33 想いと強さは比例するのだろうか?
最近、かなり暑いです熱中症には気を付けましょう。
街に戻って来た優太は、一端宿へと戻り準備を整えもう四人分の宿代を払う。また、子供三人の宿代はルートが出してくれた。
その後、部屋へと入っていたレイナ達に声を掛ける。
「レイナ、俺はちょっと用事がある、お前はそいつらを見ててやれ」
「分かりましたユウタさん、お気を付けて」
そうやり取りをすると、優太は自分の部屋に入り扉を開けた。
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そして、開けた先はジークの執務室だった。
件のジークは、優太を見つめて呆然としていた。ちなみに、ジークの執務室を鍵に登録したのは城から出ていく少し前にこっそりと登録した。
「昨日ぶりだな、ジーク」
「……いつでもと言ったが早すぎるし、直接我の部屋に帰ってくるとは予想外だ」
ジークは頭を抱えながらそう言うが、内心では嫌では無かった。
そんなジークに優太は、扉を指差しながら簡潔に用件だけ言うのだった。
「ジークに見せたい物がある……」
「土産……とは違うようだな?」
「ある意味間違ってない」
優太はそういうと扉から奴隷商一味を引きづり出した。
それを見ていたジークは目を見開いて驚いていた。
「奴隷商ゼンチョ……足取りが掴めなかった奴隷商人の一人だ……」
「成り行きでな」
優太の言葉に、やれやれと首を振るジーク。
「どうなったら奴隷商人を捕まえる事になるのだ? まあ、詳しくは聞かんが……土産は有りがたく頂戴しよう」
「……じゃあ俺は帰る」
優太はそう言うと、扉を開けて姿を消した。
優太を見送るとジークは、早速ジンを呼び出すのだった。
しばらくするとジンがやって来て、一瞬驚いた表情を浮かべたが何かを察したのか奴隷商一味を連れて行く。
それを見送ると、ジークは椅子に深く座り優太が居なくなった後の事を思い出す。
「とは言え、一日しか経っていないがな……」
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優太が城から出ていき、転移者たちの反応は二つだった。
いつも通り言われたメニューをこなすものと、自分の能力を調べ自主的に訓練する者だ。
この中でも外へと行く者達の勢いは別格だった。
「リティさん。私に魔法の事をもっと詳しく教えてください!」
「良いだろう……だが、聖女の事は私は分からないぞ?」
初めに動いたのは幸子だった。
幸子はリティから魔法を教わる事にした様だ。
二人を見送り訓練場へと行くと、珍しく絵美が話し掛けてきた。
「ジークさん」
「おお、どうかしましたかなエミ殿?」
そんな絵美にジークは応じると、絵美は決意に満ちた顔でジークにお願いをする。
「ジークさん……絵美に、絵美にトレーニングをしてください!」
「それは……個人でと言うことですかな?」
絵美はジークの言葉に頷く。
「絵美の職業〈アイドル〉は絵美達が居た世界では沢山の人に歌やダンスで笑顔を届ける職業なの」
「ふむ、それは立派な職業であるな」
ジークの言葉に絵美は嬉しそうに頷く。
そして、絵美は真っ直ぐジークを見ると「でも」と話し続ける。
「絵美は体力がないから、これだときっと皆を助けることが出来ないから……だから、お願いします! 絵美を鍛えて下さい!」
深々と頭を下げてお願いする絵美に、ジークは満足そうに頷くと絵美に話し掛ける。
「エミ殿顔を上げてくだされ、我で良ければ喜んで手を貸そうではないか」
「本当!? ありがとうございます!」
ジークの言葉に絵美は顔をガバッと上げてお礼を言う。
すると、それを聞いていたのか大地がジーク達へと近付いて行き、二人に話し掛ける。
「なあ、それさ……俺も参加させてくれ!」
どうやら、大地も自身を鍛えたいようだった。
大地は恥ずかしそうに頭を掻きながら理由を話す。
「いやな……矢野の戦いを見ててさ、俺にはあんなやり方出来ないからさ……だからせめて力をもっと付けようと思ったんだよ」
大地の言葉にジークは頷き、二人に言葉を掛ける。
「うむ、分かった……まずは基礎を鍛える。その後はそれぞれの固有能力に合った鍛練をする必要がある」
ジークはそう言うと二人に視線向ける。
そして、ニカッと笑うと二人に問いかける。
「お二人の心意気があれば心配無いだろう……しっかりついて来て下され」
「はい!」
「おう!」
二人の返事にジークは「心強い」と笑って見せるのだった。
城の長い廊下を背筋をピンと伸ばし、コツコツと靴を鳴らして歩く執事服の男が居た。
そして、その横を別の男がすれ違うが、執事の男……ランドは気が付いていないようだった。
「ランド、考える事か? 完全に気配を消していたとは言え、真横を通ったのに気付かないとは……」
「っ! 誰だ!」
ランドは突然の言葉に警戒をしながら、後ろを振り向く。
しかし、そこに居た人物を視認すると目を見開き「なっ」と声を漏らす。
「久しいなランド」
「先生!? 何故ここに!?」
ランドは反射的に頭を下げる。
そんなランドに、先生……ロブロは不適に笑いながらランドに近付いていく。
「なに、そんなに緊張するな……今回はお前達兄妹をしごきに来た訳じゃない」
「……? では一体どう言ったご用で?」
ロブロの言葉に、ランドは怪訝な表情で要件を聞く。
