3 訓練~あの夕日には向かわない~
だいぶ遅れました。他、主要キャラのステータスがでます。此処での出なかった人達のステータスは追々出たりでなかったり……
ステータスの儀式から、少し進み。優太達の会話の少し前の時間、〈リルティア王国〉国王、ジゼルは自国の重鎮達との話し合いをおこなっていた。
実際には、重鎮達への釘刺しなのだが、その証拠にランドとシリアの兄妹がジゼル王の後ろに立ち、剣呑な目付きで、重鎮達を見つめていた。
「皆、今回、ステータスの儀式を観て貰ったのは、どれだけの力が救世主様方に有るかを知って貰う為である。そして、その力を悪用しようとすれば……その力は自分に向くことを忘れるな、彼等は子どもだ、移ろいやすく、脆い……」
「し、しかし、あれだけの力があれば……」
「黙れ……彼等は子どもと言ったのだ。世界を背負う……国の戦争に巻き込むな」
そう言われ、重鎮の一人……サーベルト・ラインハルト伯爵は、押し黙る。
「とにかく、暫く彼等には、訓練を付ける。その人員には、ジークを付けようと思うがどうだ?」
「父上! それが良いと私も思います。ですから、私にも参加の許可を!」
ジゼル王の言葉に、反応したのはジゼル王の実子である、ブレイン・リルティア王子だった。
「ふむ、ブレインか……歳も近いし、救世主様方とも馴染みやすかろう……宜しい、共に高め合うのだブレインよ」
「はっ! 父上、ありがとうございます!」
ブレインの嬉しそうな顔に、ジゼル王は頬を緩める。そんな、ジゼル王に剣呑な気配を納めたシリアが話し掛ける。
「陛下、宜しいでしょうか?」
「シリアか? どうした?」
「エリナ様も、救世主様方が気になるようなのですが……いかが致しますか?」
シリアが言う、エリナとは、エリナ・リルティア王女、ジゼル王の娘にして、ブレインの妹だ。
シリアの言葉に、暫く考えると、微笑み……
「構わんよ、エリナの好きにさせてやりなさい。救世主様方の邪魔はしないようにな」
その言葉に、シリアは嬉しそうに「はいっ!」と応えると、走っていく。
その姿を見送ると、ジゼル王はランドを連れて、会議室からでていくのだった。
「ちっ、ままならんか……」
サーベルトも、ジゼル王を見送ってすぐに、会議室からでていくのだった。
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翌朝、優太達は城にある訓練場に集まっていた。晃達は緊張の面持ちだか、優太は例の如く通常運転、眠そうに目を擦っていた。
「がっはっはっ! 皆、揃っておるなぁ!」
そんな、優太達に対して、豪快な笑い声を上げる大男と、キラキラした眼差しを向けてくる若い男が近づいてくる。
「皆さん、初めまして。リルティア王国王子ブレイン・リルティアと申します。ブレインとお呼び下さい」
男達の一人は、ブルーの入った黒髪、精悍で幼さ残る顔には、嬉しそうな笑みを浮かべている。
そんな、ブレインの自己紹介に、鎧の強面男が笑っている。
「がっはっはっ! 王子! 堅いですぞ! 皆と仲良くなりたいと申したのは王子でございましょう!」
「う、うるさいぞジーク! お前も……」
「おお! そうであったな! 我が名はジーク・ドランド! リルティア王国で騎士隊長をしておる……よろしく頼む!」
そう鎧の強面大男が、自己紹介しながら全員に握手をしていく、ブレインもジークに続いて握手をしていった。
晃達は、少し戸惑いながらも、握手に応じているが、優太だけは握手を求められても、顔をしかめるだけだった。
「ゆう君……なんで凄く嫌そうなの?」
「むう? 機嫌を害されたか?」
なかなか、握手に応じない優太に、幸子とジークが訝しそうな視線を向ける。
その視線も、物ともせず優太は一言答えた。
「苦手なタイプだ……」
「ド直球な、理由来た!? そのぐらい我慢だよ!」
「無理だ」
「即答で、言い切った!? い、意思が固すぎるぅ……」
そんな、優太と幸子のやり取りを見て、ジークは笑い、ブレインは何故か優太を睨んでいる。
「がっはっはっ! なんと、正直な者であろうか! ふむ、我々の自己紹介も終わったしな、では救世主様方の名を教えてもらえぬか?」
ジークの言葉に、真っ先に反応したのは進だった。
進は、晃達に視線で了承を得て、ジークとブレインに自己紹介を始めた。
「初めまして。工藤進と言います、この子達とは教師と教え子の関係です。職業は一応予言者となっています……これが私のステータスカードです」
「おお! ススム殿か、よろしく頼む! 予言者か……聞いたことの無い職業だな、皆、カードは後で一時預かるからな、自己紹介と一緒に提出してくれ! 後、見られたくない項目は隠蔽してもらっても構わんぞ」
ジークはそう言い、進を見る。進は、「自分は構いません」と頷き、ジークにステータスカードを渡す。
「一つ、よろしいでしょうか? 何故、カードを預かるのですか?」
「うむ、訓練の内容の参考にな……どれどれ」
ジークは、進の質問に軽く答えると、カードに視線を移す。
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工藤進 23歳 Lv.1
