体を軽く地面に投げつける。
すると、さっきとは比にならない程高く跳ね上がった。
それを見ていたルナが謎にテンションが上がっている。
「わー! ねぇねぇ、お父さん投げて投げて!」シッポフリフリ
「……」ポーイ
優太がルナに言われるがまま、球体を投げるとルナは狼の姿に戻って追いかけくわえて戻ってくる。
「お父さん楽しい!」シッポフリフリ
「……」アタマナデナデモフモフ
優太は戻ってきたルナを無言で撫で回すと、球体をレイナへと渡す。
「ルナ! 向こうで遊びましょう!」
「やったー!」ピョンピョン
それを見送ると、優太は何もなかったように話を再開する。
「これ等の作用を利用すれば色々作れる……今回はタイヤだな」
「あ、俺は用事が有るから行くわ」
話を再開した優太にルートはそう言うと立ち上がり扉から出ていく。
取り残された優太は、無言で作業を始めるのだった。
数時間経つと魔力で加工するためイメージがあれば形になる。
その為荷車は魔道具化されてサウザンドセンチピードの甲殻で出来た車体、スライムクッションを使ったシート、そして謎の物体を使ったタイヤ。
端から見ればどう見ても車だ、しかしこの車にはエンジンは無いハンドル部分に魔力を流すとタイヤに魔力が巡り、反応して回転する仕組みになっている。
「魔法も吸収するし、衝撃にも強い……上手く出来たな。試作魔道具〈魔力駆動式高機動荷車〉略して魔道車」
「流石ですユウタ様、天晴れでございます」
「この荷車は馬が引くのではないのですか?」
「おー!」
優太の言葉にレイナ達は思い思いの反応をしている。
千夜は魔道車の車体を撫でて少し嬉しそうにしており、レイナはドアを開けて不思議そうに中を見ている。
「私の甲殻がユウタ様のお役に立った……少し感慨深いです」
「ゆ、ユウタさん、中に車輪が有りますがこれにはどんな理由か有るのでしょうか?」
「おー、椅子が柔らかいよー」
そんな三人の様子に優太はため息を付きながらも、少し柔らかい表情で近付いていく。
「レイナ、それはハンドルだそれである程度の操作が出来る。千夜、これからも役に立って貰うぞ。ルナ、後で乗せてやるから一回降りてくれ」
「ええ、畏まりました」
「なるほどです……」
「はーい」
三人が優太の言葉に素直に従うと、優太は三人にほぼ完成と告げる。
「形は出来た、後は検証と試乗……だが、その前に昼にしよう」
こうして、試乗を残して魔道車作りは終わりを迎えたのだった。
「あ、ユウタ様、お昼は私が作ります」
「……え?」
「わー、楽しみです!」
千夜の突然の一言に一抹の不安を抱いたのは秘密である。
おまけ
千「あ♡ このかん、感覚は来ます……あ、ああ~♡」
ベリベリ!
千「んー、スッキリです……脱皮なんて600年ぶりですがやはり気持ちいいですね」
パリポリポリ
千「ムグムグ、今回は入り用が有りますし一枚にしておきましょうか……さあ、今日も一日頑張りましょう!」
百足メイド千夜の日常をチラ見せ
ご都合展開で御座るが大目に見て欲しいで候う……因みにおまけの千夜はムカデ姿と思って下さい




