45 守護の光とムート村
最近喉が腫れて辛かったので……エーペックスやる
雷が消えた頃、優太達は森の中を走っていた。
長老であるドライツは優太が身体強化魔法を使い背負って走っている。
「あ、あの光はユウタ殿お急ぎ下され!」
「何なんだ今のは?」
ドライツの言葉に質問しながら優太は速度を上げる。
優太の質問にドライツは月明樹を指差しながら答える。
「月明樹は最初は何の変哲の無い背の高い樹木じゃった。ある日この周辺にやって来た我等のご先祖様達は緑豊かなこの土地に村を造りましたのじゃ」
何の事は無い村の生い立ち。
そんな中、ドライツは「しかし」と続ける。
「村を造り、田畑を耕し、いざ作物を作ると言うところで大変な事が発覚してしまったのです」
ドライツの言葉に優太が首を傾げる。
「大変な事?」
「はい……作物が育たない土地だったのですじゃ」
その言葉に優太は思い出した。
「そうか、月明樹の伝承……」
「そうです、突然現れた神秘的な白銀の狼達に採れた作物捧げると約束したとき、狼達は背の高い樹木を囲み力を注ぎ樹木は月明樹になったのです」
ドライツは月明樹を見据える。
「作物は育つ様になり、約束通り村人達は狼達に作物を捧げ、祭りを開いた奉納と豊作を祝う祭り……その時から月明樹は新たな役割を担った……それが守護の光」
「それがさっきの狼の輝きか……」
優太の呟きにドライツが頷く。
「あれだけの魔力を弾く光間違いないと思いますぞ」
「……急ごう」
優太はそう言うと走る速度を上げるのだった。
稲妻が消えた瞬間にレイナ達を阻んでいた光も消え、それと同時にレイナ達は走り出す。
月明樹が目前に迫った所で後ろから声を掛けられた。
「レイナ、ルナ……まだこんなところに?」
「ルナの姿に驚かないのですね……実はさっきまで光に阻まれてしまって進めなかったのです」
「オン!」
レイナの言葉にルナが吠える。
すると、ルナを見たドライツが目を見開き驚く。
「なんとぉ!」
「説明は後だ、その光も守護の光で間違いないだろう?」
ルナの存在に触れようとするドライツに優太は待ったを掛けると光に関しての考えを聞く。
「ん、おほん! ええ、間違いなく守護の光だと思われます」
「えっと、ユウタさんそちらの方は?」
レイナの言葉にドライツは「おお!」と声を上げると慌てて自己紹介を始める。
「自己紹介がまだでしたな。儂はドライツ、この村の長老ですじゃ」
「長老さん……ライツさんのお祖父様ですか?」
レイナの言葉にドライツは頷く。
そんな二人に優太は話し掛ける。
「早くした方がいい、あの狼の頑張りが無駄になる」
「……? それは一体」
レイナが何か言う前に優太は走り出す。
そんな優太をレイナ達も慌てて追いかけるのだった。
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その頃、月明樹の近くでは冒険者達とライツが揉めていた。
「どけよ! もう依頼書は完了した、報酬は村に帰ったら払う!」
「いや、依頼は無効だ明らかに依頼内容に不備が有った……悪いがこの狼が守っていた樹を伐りたければ納得のいく理由を話してくれ」
ライツは狼が倒れた後、直ぐ様樹を伐ろうと近寄ろうとした所冒険者達に止められてしまったのだった。
更に、その場所にカイン達も戻ってきた。
「確かにそうだ、あんなのまともに落ちてりゃあ下に居た冒険者も巻き添えになってただろうからな」
「それと、さっきの魔法を使った者達の身柄も渡して貰います……明らかな危険行為であり他者に対して害が及ぶ危険の高い行為はギルド規則として禁じられています」
カインの言葉に続き、ナチュルもそう言いながら出てくる。
しかし、冒険者達が見渡しても魔導師達の姿は既に無かった。
「ナチュル、取り敢えずそいつらはギルドに任せるぞ今はこっちを……」
「ライツ!!」
カインがライツから話を聞くためにナチュルを促そうとすると何者かが乱入してきた。
そこには老人を一人背負った優太の姿があった。
「何だぁ? ってよく見りゃあ長老さんじゃねえか」
「冒険者様方、我が孫が迷惑をお掛けして申し訳ない! この通りですじゃ」
ドライツは優太の背中から降りると直ぐ様、冒険者達に頭を下げる。
そんなドライツを見て、ライツは驚きの声を上げる。
「じ、じいちゃん!? 何でここに病気は!?」
「うるさい! そんなことよりお前にはやることがあるじゃろ! 頭を下げろ! 皆様に謝罪せんかぁ!」
ドライツははライツの頭を掴むと叩き付けんばかりに頭を下げさせる。
そんな、光景に毒気を抜かれたのかカインは「はぁ」と頭をかくのだった。
しばらく経ち、ライツが完全に伸びたところでドライツは月明樹の根元に倒れている狼を見つける。
そして、ゆっくりと近付くと膝を地につけて祈るように頭を下げる。
「家のバカ孫が不甲斐ないばかりに申し訳ありませぬ……今まで見守っていただきありがとう御座いました」
ドライツはそう言うと「ゆっくりとお休み下され……」とその場を離れる。
そして、再び冒険者達の元へと戻ると、ドライツは頭を下げて冒険者達にお願いをするのだった。
「迷惑をかけた手前、不躾とは思いますがこのお方の亡骸を動かすのを手伝って貰えませんか?」
