22 負けフラグって知ってる?
始まりました、ブレインと優太の試合、試合直前に理不尽な勝負を入れられた優太果たしてどうなる!?
「それでは、試合開始!」
ランドの号令と同時に、互いに距離を取る。
優太は、元々剣技を使うスタイルではないため、間合いを空けて、慎重に立ち回る。
一方のブレインは、どうやら優太の動きを見るようだ。
(あいつは、自分からは動かないか……基本中の基本だな。とりあえず、魔法で様子見だな……)
優太は、開始早々に粒子魔法を展開させていた。その為、ブレインの動きはある程度掴めていた。
それを踏まえての、魔法での牽制、前に兄妹喧嘩を見たときに、魔法を斬って居たのを見ているので、有効だとは思っていない。
「凍てつく無数の氷刃〈アイスブレイド〉」
パキッピキッと音を鳴らしながら、複数の氷の刃が生成される。
しかし、刃を放つと同時にブレインも、剣を抜く。
パキンッガキンッ
案の定、氷の刃はブレインの剣の一閃で、叩き落とされてしまう。
それと、同時にブレインが距離を詰めてくる。
「その程度で、私を倒せるとでも?」
「まあ、思っていないな。纏いし風の靴〈グライド〉」
〈グライド〉……風を纏う魔法、スピードを上げる他に足に纏えば滑るように移動出来る。
〈グライド〉を使い、優太はブレインから距離を取ろうとするが、ブレインの方が早く、追い付かれてしまう。
「遅いな……」
ブレインはそう言うと、優太に剣を振り抜いてくる。
その一撃を紙一重で、受け止める。
「おお! 王子の一撃を凌いだぞ!」
たったそれだけで、兵士や貴族達がざわめく、今回の試合にはリルティア王国の貴族が何人か見学に来ていた。
ざわめきの理由は、手練れであるブレインの一撃を素人の優太が防いだからに他ならない。
「ふんっ、どうせまぐれだ……」
「それはどうかな?」
ギンッと弾き、互いに跳び退く。
優太は、これ以上逃げるのは無駄と悟り、迎え撃つ態勢を取る。
それが、気に入らないのかブレインは眉間に皺を寄せる。
「何のつもりだ? ユウタ……」
「逃げても無駄なら、迎え撃つしかないだろう?」
「ふっ、ならば徹底的に叩きのめしてやろう!!」
ブレインはそう叫ぶと、一気に距離を詰める。
それに対して、優太は魔法で応戦する。
「立ち塞がる障害となれ〈ウォール〉」
「こけおどしにもならんな!」
〈ウォール〉は文字通り、土の壁を作り出す魔法。
しかし、ブレインは壁など物ともせずに、切り進む。
「なにっ! 何処だ?」
「ふっ!」
「後ろか!」
壁を切り崩した先には、優太は居らず、ブレインは一瞬見失うが……すぐさま、後ろに回っていた優太に気づき、攻撃を防ぐ。
そして、そのまま攻める。
「接近してしまえば、こちらのものだ!」
「ちっ」
一撃、二撃、三撃と、ブレインは連続で攻め続ける。
そんな、猛攻に優太は防戦一方となるのだった。
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優太とブレインの試合が始まろうとしている時、幸子はクラスメイト達と戦いを見守るために、訓練場広場に備え付けられているベンチに座っていた。
そして、その横では左に晃、右に楓が座っている。
「ゆう君、大丈夫かな? 無茶しないといいけど……」
「そうですね、相手が相手ですし、勝つのは難しいかも」
二人の心配を余所に、試合は始まってしまう。
試合が進む中、楓が感心したように言う。
「凄い……魔法を使いこなしてる」
「ゆう君いっぱい勉強してたから……私もよく教えてもらってたんだ♪」
「あの優太が……」
二人の話を聞きながら、優太達の戦いを見る晃。
明らかに優太は押されている、それなのに諦めることなく、ブレインに食らいついて行く優太に晃は嫉妬の感情を募らせる。
(優太……絶対に負けるわけにはいかない……)
晃は決意を固め、二人の戦いを見つめるのだった。
場所は変わって、王族用に準備された席。
ジゼルとジークが、二人の戦いを観戦していた。
「ふむ、ユウタ殿は剣の才が有るのか?」
ジゼルが呟く、丁度優太がブレインの一撃を凌いで見せた所だった。
ジゼルの呟きに、ジークは首を横に振りながら答える。
「いえ、ユウタ殿に剣の才はございません……今のも、身体強化の魔法でギリギリと言う所でしょうな」
「身体強化魔法だと!? そこまで、魔法の資質が高いのか……」
元々、身体強化魔法はリティが作った魔法で、魔法の資質が高ければ高いほど習得は容易になる。
その為、短期間で身体強化魔法を取得した優太に、ジゼルは驚きを隠せないで居た。
「ですが……やはり、経験の差は埋まりませんな」
「うむ、流石に徐々に押されはじめておるな」
二人の言葉の通り、優太はジークの猛攻に押されはじめて居た。
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優太は今、ブレインの猛攻を必死に防いでいた。
至近距離での戦いでは、魔法による牽制は使えない。
「どうしたユウタ! それでは、私には勝てないぞ!」
「ちっ、うるせぇんだよ!」
優太はそう叫ぶと、大きく剣を振ってしまう。
それを、見逃さずブレインは、その一撃を避けて優太は大きな隙を作ってしまった。
