21 無知な王子は、無気力魔導師を軽んじる
まずは、謝罪から……すいませんでしたぁぁぁ! 戦闘メインにするはずが……前置きが長くなっちゃって、次こそは確実に戦闘メインです!
優太は朝早くから起きていた。
そして、最早日課となってしまった筋トレをやっている。身体強化状態で1セット、無しで1セットを腹筋、スクワット等を最初は百回程やっていたのを今は大体五百回づつやっている。
「ゆうくーん、起きてるー?」
すると、おもむろに訓練部屋の扉が開いて、ひょっこりと幸子が顔を覗かせる。
ここに入る時点で、勝手に自室に入ったであろう幸子に「はぁ」とため息を付きつつ、最後の一回を終わらせて、優太は立ち上がる。
「うわぁ、ゆう君よくそんなに朝から動けるね……」
「ステータスのお陰で多少はな、所で何か用があったんじゃないのか?」
優太の言葉に、幸子は「はっ!」とわざとらしく言うと、用件を話し始めた。
「そうだった! ゆう君! 試合は午後から、訓練場でやることになったって!」
「そうか……じゃあ、まだ時間があるな、幸子」
優太は幸子に声を掛けると、手短に用件を言う。
「リティの所に行くぞ……一緒に来るか?」
優太の申し出に、幸子は嬉しそうに笑うと……
「うん!」
と明るく頷いたのだった。
リティの研究所に付くと、リティとジークが向かい合って座っていた。
そんな二人に、優太はため息を付きながら、話し掛けたのだった。
「はぁ、二人とも早いな……」
「おお! 来たかユウタ殿、待っていたぞ!」
「こいつがいきなり来てな、ユウタも早いじゃないか……ああ、いつものか……」
優太の登場に、ジークは予想通りと笑い、リティは優太の日課に察しが付いたのか一人納得していた。
「あ! ジークさん、リティさんおはようございます!」
「おお! サチコ殿! おはよう!」
「ああ、サチコ……おはよう」
優太の後から入ってきた幸子も、二人と挨拶を交わしていた。
頃合いを見計らって、優太はリティに闘技場を借りれないか交渉を始める。
「別にわざわざ許可を取らなくても、好きに使えばいい」
しかし、リティの言葉は随分と軽いものだった。
そんな、リティに優太は「分かった」と頷くとそのまま闘技場へと向かう。
「ゆう君!」
闘技場へと、向かう優太に幸子は声を掛ける。
優太が振り返るのを確認すると、幸子は応援の言葉を掛けた。
「ゆう君今日の試合頑張って! 私も頑張るから!」
幸子の言葉に、優太は僅かに微笑むと短く言葉を返した。
「おう」
こうして、優太は仕上げの訓練に、幸子は魔法の訓練へと意識を向けるのであった。
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仕上げの訓練に、ジークと実戦訓練をしている内に昼食の時間になっていた。
そして、昼食を食べた後にブレインとの試合の時間になる。
「ユウタ殿、そろそろ切り上げましょう……時間まで、食事を取ってゆっくりしているといい……それと、これを渡して置きましょう」
「はあっ……はあっ……ふー、なんだこれ?」
「ブレインの今のステータスだ。なに、実力差は歴然だからなこれぐらいいいだろう?」
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ブレイン・エルティア 16歳 Lv.20
性別 男 種族 人族
職業 騎士
体力 :350
攻撃力:370
防御力:350
持久力:330
敏捷力:400
魔力 :290
魔防 :250
固有能力 〈瞬光の貴公子〉
スキル 剣術上昇 光魔法中級 成長補助上級 閃光走法 敏捷上昇 剣術玄人
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〈瞬光の貴公子〉……光魔法を用いた走法を使うことが出来る。その早さは光に届く。
ステータスを見る限りジンとは一線を画していることがよく分かる。恐らくブレインも例外の一人なのだろう。
「ああ、ありがたく参考にさせて貰う」
ジークの言葉に、優太は頷くと闘技場から出る扉へと歩いていく。
そして、扉から出ると丁度一段落したのか、幸子が「んー」と伸びをしていた。
そんな、幸子の姿に優太は一瞬見惚れていたが、ほんの一瞬で我に返り声を掛ける。
「幸子、お疲れさん」
「あっ! ゆう君、今からお昼食べに行くの?」
二人の会話を聞きながら、ジークはリティに幸子の訓練はどうかと質問していた。
「リティ、サチコ殿の魔法の訓練は順調か?」
「ああ、飲み込みも早いし、上達も早い……もっとも、時々休憩がてらにユウタが教えているのも大きいだろうな」
ジークもリティの言葉に頷く、今日の仕上げの訓練の休憩に優太は幸子の魔法の訓練に付き合っていたのだ。
優太は器用に、幸子に教えるためリティも舌を巻くほどだった。
「ジークさん! リティ! 食堂に行きますよー!」
「おお! 今行くぞ!」
幸子の呼び掛けに、ジークは返事を返すと、幸子達と共に食堂へと向かうのだった。
優太達は、食堂に到着した。
食堂では既に、今日の試合の話で持ちきりだった。
「おい、今日の知ってるか?」
「ああ、王子と救世主の一人が試合するんだろ……」
「俺、試合の時間見回りなんだよなぁ……」
そんな、会話が昼休憩中の兵士からも聞こえてくる。
