34 想いを胸に前を向く子供達
ゆっくりと書いていきます。バイトで疲れて少し更新が遅くなりますが失踪はしないつもりです。
ジークに奴隷商一味を引き渡し、優太は扉を開けて宿屋へと戻ってきた。
レイナ達の様子を見ようと部屋を覗き込むと、リサ達と一緒に眠っているレイナを確認して優太は「はぁ」と一息つきそっと扉を閉めた。
翌朝、優太達はリサ達と朝食を食べていた。
そして、優太はリサ達に話し掛ける。
「この後お前達は孤児院に連れて行く事になる……」
「はい」
リサ達は小学六年生位であり、自分の事が考えられない歳でない。
その為、孤児院へと行くことは当たり前だと分かっていた。
「それともう一つ」と優太は質問を続けた。
「最後にラウラに会っておくか?」
優しく優太は問い掛ける。
子供にとって近い年齢の友人の死は受け入れ難い事だ。しかし、その中でも一番お兄ちゃんで有ろう金髪の活発そうな少年シーザーは優太に言うのだった。
「……お願いします」
シーザーの言葉に、水色の髪の大人しそうな少女リサも黒髪の物静かな少年のクラウも一緒に頷く。
そんな子供達の反応に、優太は穏やかに微笑むと「分かった」と頷くのだった。
朝食の後、宿の部屋のドアをラウラを寝かせた空間へと繋いで、優太達は入っていく。
そこには、空間固定により寝かせた時のまま魔力で作ったベッドの上にラウラは居る。
「最後の別れだ……この後、教会に引き渡すからな」
「……はい」
シーザー達はラウラの元へと近寄っていく。
そして、ラウラの前へと着くとシーザー達は泣きながら別れを告げていく。
「ごめんラウラ……俺がもっとしっかりしてれば……」
「ヒック……ラウラちゃん……いつか、一緒にお花を見に行く約束……グス……私代わりに行ってくるから……いっぱいお花持ってくるから」
「……っ」
シーザー達の様子に、レイナが歩み寄ろうとするのを優太は止める。
「もう少し待ってやれ……あいつらが前を向くのに必要な時間だ」
「……分かりました」
優太の言葉にレイナは頷くと、その場でシーザー達を見守るのだった。
数分後、落ち着いてきたシーザー達にレイナは近付いていく。
そして、シーザー達の頭を優しく撫でた後にラウラを抱き上げる。
「ラウラちゃん、私達は絶対に貴女が生きていた事を忘れない……貴女との約束も願いも全部私達の中に在るから……」
レイナが優太の元へと歩いて行く。
その後ろにシーザー達も着いてきていた。
「ユウタさん行きましょう」
「……もう良いのか?」
優太の言葉にレイナ達は頷く。
優太は一言「そうか」と言うと扉を開けて外にでるのだった。
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扉から出ると宿の廊下ではなく、どこかの路地裏だった。
路地裏から出て行くと目の前には教会が建っていた。
「便利ですね……その魔法」
「ああそうだ……リサ。腕を伸ばせ」
「え?」
優太の言葉に戸惑いながらも腕を前に伸ばす。
バサァ
すると、リサの腕の中に花束が落ちてきた。
リサは突然の出来事に、驚いて居たが腕の中の花束を見て目を輝かせる。
「綺麗……」
「ユウタさんこれは?」
「俺が居た世界の花を魔法で創った」
何もないかの様に優太の放った言葉に、レイナは驚きを隠せない。
そんなレイナの様子に、優太は首を傾げる。
「何かおかしいか?」
「い、いえ。便利な魔法ですね……はぁ」
レイナは内心でこの世界に無い物を創ったと言うことに驚いていた。
しかし、「ラウラも喜ぶね!」と嬉しそうに笑うリサを見て、レイナは頬を緩めるのだった。
教会に着くとレイナが扉をノックする。
すると、中から二十代前半位の修道服を着た女性が出てくる。
「あらあら……お嬢さん達は教会に何のご用かしら?」
「シスター……この子が安らかに女神様の元に行けるように祈りを捧げさせて下さい」
そんなやり取りを見て、優太は「あんなドジ女神で大丈夫か?」と思ったが飲み込む。
何処からか「余計なお世話よ!」と聞こえた気がしたが気のせいだろう。
「……心は安らかね……思いを託した者の顔……」
そっとシスターはラウラの頬を撫でる。
そして、レイナ達に顔を向けると優しく微笑み、ゆっくりと頷いた。
「どうぞ中へとお入り下さい。女神様の元へと送る準備をします」
そう言って中へと入っていったシスターに続いて、シーザー達も教会の中へと入っていく。
しかし、優太は動く気配が一向に無く、レイナはそんな優太に声を掛ける。
「ユウタさん? どうかされましたか?」
「いや、俺は少し用事が有るからお祈りはお前達だけで頼む……それに、お前達の間に部外者は要らないだろ?」
優太の言葉にレイナは何かを言おうとするがやめた。