「ふっ! そこだぁ!」
「ちっ」
間一髪、優太の剣でのガードは間に合った。
しかし……
バキンッ……カラン……
……優太の剣は、折れてしまった。
すると、ブレインは勝ち誇った顔で、しりもちをつく優太の首に剣を突き付ける。
「クハハハ! どうしたユウタ! この程度か!」
「ちっ」
ブレインは、高笑いしながら優太を見下ろすように立ち、勝ちを確信しているようだった。
そして、そのまま話し始める。
「やはり、お前にサチコの横にいる資格は無い! 力が有るのに高めようとせず、慢心するお前など!」
それは、心の叫びなのか、嫉妬が作り上げた感情を爆発させるブレイン。
ブレインは続けて叫び続けた。
「私は! ずっと努力をし続けてきた、物心付くときには既に王族としての使命を全うするために、己を高め続けてきた!」
苦悩、しかし誇りでもあった。
遊ぶこともままならず、国の為に、父の為にブレインは努力を続けてきたのだった。
故に、彼には“自分の為”と言う考えが少なく、“自分の為”の感情が分からず暴走する。
「だから、常に自分を高めて行ける。そういう者こそがサチコの隣に相応しいのだ!」
曰く、自分がそうであると、自分こそが幸子の隣に相応しいと……しかし、ブレインは優太を知らない。
優太が、どの様な道を歩いてきたかを知らない。
「さあ、終わりだヤノ……」
「なあ、負けフラグって知ってるか?」
突然の優太の言葉に、ブレインは僅かな反応を見せるが、そのままとどめを差そうと攻撃する。
全員に知らしめるように、大きく振り上げ、振り下ろす。
ガキンッ……カラン
しかし、振り下ろした後には、金属のぶつかり合う音と、地面に転がる、ブレインの剣が有ったのだった。
「な、な、何故、何故だ!」
転がる剣は、一瞬で氷付けにされ、最早再び握る事は出来ない。
しかし、それすら意識が行かないほどに、ブレインの目には”それ”が映っていた。
「何故だ! 何故、その剣がそこに有る! 確かに折ったはずのその剣が!」
立ち上がった優太の手には……折られたはずの剣が、“折れる前”のままに握られていた。
優太が持ち込んだ魔剣、それは〈甦る剣〉だった。
「この剣は刀身が高密度の魔力で出来ている。折られる、破損した場合に魔力に戻り剣に還る」
「なん……だと……」
優太の説明に、ブレインも、他の兵士、貴族達も騒然としている。
しかし、優太はお構い無しに話し続けた。
「これがこの魔剣の能力だ……まあ、かなり派手に魔力化するから気づかれると思ったが……」
「くそっ! そんな気配一度も……」
ブレインの言葉に、優太は「はっ」と鼻で笑うと、ブレインに視線を向ける。
「そりゃあ、気付かないさ……相手を見下して、長い御高説してくださってたんだ、気付くわけがない」
「私が見下す?」
優太の言葉に、分からないと言わんばかりの顔をするブレイン。
それに、優太は「はあっ」とため息を付く。
「自覚は無しか……まあいい、そのお陰で隙を突けた。見下した相手を倒すときには、必要以上にアピールするものだからな」
「まだ! まだ……」
「おっと、お前は剣技のみってルールだろ? ご覧の通り、剣は封殺させてもらった……自分が言った事は守れよ、ブレイン……お前の敗けだ……」
「ば……かな……ああぁぁぁぁあ!」
負けを認めれず、悔しさの咆哮を上げるブレイン。
ランドは、咆哮が響くなか淡々と結果を告げるのであった。
「勝負あり! 勝者、ユウタ・ヤノ!」
静まり返る訓練場、優太はブレインに歩み寄り、話し掛ける。
「ブレイン……お前は俺より強い、まごうことなき事実だ、努力を重ねて来たのだろうな」
優太は、話し続ける。
「だが、相手の努力に気付かず……知らず知らずに見下し……例え強くなる努力をしても、勝つ努力をしなかった。それがお前の敗因だ」
ブレインは何の反応もしない、声が届いているのかさえ分からない……それでも、優太は続ける。
その言葉は、全員に届く声で発せられた。
「俺は、明日……この城から出てく。俺には俺のするべき努力がある……帰るためにな……」
「なっ! そんな、急すぎます!」
優太の言葉に、いち早く反応したのは、進だった。
しかし、優太は進に視線を向けると、首に横に振った。
「先生、俺も本当なら城に籠ってダラダラしてたいさ……」
「だったら!」
「……でも、もう決めたことだから……」
「っ……! 困ったことがあったら……僕に言ってください」
優太の言葉に、食い下がろうとする進だったが、優太の雰囲気から進は説得するのを辞めた。
こうして、試合は優太の勝利で終わったのだった。
(なぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだ!!!)
(何故おれは、敗けた?)
ブレインの頭の中には、おびただしい数の何故が浮かんでいた。
何故敗けたのか、何故勝てなかったのか、何故気付かなかったのか、しかし、その答えは出てこない。
(あり得ない、こんなはずじゃ無かった)
(認めない、私は敗けていない!)
ブレインに優太の声は聞こえていなかった。
故に、自分でも気付かぬまま……ブレインは激しい感情の渦へと呑まれていってしまった。
試合終了ー、イヤー戦いを書くのは難しい、もうねグダグタ感が半端無いや