性別 男 種族 人族
職業 予言者 特殊職 転移者/救世主
体力 :50
攻撃力:30
防御力:20
持久力:20
敏捷力:20
魔力 :100
魔防 :90
固有能力 〈未来予知〉
スキル 言語理解(固定) 魔力増加小
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〈未来予知〉……三日~最高7日先の出来事を視ることが出来る。また、見る未来は、遠い未来ほど不確かになる、見た未来は絶対ではない。
カードを見た、ジークは「なるほど……」と頷き。カードを袋に入れる。
すると、次に晃がジーク達に、自己紹介を始めた。
「次は俺だな……大野晃、あっちでは剣道……剣術の一つを習っていた。職業は、勇者とかかれている、俺も隠すことはないからそのままで構わない」
「ヒカル殿か、よろしく頼む! しかし、剣道とな? 後でどのような剣術か見せてもらうぞ?」
ジークは騎士らしく、剣道に興味を持った様だ。晃が頷くのを確認にながら、カードに視線を移す。
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大野晃 16歳 Lv.1
性別 男 種族 人族
職業 勇者 特殊職 転移者/救世主
体力 :100
攻撃力:100
防御力:100
持久力:100
敏捷力:100
魔力 :50
魔防 :50
固有能力 〈聖剣生成〉
スキル 言語理解(固定) 勇者の加護
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〈聖剣生成〉……ありとあらゆる剣を使い、聖剣を生成することが出来る。剣への思い入れ、熟練度が高いほど力の強い聖剣を生成することが出来る。
「全体的に、ステータスが高いのは〈勇者の加護〉のお陰か……勇者は代々、先代の加護を受ける、これのことなのか……」
ジークは冷静に、今後の事を考えているが……ブレインは、勇者である晃に、尊敬の眼差しを向けていた。
「勇者……物語だけの存在だと思ってました! ヒカルさん、共に強くなっていきましょう!」
「ああ! これからよろしく! ブレイン王子!」
「いえ、歳も近いのですから、ブレインと呼んでください!」
「分かった……よろしく、ブレイン! 俺のことも、晃と呼んでくれ!」
晃とブレインは、そう言い合うとお互いに、力強く握手を交わしていた。
すると、ジークがその横で咳払いをする。
「おっほん、友情を育むのは良いことだ! しかし、今は皆の紹介の途中だぞ?」
「そうだよー、次は絵美の番なんだから、そういうのはあとあと!」
絵美の抗議に、晃とブレインは気まずそうに、頬を掻いている。その姿に、絵美はふん、と可愛らしく鼻をならし、自己紹介を始めた。
「小崎絵美でーす! 最初に此処に来たときは、大混乱だったけど、皆を鼓舞しなきゃって思って明るく奮闘中! 職業はアイドルです! なんか照れる……」
「エミ殿! 恥ずかしい事など何もないぞ! 皆のために明るく振る舞う……立派なことだ!」
ジークの言葉に、絵美は「えへへ……」と照れ笑いをしている。その姿に、ジークは微笑ましそうに笑うとカードに視線を移す。
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小崎絵美 16歳 Lv.1
性別 女 種族 人族
職業 アイドル 特殊職 転移者/救世主
体力 :20
攻撃力:20
防御力:20
持久力:20
敏捷力:30
魔力 :100
魔防 :100
固有能力 〈晴天の歌姫〉
スキル 言語理解(固定) 強化拡散 歌声拡散 魔力増加小
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〈晴天の歌姫〉……様々な能力を持つ歌を歌うことで、仲間を強化することが出来る。
「ほう、歌を歌うことで仲間をを強化出来る能力か……救世主様方は皆、面白い能力を持っているな」
「よし! 次は俺だな! 守野大地だ。晃と絵美とは幼馴染みで親友だ!」
「む? 気が早いな……まあ、いい続けてくれ」
「う……よく言われるぜ……それ……っと、職業は守護者だ。確認してくれ」
そう言われ、ジークは「うむ」と頷き、カードを受け取った。
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守野大地 16歳 Lv.1
性別 男 種族 人族
職業 守護者 特殊職 転移者/救世主
体力 :150
攻撃力:90
防御力:150
持久力:100
敏捷力:70
魔力 :20
魔防 :20
固有能力 〈鉄壁の守護者〉
スキル 言語理解(固定) 鉄壁 仲間思い 踏ん張り
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〈鉄壁の守護者〉……鋼の魂で、仲間を護る。障壁、防壁、盾などの耐久力、防御力を底上げ、強化する。
「守りに特化しているのか? それに……仲間思いか、仲間がピンチの時に本領発揮とはな、侮れんな……」
「異世界に来ても、生き方は変えられねぇからな……」
