24 旅立ちと言うよりお引っ越し
取り敢えずは、ここで一段落つきます。
昼食を終えて、いよいよ優太が城から旅立つ時間になった。
ほとんどのクラスメイト達は見送りに来ていない。何でも、昨日の試合に触発されて、鍛練に力を入れる者が増えたらしい。
「さてと、そろそろ行こうかな」
「うむ、いつでも帰ってきても良いのだぞ!」
「矢野君、約束を忘れないで下さい」
支度を済ませた優太に、ジークと進がそれぞれ声を掛ける。
そして、幸子も優太に近付いて行き、心配そうな顔で話し掛けるのだった。
「ゆう君、本当に無茶だけはダメだからね……私も頑張るから」
「ああ、分かってる」
「サチコのことは私に任せろ。しっかりと訓練を付けておく」
二人の会話を聞き、リティは幸子の魔法訓練を付けていく事を約束する。
それに、優太は頷き。
そして、四人に見送られながら、城から旅立って行くのだった。
優太が城からの出ていくのを見送った四人は、一緒にリティの研究室へと向かっていた。
そんな中、幸子は不安そうに呟くのだった。
「ゆう君、本当に大丈夫かな?」
「はっはっはっ! 何、心配なされるな、ユウタ殿は約束を破るような男では無いでしょう」
幸子の呟きに、ジークが笑いながらも、幸子の不安をかき消すように言った。
そんなジークの言葉に、リティと進も頷く。
「サチコ、そんなに心配なら尚更、魔法の訓練を頑張らないとな……いつか、ユウタと一緒に行くためにも」
「ええ、天野さん! いつか、矢野君の力になってあげてください!」
そんな、三人の言葉に、幸子は決意を新たに力強く頷くのだった。
(ゆう君、私強くなって、絶対ゆう君と一緒に行けるようになるよ!)
こうして、幸子はリティに魔法の訓練をつけてもらう為に、研究室へと向かう。
いつか、思いを果たす為に……
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城からの出て、直ぐに優太が向かったのは、街のお店が並ぶ商店街のような場所だった。
ここで優太は、食料と調味料を手に入れるつもりなのだ。
「随分と料理好きな異世界人が来たみたいだな……」
そう呟いた優太の前には、色々な調味料が売られていた。
お金は王国から支給されたものがあるため、心配する必要はなかった。
「本当に色々あるな……砂糖、塩、醤油に酢、味噌まで……さしすせそが揃ってるな」
最早、この世界に来た日本人の執念を感じるラインナップ。
それに加えて、胡椒、ハーブ類、スパイス等が売られている。
「なあ」
「へい! いらしゃっせぇ!」
優太が声を掛けると、店員の威勢の良い挨拶が返ってくる。
そんな、店員に優太は一つ質問をした。
「この調味料はどの街でも買えるのか?」
「へい! 大体の街では売られてる筈ですよ!」
「そうか……ありがとう、これとこれ……それぞれ二袋づつ頼む」
優太は店員に俺を言うと、砂糖、塩等の調味料数種類とスパイスとハーブを数種類二袋づつを買ったのだった。
「へい! 全部でエール銀貨五枚です!」
「ああ」
「あざいましたー!」
みなみに、この世界の通貨はエールと呼ばれる物で銅貨、銀貨、金貨、白金貨がある。
銅貨一枚で約十円で銅貨十枚で銀貨1枚分になる。
「さてと、保存方法は別空間に入れとけば大丈夫だろ……食料庫用の空間も創っておこう……よし」
優太は買ったものを空間魔法で創った空間にしまうと、ジークに教えてもらったクリエスティア行きの乗り合い馬車を探すことにした。
しかし、探し出すこと数分で優太は、広場のベンチに腰を下ろしていた。
「探すのがめんどい……こんな事ならクリエスティアに扉を創っておけば……はぁ」
鍵を早く創っていたなら、その選択肢があっただろう。
しかし、そうも言ってられないので、優太は渋々乗り合い馬車探しを再開した。
しばらく探し続けると、漸くそれらしき馬車を発見した。
「おっさん、この馬車はクリエスティア行きの乗り合い馬車か?」
「おお? そうだよ、兄ちゃんクリエスティアに行くのかい?」
