43 集まる者達と白銀狼の覚悟
最近疲れすぎてにじさんじに癒しを求めてしまう……濃い人ばっかりだね!
優太達は人になったばかりのルナにご飯を食べさせながら晩御飯を食べ終えた。
しかし、ここで問題が発生した。
「……」ギュッ
「離せルナ……風呂はレイナと一緒に入って来るんだ」
「んー、ダメですガッチリ掴んでいます」
何とお風呂に入れるためにレイナがルナを連れていこうとした途端ガッチリと優太の服を掴んで離さなくなってしまったのだ。
必死に優太も説得するがフルフルと首を横に振って嫌がってしまう。
「全く……一体どうしたんだ?」
「……」ギュッウルウル
「ユウタさん……ルナちゃんは不安なのだと思います……突然母親からユウタさんの元に行くように言われて気付けば姿が変わって……」
泣き出してしまいそうなルナの頭を優しく撫でながらレイナは優太に自分の考えを話続ける。
「今のルナちゃんには拠り所がユウタさんだけ何だと思います……だからどうか考慮しては頂けませんか?」
「……」ギュッ
「……はぁ、分かった、だが女の子の風呂の世話なんか分からんぞ?」
優太の言葉に、レイナは暫く黙り込むと意を決した様に顔を上げると更なる爆弾を投下するのだった。
「そ、それでは私も入ります! い、い、一緒に」
「は?」
「……」ギュッ
レイナの言葉に優太は珍しく間抜けな声が洩れるのだった。
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「ほら、ルナちゃん動かないで下さい……」ゴシゴシ
「……」
「……何でこんなことになったんだ?」
只今絶賛入浴中、優太はルナの頭を洗っているレイナを見ながら思考放棄していた。
実際の所原因は分かっている、ルナが心細さからか優太を掴んで離さなかったからだ。
途中で然り気無く居なくなろうとしたがルナの腕力に阻止されて結局ズルズル引きずられながら風呂へと到着してしまったのである。
「ほら、ルナちゃんお湯をかけるから目を瞑って」
「……」バシャァ
優太がここまでの事を思い返しているうちに、レイナがルナに付いた泡を洗い流していた。
今更ながら思うのはこの世界の風呂文化はかなり出来上がっていたシャンプーにボディソープ果てにはリンスやコンディショナーまである……迷い混んだ日本人の風呂への執着恐るべし。
「ゆ、ユウタさん……お隣失礼します」
「……」
「……ん」
余計な事を考えている内にレイナ達が湯船へと入ってきた。
湯船に使ったルナも「ふー」と言わんばかりの顔でお湯に浸かって居る。
「はぁ~良いお湯ですねぇ」
「そうだな」
こうして少し緊張感の有る入浴が終了したのだった。
風呂から上がり、食堂の前の通路を通っていると食堂から話し声が聞こえてくる。
「センパイ、明日の狼狩り本当に参加するんすか? 気がのらねぇっすよ」
「うるせぇ狼狩って報酬が貰えるんだいい話じゃねえか」
どうやら白銀の狼を狩る依頼を受けた冒険者達の様だった。
「下見も済ませたし、明日に備えてもう寝るぞ!」
「……うっす」
冒険者達は自分たちの部屋へと戻っていった。
それを見ていたレイナは心配そうに優太に話し掛ける。
「心配ですね……狼さんの事」
「……」
「……今日はもう寝るぞ」
レイナの言葉にルナが不安そうな顔でレイナの服を掴んでいる。
そんなレイナ達を促して優太は自分たちの部屋へと戻るのだった。
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翌朝、どうやらルート達はあれから宿には帰って来なかったらしい。
ロロから話しを聞いた優太達は村へと出てみることにした。
「ほら、ゆっくりと歩きましょうか」
「……」フラフラ
「言葉も憶えさせないと後々不便だな」
レイナの腕に掴まりながらゆっくりと歩くルナを見ながら優太はそう呟く。
それを聞いたレイナがルナを見ながら優太に提案する。
「あのユウタさん……その事なんですけど私に任せてはくれませんか?」
「どうしてだ?」
優太の言葉に、レイナはルナの頭を撫でながら話し始める。
「まだ手を繋いでいると緊張しているときが有るんですよね……だからもっとルナちゃんと仲良くなりたいんです」