「もう! 大地君、湿っぽくされちゃうと、私の自己紹介がしにくいよ!」
幸子が、大地がうつ伏せ気味になったのを見て、少し、おちゃらけて、暗い空気を吹き飛ばす。
大地は、幸子の言葉に「すまねぇ……」と手を合わせている。
「うむ、では次だ」
「えっと、私は……『小◯……』幸子……って……ちがぁぁぁう! ゆう君! 突然、思い付いた様にボケを挟まないで! 年末に派手な舞台衣裳を着る演歌歌手みたいになっちゃったよ!」
「いやな……俺はただ、この暗い空気をな、紛らわそうとな……」
「絶対嘘! 見え透いた嘘!」
幸子は、絶妙なタイミングで挟まれた、優太のボケを受けて、ただいま絶賛漫才中……なお、クラスメイト数人が吹き出す。
そこに、助け船を出したのは、ジークだった。
「がっはっはっ! まあ、暗い空気も今ので吹き飛んだだろう。改めて自己紹介を頼む!」
「むう、後で絶対やり返してやるんだからぁ……はっ……改めて天野幸子です。ゆう君とは、幼馴染みで昔はよく遊んだよね……あ! 職業は聖女って書いてあります」
幸子は何度かの脱線をしながらも、自己紹介を済ませ、ジークにカードを渡した。
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天野幸子 16歳 Lv.1
性別 女 種族 人族
職業 聖女 特殊職 転移者/救世主
体力 :20
攻撃力:20
防御力:20
持久力:20
敏捷力:20
魔力 :200
魔防 :200
固有能力 〈癒しの祝福〉
スキル 言語理解(固定) 魔力増加中 回復魔法初級
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〈癒しの祝福〉……回復魔法の力を強化し、一定時間仲間を傷つきにくくする。また、死者を蘇らせる事はできない。仲間の傷ついた心を癒すことも出来る。
「おお! 回復魔法がLv.1から使えるとは、きっと救世主様方の助けとなるな!」
「ええ! さすがは、聖女……いえ、サチコ様です! 勇者様と聖女様……お二人と力を高め合うことが出来るとは光栄です!」
ジークの関心の声に、ブレインはさっきよりも強い尊敬……そして、幸子に熱い眼差しを送る。
そんな、晃達に続く様に、他のクラスメイト達も自己紹介を済ませ、ステータスカードをジークに渡していく。
「ほら! ゆう君の番だよ! って言うか皆、自己紹介終わって、後ゆう君だけだよ!」
「ん? もう終わったのか?」
優太は、眠そうに目を擦り、自己紹介を始めた。
「矢野優太……魔導師……以上だ」
「短い! 反逆の隙がないよぉ……」
優太の余りに短い自己紹介に、幸子が崩れ落ち、ブレインは何故かさっきから睨んでいる目がより一層鋭くなる。
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矢野優太 16歳 Lv.1
性別 男 種族 人族
職業 魔導師 特殊職 転移者/救世主
体力 :20
攻撃力:20
防御力:20
持久力:20
敏捷力:20
魔力 :100
魔防 :100
固有能力 〈魔法創造〉
スキル 言語理解(固定) 魔力増加小
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まず、魔力と魔防を隠蔽した、更に〈魔法創造〉の開示説明文も……
〈魔法創造〉……魔法を混ぜて、別の魔法を造り出す。
と変更しておいた。
「ゆう君……自己紹介ぐらいしっかりやろうよ」
「断る、俺はまだこいつらを信用していない……」
「き、貴様ぁ、言わせておけば!!」
優太の言葉に、強く反応したのは、さっきから優太を睨み続けていたブレインだった。
そんなブレインに、優太は眠そうな態度で一言言い放った。
「そんな眼で睨む奴を信用しろと?」
「っ! この!」
「がっはっはっ! 王子! 一本取られましたなー、はっはっはっ!」
全員の自己紹介が終わり、優太とブレインの衝突をジークが止めた。そして、ジークは優太と向き合うと、面白そうに笑みを浮かべると、一つの提案をした。
「では、ユウタ殿! これからの信頼関係は訓練の中で育むとして……今日を含めて七日後、王子と練習試合してみてはいかがだろうか?」
「そうだ! その練習試合で私に勝てたなら、此度の無礼は許してやる」
その言葉に、周りのクラスメイト達も、「おお!」など「王子が勝つだろー」などと完全に受けるムードだ。
「俺の意見は?」
「ゆう君、面倒くさがりの割には、トラブルメイカーだよね」
そんな中、優太と幸子の会話をブレインは睨んでいた。
「あいつは、聖女様に相応しくない……」
そうして、自己紹介を終えたのだった。
おまけ
「所で王子……」
「なんだ? ジーク?」
「救世主様方が笑っておったが“小林幸○”とは誰でしょう?」
「知らん! 救世主様方に聞いて来ればいいだろう!」
数分後───
「王子!」
「ジークか? で何だったんだ?」
「“小林○子”とは、魔物の類いで他に“テラ”や“EX”が居るようですぞ!」
「絶対違うと思うぞ……」
その後、ブレインは何故か空に向かって、「申し訳ありませんでした!」と叫んだと言う……
あと何話かは、城での訓練です。