32 戦いと清算、祖国との訣別
スマブラsp……勇者参戦楽しみ過ぎる!
「楽しそうじゃねえか……混ぜろよ……俺も」
あらかた傭兵達を縛り上げた頃、一つの馬車からリーダーらしき男が怪しい笑みを浮かべながら降りてくる。
「混ざりたいのか? これに」
そんな男に、優太は挑発気味に縛られている男達を指差す。
すると、リーダーの男は剣を抜き放ち、構える。
「悪いがそいつらも、その嬢ちゃんも返して貰うぜ……」
「……断る」
一触即発、今にも動き出しそうな両陣営に横槍が入る。
「これは一体何事だ!」
小太りの男が、馬車の一つから降りてくる。
すると、小太りの男は状況を視認する。
「見ての通りですよ、ゼンチョ氏……敵襲ですよ」
「何だと!」
男の言葉に、ゼンチョと呼ばれた男は明らかに焦り始める。
そして、ゼンチョは急いで他の馬車へと走っていく。
「なに!」
馬車を覗き込むと、怒りの表情でこちらに戻ってきた。
「き、貴様ら! 俺の奴隷を何処へやった!」
戻ってくるなり、ゼンチョは優太達を指差しながら怒鳴り散らす。
それを「まあまあ」と傭兵の男が宥める。
「そう興奮しなさんな……どうせ今から叩きのめすんですから」
「だったら、さっさとやれ! 高い金を払ってるんだ、こいつらも生け捕りにして売り払ってやる!」
傭兵の男はゼンチョとのやり取りを終えると、再び優太達に剣を向ける。
すると、優太は挑発的な笑みを浮かべると、傭兵の男に話し掛ける。
「あのおっさんが、あんたの雇い主か?」
「そんなこたぁどうでも良いだろ? 今から命のやり取りをするんだ……構えな坊主」
傭兵の男は、優太の言葉をあしらう。そんな、傭兵に優太は「つれないなぁ」と首を横に振る。
「生憎と、あんたと戦うのは俺じゃない……」
「私です……」
「あん?」
優太の言葉に、レイナが前に出る。
傭兵の男は、訝しげにレイナを見る。
「逃げ出した嬢ちゃん……あんた、どっかで会ったか?」
「忘れたとは言わせませんよ……あの日、叔父様を斬った事……」
レイナの言葉に、傭兵の男は「あーはいはい」と頷く。
そして、切っ先をレイナに向けると、バカにするように言うのだった。
「魔力欠乏症で俺と戦いすら出来なかった嬢ちゃんか!」
「今は、あの時とは違います……」
レイナはそう言うと、事前に優太から受け取っていたリスポーンソードを抜く。
「戦う前に、貴方の名前を教えてください」
「ほう……それはどうしてだ?」
レイナの言葉に、傭兵の男はそう聞き返す。
すると、レイナは鋭く男を睨み付け、応えるのだった。
「騎士の端くれとして……今から、倒す相手の名前は憶えて置きませんと……」
「クックックッ、良いぜ……憶えておけ……グリス・ハルバート。テメェを殺す男の名だ!!」
そう言うと、グリスはレイナに斬りかかる。
後ろで、ゼンチョが「殺すな!」と騒いでいるがグリスには関係無かった。
今、レイナに取って最も負けられない戦いが始まった。
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レイナがグリスの一撃を受け止め、弾く、再び斬りかかろうとするグリスの真横をレイナの突きが通っていく。
グリスはその突きを剣で弾き、隙のできたレイナに斬りかかるが、レイナはそれを読んでいた様に身を翻して避ける。
「やるじゃねぇか……死にかけのお嬢様とは思えねぇな!」
「御縁が有りまして……病を気にしなくて良くなりましたから!」
互いに決定打は無く、拮抗した状態だ。
しかし、レイナは優太に言われて少し手を抜いている。
レイナは優太に言われた事を思い出す。
『レイナ、しばらく手を抜いて戦ってくれ……』
『分かりましたけど……何故ですか?』
レイナは優太の言葉に頷きながら、理由を聞く。
レイナの言葉に、優太は『おそらく』と話し始める。
『馬車に子供達が居ないのは速攻でバレると思う。そこで、ルートにはある程度離れたら右手を上げる様に言ってある』
『なるほど……ユウタさんの魔法で合図を察知するまでの時間稼ぎですね!』
ルートは最初この話しをされたとき、照明弾を提案したが優太が「目立つ」の一言で両断した
ルートは最後まで疑問顔だったが、それ以上は追及せずに優太の提案を了承したのだった。
「おら!」
「……!」
ガキィィン
作戦を思い返していたレイナに、グリスは強烈な一撃を打ち込む。
レイナはその一撃を受け止める。
「立ち合いの最中に考え事とは、随分と余裕だなぁ」
「せっかちさんは、女性に嫌われますよ!」
レイナは、グリスの一撃を弾き、距離を取る。
その時だった……
「レイナ……終わらせろ」
突然の優太の言葉に、グリスは眉を寄せるが……逆にレイナは微笑んでいた。
レイナの微笑みに、グリスは警戒して剣を咄嗟にガードに使う。
ガギィィィン
しかし、その瞬間にはグリスの剣は背後に音をたてて落ちる。
