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無気力高校生の異世界救済  作者: SUZUKING
第一章 異世界へ
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4 訓練~夕日を背景に……は流石に古い~

楓組のステータスは次回です。色々と不思議能力が多数出ますが気にしたら負けです。

 自己紹介後、優太達は自主訓練に励む事になった。

 しかし、優太は絶賛通常運転中……気だるげに、訓練場のベンチに座って、走り込みをしている、晃達を眺めていた。


「矢野君……君は異世界に来てもブレませんね」


 そんな優太に話し掛けてきたのは、長い黒髪を後で束ね、鋭い目付きだが整った顔立ち、毎日女生徒達に”告白”されていた……“彼女”は伊井かえで、才色兼備、文武両道で、なおかつ一年にも関わらず生徒会と風紀委員会の会長を務め、“女傑”と呼ばれていた。


「伊井……俺は魔導師だぞ? サムライのお前や、勇者の大野達と自主トレしたって、たかが知れてるだろ?」

「天野さんは、聖女なのに一緒に走っていますけど?」

「……天野……お前もか!」


 魔導師だからとかわすつもりが、聖女が走っていると言う、事実によって儚くも崩れ去る。

 ならばと、次の言い訳を考え始める優太に、楓は溜め息をついて首を横に振っている。


「はぁ……君の、その鋼の意思は何処から来るのですか?」

「イスカンダルから?」

「古くないですか? 歳偽ってるんですか?」

「古くない……それより、あっちも何とかしてくれ」


 そんな、ネタ的やり取りの後に、優太は別の二人を指差した。

 そこには、八島正孝まさたか佐武さたけ将が神妙な面持ちで、向かい合っていた。


 とその時……


「見ろ! 将! ア○ファステ○グマだぞ!」

「それなら、俺は○ヴァだ! ダイ○モンド○ストだ!」


 完全にアウトだ……楓はぷるぷると小刻み震えながら、ゆっくりと、それはもうゆっくりと二人に近付いていく。

 そして、拳骨……眼で追えないスピードの拳骨が二人を捉える。


「危ない単語を使うなぁぁぁぁ!」

「「がぁ!」」


 〈魔眼使い〉の正孝と〈召喚魔法〉の将が頭を押さえて悶絶する様を見て、悪ふざけはほどほどにしようと心に決める優太だった。

 そんな、魔闘士と召喚士の処理を済ませた楓が戻って来た所に、幸子が走り込みを切り上げて此方に来ていた。


「ゆう君……あの二人、楓ちゃんに何かしたの?」

「あの二人の厨二が炸裂しただけだ」

「あっ、天野さん……どうかしましたか?」


 楓も幸子に気づき話し掛ける。すると、幸子の口から驚愕の情報が放たれた!


「そう言えば、あっちで和馬君と姫ちゃんが『ス○ープラチナ』とか『生○戦略』とか叫んでたよ?」

「いくらなんでも調子に乗り過ぎですね……少し、締めてきますね……むしろ、絞めますか……」


 禍々しいオーラを漂わせて歩いていく楓を見送り、優太は溜め息をつきながら出口に歩き出す。


「俺は部屋に戻る」

「あっ、ゆう君! また明日ー!」


 そんな、幸子の言葉に手を挙げて返すと、そのまま部屋へと戻っていった。




 ─────────────────────────────




 全員のカードを持って、執務室に戻ったジークは頭を悩ませていた。


「ふむ、まずは旅人組と残留組を分けてから、旅人組を率先して鍛え、残留組も自衛できる様にしないといかんか……騎士団との合同演習も視野に入れてと……」


 ある程度まとめたところで、「ふう」と息を吐きジークは椅子にもたれ掛かる。


「……随分と大変そうですね」

「のはぁあ!」


 そこへ、突然現れたランドに、奇っ怪な悲鳴をあげるジーク。それを見て、ランドは呆れたように溜め息をついた。


「はぁ……ジーク、大変そうですが、どうしたのですか?」

「いきなり現れるなよ……いやな、短期間での訓練で何処まで仕上げれるかを考えてたんだ」


 ジークとランドは、先程のやり取りを早々に切り上げ、本題を話し始めた。

 内容としては、まず一つに、旅人組が何人になるか、戦闘職でも戦いたくない者が出てもおかしくないからだ。

 二つ目に、訓練の内容、これは旅人組は厳しく、残留組も自衛出来なければ意味がない。

 そして最後に、実戦訓練だ、対人訓練は騎士団との模擬戦で賄うが、旅人組には人殺しを視野に入れて貰わなければならない、さらに、危険の付きまとう魔物との実戦訓練も頭の痛い問題だ。


