番外編 それぞれの思い、鍛治師の師匠
番外編には、その後や合間にこんなことがあったと言う話を書いていく予定です。
直接ストーリーと関係無い物も書く予定なのでよろしかったら読んでください!
今日優太が城から出て行って、優太の見送りには誰も行かなかった。
その理由としては、優太とブレインの試合だった。
二人の試合に触発されて、旅立つ者達はより一層強くなるために、城に残る者達は、少しでも自分の身を守るために訓練をするようになった。
「せいっ! やっ!」
それは彼女達も一緒だった。
「ほんまにやる気満々やねぇ」
「そう言う明菜も、いつもより走り込みの量が多かったですよ?」
熱心に素振りをする楓に、明菜が茶化す様に言うが、楓に指摘されてしまい、「あちゃー、ばれとったんかー」と棒読みで言う。
しかし、直ぐに真面目な顔をするのだった。
「でもまあ、あんなん見せられたらなぁ、がんばらな思うやん」
「……そうですね」
明菜の言葉に、楓も頷く。
すると、明菜が頭の上で腕を組み伸びをしながら、話し始めた。
「しっかしまー、よう勝てたな思うわ。王子さんが油断してたんもあると思うけど」
「そうですね……私としてはもっと信用して欲しかったです」
明菜は優太の勝利に、感慨深げに頷き。
楓は明菜とは別の事で、悲しそうな表情をしていた。
「……確かにこそこそ努力しとった、言うんはなんか納得出来へんよな」
「勝つために必要だった……でも、きっとそれだけでは無いでしょうね」
楓は少しだけあちらで、優太と交流があった。
その時に感じたものは、明確な他者との隔たりだった。
「ほんまに、矢野君は幸子ちゃんは邪険にしないのになぁ」
「避けてる……と言うよりは見定めてる……そんな感じがします」
楓の言葉に、明菜も頷きながら同意する。
「なんと言うか、警戒心剥き出しなんよなぁ……」
「いつかは、彼の本心を知りたい……その為にも己を鍛えないといけません!」
二人は一人旅立つ同級生の背中を見ている。
それはいつか本当の彼と、話す事を望む、二人の思い。
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別の場所では、一人の少年が鬼気迫る表情で練習様の剣を振っていた。
そんな少年……晃の元にもう一人の柄の悪そうな少年が近付いて行く。
「よおー! 晃、優太の見送りには行かなくて良いのかー」
「いきなりだな大地、お前も行ってないだろ? それに、あいつはそんなもの望んでいないだろう……」
そんな晃の言葉に、大地は「あー、確かに……」と納得してしまう。
そして大地は、思い出したように昨日の話を始めるのだった。
「いやーそれにしても、昨日の優太は凄かったな! 勝ち方はせこかったが……」
「そうだな……」
大地の言葉に、晃は一言返すだけだった。
しかし、大地は意に介した様子も見せずに、話を続ける。
「反応も良かったし、確かにあれなら一人でもやっていけるかもなぁ」
「……」
大地の言葉に、晃は何も返さない。
晃の心に燻るものは……ただ一つの嫉妬心だった。
それは、ブレインとは違う、後ろめたさと劣等感から来る、暗く、どろどろした自覚のある嫉妬。
(優太……お前は……どうやってあそこまで強くなった?)
晃は優太とブレインの二人の試合を思い出す。
晃の目では追うことすら出来なかったブレインのスピードに、ギリギリながらも優太は対応して見せたのだ。
(……俺は決してお前には負けはしない!)
晃は決意する必ず、優太に勝つと……その為にももっと強くならなければと……
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その少年は、衝撃を受けていた。
鮮やかに輝く刀身、何度も再生する刃には少し思うところがあったが、凄まじい衝撃を受けたのは間違いなかった。
「魔剣かぁ……ただの魔剣があんな輝きを放つかねぇ」
そう呟くと、鉄矢は練習と試しに打ってみた剣を掲げて見る。
しかし、何か違うと鉄矢は思っていた。
「果たして、これを魔剣にしてあんな綺麗な物になるのか……」
「無理でしょうな……あれは高い技術で打たれた剣に、高純度の魔力が合わさり初めて出来上がる魔剣ですからな……」
いきなり聞こえた声に、鉄矢は思わず振り返った。
そこには、執事服を着た初老の男が立っていた。
「……!? あんた誰だ?」
「おっと失礼、私はロブロと申します……以後お見知りおきを……」
訝しげに聞く鉄矢に、ロブロは謝罪しながら自己紹介をする。
そんなロブロに、鉄矢は警戒を解かずに聞くのだった。
「ロブロさん? だっけ? 一体、国の執事が俺に何の用だよ……」
「そうですな……優太様の魔剣の大元を打った者と言えば宜しいですかな?」
「ッ!?」
ロブロの言葉に、鉄矢は明らか様に反応する。
そんな鉄矢に、ロブロはニッと笑うと、一つ提案を持ち掛ける。
「どうですか? 私の元で修行して見ませんか?」
ロブロはそう言うと、鉄矢に手を差しのべる。
鉄矢はその手をじっと見つめている。
(この人が言っている事は本当なのか?)
鉄矢は悩んでいた。この手を取ることが正解なのかと……
それを見かねたのか、ロブロは一つ提案する。
「ならば条件を付けましょう……貴方の好きなように付けてくださって構いませんよ?」
ロブロの言葉に、鉄矢は一息「はぁ」とため息をつく。
そして、鉄矢は決意する。
「わかった、そこまで言うなら受けさせてもらいます……師匠」
「くくっ、将来有望な弟子が手に入った、いまからが楽しみだ!」
ロブロは怪しい笑顔でそう呟く。
それを聞いた鉄矢は、ひきつった笑みを浮かべて言うのだった。
「早まったかな?」
しかし、鉄矢の顔には後悔の色は無かった。
こうして、彼等も一人の少年に感化され、前へと進むのだった。
想いは人それぞれですよね……