「……分かった手伝おう」
ドライツの言葉に最初に反応したのはガロックだった。
すると、それに続くように他の冒険者達も続々と手伝いを申し出る。
「近くの草木を集めて下され、集めた物はそのまま月明樹の根本に集めてクッションに……」
「……」
「ルナ、行くか?」
優太の横で冒険者達を眺めていたルナに優太は声をかける。
それに反応してルナは優太を見上げると「オン」と一鳴きして立ち上がる。
「長老……少し良いか?」
「ええ、もしやその狼は……」
ドライツの言葉に優太は静かに頷く。
それにドライツは「そうですか」と言うと道を開けた。
その先には月明樹の根本に丁寧に寝かされた親狼が居た。
「ルナ」
「……」
優太に促されルナはゆっくりと親狼に近付き親狼の頭に自身の頭を付ける。
その行為からしばらくすると、二匹の身体を光が包む。
そして、光が収まるとルナはゆっくりと親狼から離れる。
二匹を包んだ優しい光は空へと溶けて消えていくのだった。
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それから、村は騒がしく動いている。
月明樹の詳しい役割や守護の光の説明を長老が村人達にすることになっただった。
ライツに関しては本来ならばギルドに虚偽の内容を申告し依頼を受注したことに関して罰せられる筈だったが長老の意向により処分は村で決めることになった。
「俺はこの村の事を思って!」
「うるさい! グライツが戻ってきたらなんと言うか……」
「……」
そんなやり取りをする二人の元に優太が近付く。
それにドライツは「はて?」と首を傾げる。
「随分と気色悪い物をぶら下げてるなあんた」
「な、一体何の事だ?」
突然の優太の言葉にライツは少し後退り。
すると、優太は何かを掴んで引っ張る仕草をする。
「……! な、が、はあぁぁ!」
「ライツ!? 一体何を……」
「しっ! 手元が狂う!」
優太が言うと、ライツの胸元から何が引き釣り出される。
ズルズルズルズル
それは禍々しい朱色をした魔力の塊だった。
優太は険しい顔になる、ドライツは目を見開ていた。
「はあ、はあ、はあ」
「ライツ、あんた今回の件誰に入れ知恵された?」
優太の質問にライツは息を整えながら答える。
「はあ……はあ、突然女性が現れてこの土地に作物が育たないのは月明樹が原因だと言われた。そしたら、何故かそれしか考えられなくなって」
「な、なんじゃとそれはどういう……」
優太はそれだけ聞くと、ライツから取り出した魔力を自分の魔力で作った空間魔法を使ったケースに入れると何処かへと消してしまう。
「じ、じいちゃん! お、俺はとんでもないことを……」
「ライツ……」
「冒険者さん達の所に連れってくれ、直接謝りたい」
ライツの豹変に驚きつつもドライツはライツを冒険者達の所へとつれていくのだった。
ライツの件が終わりいよいよ村人達に長老が話す事になった。
「まずは一番始めに皆に言わなければならぬことがある」
ドライツが話し始めると、事情聞いて駆け付けた現村長グライツが人混みから出てきた。
「親父……事情は聞いた、全くあの馬鹿息子は!」
「グライツ、確かにあやつが悪いがどうやら手玉に取られていたらしい……どの道、過ぎたことを言っていても始まらん」
ドライツの言葉にグライツは静かに頷くとそのまま静観するようだった。
「んん! 話の途中じゃったな……まずはこの村を手放さなければならん事になった」
突然の事に村人達は騒然としている。
それを静めるとドライツは再び話を始める。
「皆、突然の事で戸惑っていると思う。この村にある月明樹の事は知っているな?」
「ドライツさん、それがどうしたんだ?」
村人の一人がそう聞くと、ドライツの後ろからルーフが出てきて質問に答える。
「ここ最近の作物が育たない現象について、月明樹の力が失われつつあることが原因だと分かりました……しかし、月明樹に力を入れることが出来ない為この村で生活するのは限界が近いのです」
「それとじゃ、月明樹の光の守護が無ければこの村は直ぐにモンスターに荒らされてしまう危険が有るのじゃ」
ルーフとドライツの説明に更に村人達は騒がしくなる。
すると、それを見ていたグライツが村人達に声をかける。
「皆、私の息子がやった事でこんなことになって本当に申し訳ないと思う。だが、今は手を取り合って行動ししなければならないときだどうか手を貸して欲しい」
「そんな事言ったって突然……」
「まだ焦らんでも良い、月明樹の力が消えるまで猶予が有る。それまで準備を終わらせるのじゃ」
ドライツの言葉で説明はお開きとなり村人達はそれぞれ準備の為に離れていった。
「親父、俺はルートさんと話して馬車を用意できるか聞いてくる、新しく村を作れる場所探す間の生活拠点も探さないと」
「分かった、儂は祭りの準備をしようと思う」
ドライツの言葉にグライツは首を傾げる。
「祭り?」
「うむ、月明祭を最後にやろうと思う。随分とサボってしまったからのう」
「そうだな、村の皆も喜ぶだろう」
グライツは頷くと、ルートを探しに離れて行く。
すっかり暗くなった村の広場でドライツは月明樹を見上げるのだった。
後少し、思ったより長引いたムート村の話が終わりそう……