優太の質問に、御者の男が頷きながら、行き先を聞いてくる。
御者の言葉に、優太は頷く。
「もしかして、兄ちゃん冒険者かい?」
「ああ、一応そうだ」
「いやー! それは丁度良かった!」
御者の言葉に、優太は首を傾げると、それに気付いたのか御者の男は事情を話始めた。
「いやな、実は毎回護衛として冒険者を雇うんだが、その仕事を頼んでた若いのの手違いで護衛を雇えなかったんだ」
「他の客の中に冒険者は居ないのか?」
「それがなぁ、いつもならクリエスティアに行くってなるとわんさか冒険者が乗るんだが……今回に限って冒険者が乗ってこなくてなぁ……」
御者はそう言うと、項垂れるのだった。
しかし、直ぐに顔を上げると、優太に交渉を持ち掛ける。
「それでどうだい? 護衛してくれるなら乗車賃タダに何なら報酬も払う! 頼まれてはくれんか?」
正直、これはかなりの厚待遇だ、なので優太は「それなら」と護衛を引き受けることにした。
「分かった、引き受ける」
「いやー、助かるよ! それに兄ちゃんなら乗客の受けも良さそうだしな! 一瞬女の子かと思ったぞ!」
優太が引き受けると言うと、御者は嬉しそうに笑いながらも、馬車の扉を開けてくれた。
馬車に入ると、数人の乗客が確認出来た。
「あらあら、可愛い冒険者さんねぇ……外の会話は聞こえたわよ。クリエスティアまで宜しくね?」
「面倒だが出来る限りの事はさせてもらう」
馬車に乗り込むと、乗客の一人のお婆さんに挨拶をされたので、優太も軽く会釈をしながら応える。
それから、数分後に馬車は動き出したのだった。
この前の訓練目的で乗った馬車よりも、到着は遅くなる様だ。
ゆっくりと進む馬車の心地好い揺れに、優太がウトウトしていると突然馬車が停車した。
「兄ちゃん! 悪いが来てくれ!」
御者の慌てた声に、優太は馬車から降りると、そこには困った顔の御者が護身用の短剣で魔物と思わしき存在を牽制していた。
それを見て優太は、直ぐ様マジックリングを手に装着する。
「キシャア!」
巨大な蛇のような魔物が、どうやらちょっかいを出してきたようだ。
ヘビースネーク……大きめな蛇型の魔物、基本的には森の木の上に潜む魔物。
「蛇って食べれるのか?」
「え? まあ、ヘビースネークは食えんことは無いが……青臭いぞ?」
ヘビースネークを見て、優太の場違いな疑問に真面目に返す御者。
そんなやり取りもそこそこに、優太はさっさっと倒すことに決めたようだ。
「ふっ!」
「ギアッ!」
優太は一息に間合いを詰めると、ヘビースネークの顎を蹴りあげて、無防備な腹に魔法を撃ち込む。
「敵を焼き尽くす雷撃〈ショックボルト〉」
「ギアァァァァ!!」
そして、ヘビースネークはあっさりと息絶えた。
それを呆然と見ていた御者に、優太は話し掛けた。
「この蛇死体は貰っても大丈夫か?」
「へっ? ああ、兄ちゃんが仕留めたんだ好きにすると良い」
そう言われ、優太はいそいそとヘビースネークを鞄に見立てた魔道具の中にしまった。
ちなみに、鞄型魔道具はリティからのアドバイスだ。
イベントリと呼ばれる収納魔法に見かける為の偽装だった。
「いやー、兄ちゃんは見かけによらず強いんだねー」
馬車が進み初めてから数分後、御者の男が窓越しに優太に話し掛ける。
「まあな、所でクリエスティアまで後どのくらい掛かる?」
「ああ、後もう少しで見えてくると思うが……」
御者の言葉に、軽く返すと優太はクリエスティアまでの道のりを聞くのだった。
そんな優太の言葉に、御者は先を見ながらこたえるのだった。
「おーい、見えてきたぞー」
御者の言葉に、優太は馬車の窓から身を乗り出して、確認する。
そこには、少し前に見た、クリエスティアへの門が見えたのだった。
クリエスティアから、優太の新しい生活が始まる。
一章は事実上ここで終わりますが、一章のくくりで番外編を書きます。
一つは優太がいなくなった後の城のようす物
もう一つは、過去に絡むものです。
是非読んでもらえるとありがたいです。
更新はまばらなので、気長にお願いします。




