28 新しい装備は心がピョンピョンします
小説大賞の一次選考、選ばれなかったよ……まあ、知ってた。でも、更新は辞めない何故ならば! “趣味”だから!
優太は、マリアに連れられてギルド御用達の武具屋に来ていた。
武具屋の名前は【アストラ武具屋】と書かれている。
「ジェリー、居るかしら?」
マリアが店の中へと入っていく。
それに続いて、優太も店の中へと足を踏み入れた。
「ジェリー居ないのかしら?」
マリアが誰かを呼んでいる間に、優太は店の中を見渡してみる。
並んでいる武器、防具はどれもキレイに並べられている。
そして、何よりどれも素人目にも分かるほどの業物であった。
「ジュリー!」
「うっさいわよ! 一体誰よ、大きな声で何回も何回も……あれ? マリアじゃない!」
マリアの呼び掛け、若干起こりながら奥から出てきたのは一人の少女だった。
少女は背は低く、華奢に見える、作業着にタンクトップといかにも職人な格好に、髪は後ろに束ねてポニーテールにしている。尚、胸は控えめだ。
少女は、相手がマリアと知ると怒りを引っ込めて、用件を聞き出す。
「で、どうしたのマリア。お父さんなら今日は帰らないと思うけど?」
「違うの、今日は貴女に見て貰いたくね? 歳が近い方が良いと思って」
マリアはそう言うと、店を見回して居た優太に視線を向ける。
優太はそれに気付き、取り敢えず自己紹介をする。
「ユウタ・ヤノだ」
「……ええ、それだけ!? はぁ、まあ良いわ……私はジュリア・アストラよ、よろしくね」
そう言うと、ジュリアは優太の手を取って「ジュリーで良いわ」と握手をする。
自己紹介が終わると、ジュリアはそのまま用件を聞く。
「それで、何を頼みに来たの?」
「実は、ユウタくんに防具を見繕って欲しいの」
ジュリアの言葉に、マリアは優太の装備を見せながら答えた。
ジュリアは、「ふむ」と顎に手をやり、考えるポーズを取る。
「ある程度、質の良いものを作ってくれれば後はこの子が自分で魔道具化させると思うけど……」
「っ!」
「へぇー、成る程ね……分かったわ。明日のこの時間に取りに来てちょうだい、それぐらいには仕上がってるから」
ジュリアはそう言うと、奥へと戻って行った。
しばらくすると、ジュリアは戻って来た。
「はい、これにサインして。お金は引き渡しの時に貰うから……あと、サイズは見ただけで判るから教えなくて大丈夫よ」
「ああ、素材は?」
「ふふっ、説明されたでしょ? ギルド御用達は素材をギルドから都合して貰えるから防具を作るだけなら素材は要らないのよ」
優太はジュリアから書類を受け取ると、名前の記入欄に名前を書き、ついでに気になった事を質問する。
すると、優太の質問にマリアが微笑みながら答えたのだった。
「それじゃあ、私はまだここに用事が有るから……お疲れ様ね、ユウタくん」
「ああ、というか気付いてたのか?」
「ええ、さすがに特徴的な魔道具だったから、そんなもの自作じゃなきゃ無いでしょ?」
マリアの言葉に、「確かに……」と納得すると、優太は店から出ていくのだった。
優太を見送ったマリアに、ジュリアが話し掛ける。
「それにしても珍しいじゃない? マリアが他人を気に掛けるなんて……」
「そうかしら? あっ、これの調整お願いね……」
ジュリアの言葉に、惚けて見せるマリア。
そんなマリアに、ジュリアはため息を付く。
「了解、で? 実際の所どうなのよ?」
「マスターに頼まれてるのよ。気に掛けてやってくれって……」
マリアは本当の事をジュリアに言う。
それと同時に、雰囲気を変え「それと……」と話を続ける。
「武器の調整も……備える様にって」
「どうりでね……基本手入れは自分でするマリアが此処に愛剣を持ってきた訳ね……」
ジュリアは、代わりをマリアに渡す。
「しばらくはそれを使って、試作品なの」
「ありがとう、じゃあ私も帰るわね」
マリアはそう言うと、代わりの大剣を受け取って店から出ていった。
それを手を振って見送るジュリア。
「帝国の元将軍、反逆の戦乙女に目を掛けて貰えるなんてね……彼は一体何者なのかしら?」
ジュリアはため息交じりに、そう呟くのだった。
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優太は、【アストラ武具屋】から出た後、始めに商店街エリアへと向かった。
何かしらの情報を仕入れること、今回街を回る目的の一つだ。
「らっしゃーい、らっしゃーい! スモールラビィの唐揚げだよ! 安くて旨いよー」
「当店、新人冒険者さんは割り引きしておりまーす!」
出店や飲食店の威勢の良い声かけを聞いて、優太は昼食を食べていないことに気が付いた。
「むう、適当に出店で食べるか……」
優太は、近くの出店の前に行くと、少しだけ眉をしかめる。
その出店に売っているのは、【スモールラビィの唐揚げ】日本ではペットとして馴染み深い動物……しかし、ぼこぼこ倒しているので今更かと優太は買うことにした。
「おっさん……」
「おっ? らっしゃい!」
優太は出店の主人に話し掛けて、商品を選ぶ。
驚いた事に、おにぎりが有った。しかし、サンドイッチよりも割高だった。
なので、おにぎりとサンドイッチを一つづつ買うことにした。
「おっさん、おにぎりとサンドイッチを一つづつ」
「毎度! おにぎりが銅貨五枚、サンドイッチが銅貨三枚だ」
優太は、代金を支払う。
その間に、周りの話を聞いていた。
『なあ、最近ハガン帝国が大人しいな……』
『確かにな……嵐の前の静けさじゃなけりゃあいいが』
【ハガン帝国】、長年リルティア王国と争い続けてきた国だと、リティからは教わっていた。
どうやら今は戦争は起こしていないらしい。
「どこか落ち着けそうな場所は……」
昼食を買った優太は、街の中央の広場で周りに耳を傾けながら、おにぎりにかぶり付く。
『おい、賢者の洞窟でハイゴブリンが出たらしいぞ……』
『でも確認出来たのは一回だけって聞いたわよ……』
「ふむ、旨いな……鶏肉に近いとは本当みたいだな」
おにぎりに入っている、一口サイズのスモールラビィの唐揚げは鶏肉に近い味と中々さっぱりした味わいだった。
また、街の冒険者達の間でも、初級ダンジョンにハイゴブリンが出現したことは問題視されているようだった。
優太がおにぎりを食べ終わった時、突然周りがざわめき始めた。
『なんだ?』
『うあ! あぶねぇだろ!』
『……すいません……通してください……はあ、はあ』
人垣をかき分けて出てきたのは、顔色の悪い、金髪の美少女だった。
腕に何かを抱えている、一瞬優太と目が合う。助けを求め、すがるような瞳と……
そして、その後ろを何人かの男達が後を追っていく。
『なんだったんだ? さっきの……』
『さあな、孤児が盗みでもしたんじゃないか?』
「……」
しばらくすれば、人垣は元通りになっていく。
少女を助ける者は誰もいない。
かくゆう、優太も気にせず昼食の続きをしようとする。
しかし、少女の瞳が思い出される。
「……ちっ、らしくねぇなぁ……」
優太はそう呟くと、立ち上がり。粒子魔法の痕跡をたどり始めたのだった。
ウサギの唐揚げ……ウサギ飼ってるから複雑だ……