 ランドは話しを聞いて、納得したように頷いていた。

 ランドとて、考えなかった訳ではない。この旅には、危険が付きまとい、なおかつ、人殺しをしなければならない場合もあると……


「しかし、それだからこそ、彼等に道を示すことが、今貴方がやるべき事なのではありませんか?」

「ふっふっふっ……ぺーぺーだったお前が、言うようなったな……明日、彼等に話す、それから旅立つか残るかを聞こうと思う」


 ジークの決意、ランドは再び頷くと、そのまま扉へと歩いていく。

 ジークは、その背中を見送ると、再び資料に目を通す。


「あいつも、素直じゃねえなぁ」


 ジークの呟きが、執務室に静かに響いた。




────────────────────────────




「……以上だ。行きたくない者は残ってくれても構わない……我々は君達を守るし、自衛出来る力も付けさせる。まあ、どちらにせよ訓練はあるのだがな」


 翌朝、訓練場に集められた優太達は、ジークの話しを聞き、何人かは震える手を押さえていた。恐怖、不安、帰りたい思いが複雑に絡まり合い、誰も話し出すものはいない。

 そんな中、一人の少年が決意に満ちた眼で、高らかに声をあげた。


「それでも、俺は戦うぞ! 皆で元の世界に帰るために!!」

「うん……うん! そうだよ! ここでくよくよしてても何も変わらないもんね!」

「お前らが行くのに、俺がいかねぇのは筋が通らねぇな……よっしゃ! やってやるぜ!」


 真っ先に声をあげたのは晃だ、それに続く様に絵美と大地が名乗りをあげた。


「私も、皆の為に行きます。その為の覚悟も……」

「楓が行く言うなら、私も覚悟決めなアカンな」

「明菜……」


 楓の言葉に、一人の少女が歩み出てくる。

 金井明菜、楓の親友にして、生徒会会計兼風紀委員会の副会長を任されている。黒髪ショート、活発と言う表現が似合う表情豊かな少女だ。


「それに、楓一人じゃ心配やし……」

「明菜! それはどういう意味ですか!?」


 そんなやり取りの中、昨日問題発言をした四人も楓共に行くと名乗りをあげた。


「俺たちも行くぜ! なっ! 将!」

「ああ! ご令嬢二人じゃ心配だしな!」

「「貴方達あんたらが言うな(や)!」」


 正孝達の言葉に、楓と明菜が声を揃えてツッコミ、それを見て鈴音姫花ひめかが微笑む。


「ふふっ、それに……この世界を観て回りたいしね!」

「だな! その為にも、力を付けないとな……」


 姫花の言葉に、同意と頷くのは近藤和馬だ。

 そんな、楓達を見てジークは申し訳無さそうに笑っている。

 そして、ジークは優太に視線を向けた。ブレインから話に聞きた、一人で旅立つと言う少年、少し興味が湧いた、故にブレインとの決闘を提案したのだが……


「ゆう君、私も晃君達と行くから……何処かであったらよろしくね?」

「まあ、会ったらな」


 当の優太は、眠そうに欠伸をしながら幸子と話していた。

 ジークは、視線を外し全員に聞こえるように、大声で話し掛ける。


「他には……居ないようだな、残留組の者達の安全は保証する! 自衛の力も付けさせる! では、これより訓練を開始するぞ!」


 そうして、本格的に訓練が開始された。




─────────────────────────────




 少し遡り昨夜ジークとランドが話していた頃、進はリティと打ち合わせの最中であった。リティは講義をしている時とは違い、かがやく銀髪を下ろし、眼鏡は外しており、講義時とは印象がだいぶ違う。


「ふむ……では、しばらくススム殿は戦えない分、この国内の調査がしたいと言うことで良いのか?」

「はい、歴史を調べ、資料にまとめれば、きっと彼等の役に立つはずです!」


 進の話しを聞き、リティは微笑む。

 そんな、リティに気が付き、照れくさそうに頭を掻いている。


「ふふっ、ススム殿は生徒を大切にしているのだな」

「ええっ! 僕は彼等の先生ですから、守りたいんですよ……生徒達を……」


 しかし、進は言葉を小さくしてしまう。その心には優太と、優太の言葉がのしかかっていた。

 進の変化に気づいたリティが、首を傾げる。


「ススム殿?」

「矢野君が……ステータスの儀式の前に、言ったんです……人は力を手にすると変わってしまうと……僕は何も言えませんでした……」

「そうか……」

「もしも、本当に生徒が力に飲まれて、変わってしまった時……僕はどうしたら良いのでしょうか?」


 進の話しを静かに聞いていたリティは、少し間を置いてから、まず一つの推測から話し始めた。


「恐らく……その矢野と言う少年は、自分がそうなるのを怖れて、一人で行くと言ったのだろうな……そして、もしも本当に生徒が変わってしまったのなら……心を受け止めてやれば良い」

「心を……」

「そうだ……心が弱り切っているから……人は変わってしまう……ならば弱った心を受け止め、癒してやれば良いんだ……」


 リティの言葉に、進は「心……癒す」と呟く。

 すると、進は決意を固めたように、拳を握り締めた。


「もう一度、矢野君と話してみます」

「ああ、そうすると良い」


 そうして、リティと進の打ち合わせは終了した。

 翌朝の訓練に合流するために、進は自室へと戻るのだった。

ネタが古いは言わぬが花だと思うんですよ……ハイ

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