そして、深々とお辞儀をして言うのだった。
「……お気遣いありがとうございます」
優太はそれに片手を上げて応えると、そのまま街へと歩いて行くのだった。
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レイナと別れた優太は【アストラ武具屋】へと足を運んで居た。
まだ朝早い為開いているか分からなかったが、問題なく開いていた。
「ジュリア居るか?」
優太はそう言いながら店の中へと入っていく。
すると、店の奥から伸びをしながらカウンターへとジュリアが出てきた。
「おはようユウタ……早いわね……」
「少し用事が有ってな……頼んだ物は?」
優太の言葉にジュリアは欠伸ををしながら一度奥へと戻り、しばらくすると何かを抱えて戻ってきた。
そして、それをガシャンと置くと包みを開く。
「かなり簡単な造りだけど軽くて頑丈に作ってあるから安心して……それに、あんまり複雑な物だと魔道具化しにくいだろうしね」
「ああ、助かる」
優太は礼を言うとジュリアから鎧を受け取る。
そして、そのまま店から出ていき再び教会へと向かうのだった。
優太が教会に戻るとレイナと子供達が待っていた。
「すまない、待たせたか?」
「いえ、大丈夫です。たった今終わったところですから……それより……」
優太の言葉にレイナは首を横に振りながら答え、何かを子供達に促している。
すると、リサがおもむろに優太へと近付き、ペコリと頭を下げた。
「ラウラちゃんに素敵なお花をありがとう!」
「「ありがとうございます!」」
リサがそうお礼を言うと、リサに続いてシーザー達も頭を下げてお礼を言った。
そんな子供達に、優太はフッと柔らかく微笑むとリサの頭を撫でながら一言「気にするな」と言うのだった。
「あっ、ユウタさん。シスターの知り合いに孤児院の院長が居るらしくてですね……」
レイナの話によると、教会のシスターの知り合いが直ぐ近くで孤児院を営んで居るらしく、通信用の魔道具で話を通してくれた様だ。
レイナの話を聞き終えた優太は頷くと、早速向かおうと歩き始めた。
「あらあら、もう行ってしまうのですか?」
「はい、この子達も早く落ち着ける場所に行きたいでしょうし……」
「ふふっ、そうね……それじゃあ女神様のご加護があらんことを……」
シスターはそう言うと、リサ達に笑顔で手を振って見送るのだった。
それに、リサ達も手を振って答えていた。
「今度は遊びに来るねー!」
優太達は孤児院へと向かうのだった。
優太達が孤児院に着くとすでに恰幅の良い五十代位の女性が仁王立ちしていた。
女性はこちらに気付くとニッコリと微笑み近付いてくる。
「あんた達かい? ミランダの所でお祈りしていったのはあの娘が珍しく連絡してきたと思ったら世話になりたい人達がいるっていうから待ってたよ」
女性はそう言うと快活に笑いながら話し続ける。
「ああ、あたしの名前はサラ・ブラウン気軽にサラさんって呼んどくれ、ミランダはあたしの孤児院の卒業生なんだよ」
中々パワフルなサラにレイナが話し掛ける。
「すいません、お願いしたいのはこの子達なんです」
「話は聞いてるよ、大変だったね。ここに居る間はあたしを母さんだと思って良いからね」
サラはレイナに促されて前に出てきたシーザー達を優しく抱き締めながらレイナ達に頷く。
そんな中シーザーはサラから離れて一度優太の元へと近付いて行く。
「ユウタさん、俺は強くなりたい! 俺も連れってくれ!」
シーザーは覚悟を決めて言って居るのだろう。
しかし、優太の言葉は決まっていた。
「駄目だ、お前に構っている暇はない」
「でも!」
「それでも強くなりたいなら……城に居るジークを訪ねて見ると良い」
優太は自分に着いて来てもシーザーは強くなれない事が分かって居る。
だから、適任者に押し付ける、それがジークだった。
「それに、本当に強くなりたいなら先ずはゆっくりと休むんだな」
優太はそう言うと、シーザー達に背を向けて歩き出す。
それに、レイナも慌てて追いかけるその際に後ろを振り向き「お願いします!」としっかりとサラに頭を下げていた。
「ジーク……」
優太達を見送った後、シーザーは見知らぬ人物の名前を呟く。
しかし、その後ろから頭に手を置かれた感触が伝わる。
「ほらほら、坊や強くなりたいとか何をやるにせよ、あの坊やの言う通り先ずは休んでからだよ……中にお入り他の皆にもあんた達を紹介しないとね」
サラの言葉にシーザーは頷き、孤児院の中へと入っていく。
その胸に必ず強くなると決意を抱いて……
気になるあの娘のステータスは? 最近、ダラダラ出来ない優太はいつになったらダラダラ出来るのか……真夏の机ってひんやりしてるよね