「そうか……分かったルナの事はお前に任す」
優太の言葉にレイナは「はい!」と頷くと再びルナと歩き始めた。
すると、ルナは徐に優太の手に手を伸ばした。
「……」
「ふふっ、ユウタさんも一緒にですね」
「はぁ」
優太はため息をつきながらもルナの手をそっと握り、三人でゆっくりと歩き始めたのだった。
暫く歩くとあちらこちらに武装した冒険者達のパーティーが歩いているのが確認できる。
更にはいくつかのパーティーからは「たかが狼~」や「罠は仕掛けたのか~」などの会話が聞こえてきたので間違いなく狼狩りに来たパーティーだろう。
「思ったよりも人が集まっていますね……」
「……そうだな」
「お? 何処かで見た顔があるな」
優太達が話していると、こちらに声を掛けて近付いてくる一団があった。
その先頭には見覚えのある蒼い短髪の青年が居た。
「……見間違いじゃないか」
「あー、確かに他人の空似かなぁ……んなわけねぇだろ! なんでこんなところに居るんだよ!」
「えっと、お久しぶりです。カインさん」
出会って早々に漫才じみたやり取りをする二人、それに戸惑いながらもしっかりと挨拶をするレイナ。
すると、カインに代わって大柄な男が優太達に話し掛ける。
「ダンジョンの前で一度会ったな……俺はガロック・メルタ。岩石魔精族だ」
「あーしはライ・ガルーダ。雷鳴魔精族なんだよろしく!」
「ナチュル・グリーンベル。深緑魔精族です……ちなみに森林魔精族は森の木々や作物等に生命力を注ぎ操りますが、深緑魔精族は草木や花から生命力を借り受けて力を使います」
次々に自己紹介をしていくカインの仲間達どうやら魔族のみのパーティーのようだった。
さらにナチュルに至っては丁寧に森林魔精族と深緑魔精族の違いまで説明してくれた。
「わ、私はレイナ・ヘンティルと言いますよろしくお願いします!」
「ユウタ・ヤノだ」
「ちっ、相変わらず短い自己紹介だな」
優太の言葉にカインが悪態を付くが優太はどこ吹く風だ。
自己紹介を終えた面々は早速本題に入るようだった。
「それでよぉ、どうしてお前達はここに居たんだ?」
「……ルートの馬車の護衛だ」
「はい、ここで用事が有ったみたいなので」
優太達の言葉にカインは「ふーん」と優太達を見る。
すると、カインの目にルナが捉えられる。
「なんだ? その子供は?」
「少し知り合いから預かって居るだけだ……」
「そ、そんなことよりカインさん達はもしかして例の狼の件で来たのですか?」
レイナの言葉にカインは頷くと今度はカインが優太達に質問する。
「お前達は狼狩りには参加しないのか?」
「は、はい……私達は護衛で来ただけですし……」
「レイナ……もうそろそろ行くぞ」
優太はレイナを促すとさっさと歩き始めた。
その後ろ姿にカインは声を掛ける。
「今日中には森に入って狼探しを始めるらしいぞー」
そんなカインの言葉を背中に、優太達はその場を後にするのだった。
カイン達と別れた優太達は村の奥へと歩いていた。
そんな優太にレイナは少し焦ったように話し掛ける。
「思ったよりも早いですね行動が……どうしましょうかユウタさん」
「そんなに心配ならルナを連れて森に行って来ればいい……見つからんと思うがな」
優太の言葉にレイナは首を傾げる。
「ど、どうして見つからないと……」
レイナの言葉に優太は立ち止まり、少しルナを見た後に言うのだった。
「あの狼は……死ぬつもりだ」
優太の言葉にレイナは目を見開く、その様子を余所に優太は更に続ける。
「ルナは感づいてる筈だ……自分の親が何をしようとしているか……」
「……」ギュウ
「そんな……」
優太の言葉を肯定する様にルナは二人の手を強く握った。
そんなルナを見ながらレイナは悲しそうに目を伏せる。
そして、優太はそんな二人に言い聞かせる様に話を続ける。
「俺は別にやることがある……お前達は好きにしろ」
「……私達は森に行ってみます」
「……」
レイナはルナの手を引いて森の方へと歩いていく、それを見送った優太は村の奥……長老の家へと歩き始めたのだった。
月明かりは木を照らし枯れた地に希望を繋げた……新たな月は古き月の光を受けて力強く光を灯す。
もう少し続く