「一体なにがっ!」
「勝負ありですね……」
グリスの喉元には、レイナの剣の剣先が突き付けられている。
レイナは叔父の仇であるグリスを睨み、今にも斬りかかりそうなほどだ。
「貴方は、叔父様を殺した。でも、私は貴方を殺しません……あの子との……ライラとの約束が有りますから……」
「はっ! 私情で殺すのは騎士道に反すると? 反吐が出るな!」
レイナの言葉に、グリスが嫌味を含んだ皮肉を言う。
しかし、意外にもレイナはその言葉に首を横に振り応えた。
「違います。貴方は罪の無い子供達を何人奴隷に売りましたか? 私一人が貴方を殺せば、晴らされるのは叔父様の仇と、ライラの無念だけです」
レイナの話しの最中も、グリスは逆転を抜け目なく探るがその間に気付いた……腕は地面と凍り付けられ、奴隷商は既に凍らされ確保されていた。
「逆転でも狙いましたか? 私の主はそこまで甘くないですよ」
「……ちっ、クソが」
レイナはそう言うが、レイナ自身は優太の事は敵に容赦が無い事ぐらいしか分からないが。
「貴方達には、罪を償って貰います。沢山の人の無念を晴らすために……」
「はっ! 反省なんがっ!?」
グリスが何かを言おうとした所で、レイナは無言で、更には全力でグリスをぶん殴り気絶させた。
それを見ていた優太は、「ひでぇ」と声を漏らす。
「一割は必要だと思いました……九割は私念です。軽蔑しますか?」
「いや……むしろ、清々しいな」
優太はそう言うと、すっかり暗くなってしまった周りを見渡す。
「じゃあ、細かい事は明日にして……今日は帰るか」
「はい! ユウタさん」
こうして、レイナの仇討ちは終わりを告げた。ちなみに、グリス達は適当に開いた空間に投げ込んだ。
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街に戻る為に歩き始めてから数分が経った頃、見覚えのある馬車が少し先に停まっている事に気が付く。
「ユウタさん、あれってルートさんの馬車じゃないですか?」
「みたいだな……」
馬車に近付くと、ルートが気が付いたらしく馬車から降りて、優太達を出迎える。
「おう! お疲れさん」
「わざわざ待っていてくれたんですか?」
レイナの言葉に、ルートは少し困った顔をした後に、馬車の後ろを開けながら説明する。
「俺は直ぐに街に帰ろうとおもっ……」
「「レイナお姉ちゃん!!」」
ルートの言葉を遮って、二人の少年少女がレイナに抱き着く。
それを見て、ルートはやれやれと笑みを浮かべるのだった。
「この子達が嬢ちゃんを待ちたいってな……」
「リサちゃん、クラウくん……」
レイナは抱き着いてきた二人の無事を確かめるように、強く抱きしめる。
そしてしばらくすると、レイナは「はっ」となってルートに慌てて質問する。
「もう一人男の子が居ませんでしたか!」
「安心しな……治療も済んで馬車で寝てるよ。今はランダが見てくれてる」
ルートの言葉に、レイナは「良かった」と安堵の息を付く。
ルートは優太に視線を向けると、馬車を指差しながら言うのだった。
「乗ってくだろ? 帰りは」
「……はぁ、よろしく頼む」
優太は一瞬、嬉しそうに子供達を抱きしめるレイナを見ると、頷きながら了承するのだった。
そんな優太に、ルートは嬉しそうに笑うと、馬車の後ろを開ける。
「よし、それじゃあ乗った乗った!」
「はい! ユウタさんもはやく!」
レイナに手を引かれて、優太も馬車へと乗り込みクリエスティアへと帰るのだった。
クリエスティアに向かっている途中、優太はレイナにあることを話す。
それは、ルートにも忠告された事だ。
「レイナ……鎧を脱げ」
「ふぇ! ユウタさん……そんな、出会ってその日になんて」
「……若いねぇ」
レイナは顔を真っ赤にして俯き、ルートは物思いに耽っている。
二人の反応に、優太は「はっ」として訂正する。
「違う……鎧の帝国の紋章を消すだけだ」
「ふふっ、何となく分かってました……お願いします」
レイナは少し鎧を見つめてから、優太に鎧を渡した。
優太は鎧を受け取ると、「いいのか?」とレイナに視線を送る。すると、レイナはゆっくりと頷いた。
「はい……もう私は……帝国の人間ではありませんから」
「そうか」
優太は鎧を受け取り、帝国の紋章を消していく。
それと同時に、鎧に仕掛けを施す。
「これでよし……ほら」
「はい、ありがとうございます。これでもう、私は帝国とは無関係の人間……でも、お父様と叔父様との繋がりは消えません」
レイナは優しく鎧を撫でる。
そんなレイナを見て、リサと呼ばれていた少女が微笑みながら言うのだった。
「レイナお姉ちゃん、嬉しそう!」
「うん、ありがとう。リサちゃん」
レイナは少女の頭を撫でる。
こうして、優太達はクリエスティアへと帰るのだった。
次回は、クラスメイト側を書く予定です。