すると、ロブロはニヤリと笑うと愉快そうに言うのだった。
「くっくっくっ、何……少々てを加えたい者が居てな。暫くの間世話に成るぞランド……」
「なっ!? まさか!」
「いやいや、使用人の方ではなくてな……鍛冶屋でなぁ」
ランドは青ざめながら心の中で「どっちも一緒でしょうが!!」と叫ぶ。
「どっちも一緒でしょうが!!」
いや、心から漏れ出ていた……
「ほう……言うようになったなランド」
ランドがはっとするのも束の間、ランドが次に目にしたのは心配そうに覗き込む妹顔だった。
「お兄様……」
「シリア……鬼がお出でなさった……」
「……心中お察し致します」
二人は暫く遠い目で遥か遠くを見ていたのだった。
場所は変わって、鉄の打つ音が響く工房内。
ランドは鉄矢が打った剣を持ち上げて眺めて首を横に振る。
「駄目だ……固有能力に頼った打ち方じゃあ良い武器は出来ん」
「はぁ、はぁ、はぁ……いや、待ってくれ……これで……ごじゅっほ……」
「言い訳無用だ……筋力トレーニングの後に更に五十本だ」
鉄矢がやっているは、筋力の上昇と能力に頼らない技術力の上昇だった。
ロブロの考えでは、鉄矢の能力は技術力が強く反映される可能性が高かった。
だから、工房内での活動時間を上げる為の体力作りと能力を使わないで武器を打ち続ける事で技術力を上げる狙いが有った。
「やり過ぎだと思うかも知れないが……武器は扱う者にとっては生命線だ充分に鍛えなければ所有者を殺す結果になる」
「ふっ、ふっ、ふっ」
ロブロの言葉を聞き流しながら、鉄矢は筋トレを黙々とこなしていた。
そんな、鉄矢を見てロブロは「ふん」と鼻を鳴らすと少し素っ気なく言うのだった。
「一段落着いたら休憩だ……」
「うす!」
鉄矢の返事にロブロは頷くと鉄矢の背中に重りをのせるのだった。
「ぶふっ」
ロブロの理不尽が鉄矢を襲っている時、幸子は瞑想をしていた。
「毎日やってもユウタ程の魔力量には成らないだろうが、やって損は無いからな……一時間経ったら魔法の訓練に入る」
「……」
リティは幸子にそう言うと、そのまま椅子に座り魔導書を読み始める。
それから暫くすると、幸子が魔導書を読んでいるリティに声を掛けた。
「リティさん終わりましたよ?」
「ああ、もうそんなに経ったか……」
リティは魔導書を閉じて立ち上がる。
そして近くの扉に手を掛けると、ゆっくりと開ける。
「……凄い」
扉の先の光景を見て、幸子は感嘆の声を漏らす。
そこには、莫大な数の本が収められた図書館だった。
「まずは、魔法の第一段階としてはしっかりと学ぶ事だ……ユウタは例外だが普通ならば学べば学ぶ程、魔法の力を広げる事が出来る」
「学べは学ぶ程……でも、これを全部読むんですか?」
幸子の言葉にリティは「ふふ」と穏やかに笑うと首を横に振る。
「いいや違う、この図書館には細工がしてあるのさ……魔法を使う要領で魔力を放ってみるといい」
「分かりました」
幸子は頷くと、魔力を放出する。
すると、幾つかの本が白く輝き本棚からふわりと抜き出てくる。それらの本が全て幸子の元へと集まっていく。
「わぁ……結構いっぱいあるね」
「ふむ……この図書館は著者の魔力の痕跡を元に対象者に合った本が抜き出される仕組みに成っている……聖女に近い魔力を持った者が過去にそれなりに居たようだな」
リティは図書館の仕組みを説明する。
幸子は「うーん」と唸りながら本の一つとにらめっこをしている。
「サチコ……難しく考える必要はない、自分に必要だと思えるものを見つけるんだ。そして、必要だと思った物を学べば良い……ユウタの横に居たいのだろ?」
「……はい! 頑張ります!」
幸子の明るい声にリティは微笑みながら頷く。
熱心に魔導書と向き合う少女にかつての自分を重ねながら、リティは幸子に魔法を教えるのだった。
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時は戻りユウタが帰った後、人気の無い城の屋根の上一人の女性が立っている。
妖艶に笑う姿は美しく、恐らく見る人全てを魅了する事だろう。
「まだ、時間はいーぱっい有るわ……それでも、彼女は必ず私の元に来る。そして、そこから全ては綻び始める……」
不穏な言葉に返る言葉は……
「あらあらぁ、貴女らしく随分と陰湿な手段を使うのねぇ」
「……馬鹿正直に正面から叩き潰すしか脳の無い牛頭に言われたくないわ」
言葉は返って来た。牛の頭をした大男が美女の傍らに立っていた。
美女は大男の言葉に冷たく言葉を返す。
そんな美女に対して大男は「冷たいわねぇ」と少しふざけて返す。
「まあ良いわ、こっち事は貴女があの御方に任されたものね……あたしはあたしでやることが有るもの」
大男はそう言うと空へと飛び上がり、暗闇へと姿を消した。
美女はそれを見送ると、視線を一点に向けた後に大男に続くように暗闇に姿を消す。
「やっぱりあの男は厄介だわ……」
美女が見ていた先には、ジークが出てくる所だった。
ジークは誰も居なくなった屋根を見ると小さく呟くのだった。
「……嫌な予感がするな。何も無ければ良いが……」
そして、ジークは奴隷商の報告をするために、城へと戻るのだった。
まだ、幸子達は城で訓練中……しばらく、優太と再開は無いですがちょくちょく挟んで行くつもりです。2話位書いたら別の町に行くと思います。