他にも、「どっちが勝つか?」などと言った会話も聞こえてきた。
「いやー、盛り上がっておりますなぁ~」
「はぁ、俺は面倒なだけだ……」
食堂に入ると、ジークは部下の兵士達に挨拶をしながら、歩いていく。
その後ろを優太達が着いていく、既にクラスメイト達も昼食を食べ始めているようだった。
そこには、ブレインも一緒に食事を取っていたようだ。
「矢野君、おはようございます。今日の試合は無理をしないように……出来れば今からでも撤回して欲しいですけど」
最初に優太達に声を掛けてきたのは、進だった。
進は教師として、優太の身を案じているようだった。
「矢野くん! 今日の試合、絵美も応援してるからね!」
「まあ、流石に勝てねぇだろうがな……まあ、頑張れよ矢野」
続いて、絵美と大地が声を掛ける。
同じクラスメイトとしての応援の様だ。
そんな、進達の言葉に優太は一息ため息を付くのだった。
試合当日、ブレインは自室で目を覚ますと、すぐさまリルティア王国軍の制服へと着替えを済ませる。
リルティア王国の軍服は濃い青を基調に、白いラインを入れたシンプルな作りになっている。
ブレインは基本的に城内では、軍服を身に纏っている。
「おはようございます、王子」
「おはよう!」
廊下を行き交う兵士やメイド達に、挨拶をしながら朝の鍛練をするために、中庭へと向かっていた。
そして、鍛練を昼近くまでしてから、昼食へと向かう。
朝食は、食べる時と食べない時が有るが、たいした問題はないようだ。
「んっ……? ブレイン!」
「あっ! ヒカル! おはよう!」
「おはよう? もう昼だぞ……」
そんな、他愛ない話をしながら、二人は歩き出す。
すると、晃がブレインに「そう言えば」と話を切り出す。
「今日の試合、応援してるよ」
「ああ! ありがとう」
そうこうしている内に、二人は食堂へと着いた。
そこには、既に何人かの救世主達が昼食を食べ始めていた。この中に、大地と絵美も居た。
「あっ! 晃くん! ブレインくん! こんにちわー!」
「おい! 二人ともおせぇぞ!」
すぐに、こっちに気づいた二人が挨拶をしながら、ブレイン達に近付いてくる。
すんな、二人にブレイン達は謝りながら合流する。
「すまない、少し鍛練をしていてね、その後にブレインと合流したんだ」
「私も同じだ、鍛練の後にヒカルと合流したんだ」
四人は話しながら、昼食を受け取り、席に四人纏まって座った。
少しの間、話しながら食事を取っていたら、絵美と大地が「あっ」と二人揃って食堂の入り口に視線を向けた。
その視線の先には、ジークとその後ろから着いてくる、幸子と優太の姿だった。
「矢野くんも来たねぇ! 私、ちょっと矢野くんの所に行ってくるね」
「あっ、おい! 待てって……はぁ、晃わりぃなちょっと着いてくわ」
「大丈夫だよ、大地。行ってきてくれ」
絵美達はそう言って、優太達の所へと行ってしまった。
そんな、場面を……優太が幸子と共に人に囲まれる姿に、ブレインの感情が熱くなる。
(ユウタ、お前はそこに居るべきじゃない! 自分を高める気がない物が居るべき場所ではない!)
(それを今日、証明してやる!)
ブレインの感情は昂る、暗く、熱く、噴出していく。
誰にも、気付かれる事なく……
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昼食を食べ終わり、優太達の試合は二時間後になると、ジークから言われた為、優太はリティの研究室へと向かうのだった。
また、幸子は試合までは晃達と一緒に居るらしく、今は優太の一人行動だ。
「ユウタ・ヤノ……」
「ん? 誰だ?」
突然呼び止められ、声のする方を向くと……そこにはブレインが立っていた。
優太は訝しげな視線を向ける。
「何のようだ? 対戦相手の偵察……と言うわけでもなさそうだな……」
「ユウタ・ヤノ! この試合に負けたらお前はもうサチコに関わるな!」
いきなりの物言いに、優太は眉をひそめる。
そして、呆れたようにため息を付くと否定する。
「はぁ、何故そんな命令を俺が聞かなければならないんだ?」
「それは、お前がサチコに相応しくないからだ!」
ブレインの言葉に、優太は話しならないと言わんばかりに首を振る。
優太の態度に、ブレインは鼻で笑う。
「ふんっ、どうせ負けるのが恐いのだろ?」
「違う……はぁ、まあ良いか、受けてやるよその挑発……」
優太の言葉に、ブレインは勝ち誇った顔をする。
しかし、優太は「ただし」と言葉を続ける。
「俺が勝ったら、今後俺に絡んでくるな……」
「良いだろう、どうせ勝つのは私だ……」
そう言うと、ブレインはそのままどこかへと、歩き去っていった。
優太も、リティの研究室へと向かうのだった。
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その二時間後、優太は訓練場の控え室に居た。
ルール、及びルールに関しての質問は、試合前に聞くとのことだった。
「ゆう君、頑張ってね! 私、応援してるからね」
「ああ、分かってる。もう時間だから早く行けよ」
優太の言葉に、幸子は「うん!」と頷くと控え室から出ていった。
それを見送ると、優太は立ち上がり、訓練場の広場へと向かうのだった。
「ふむ、お二人共来たようですね……それでは、今回の試合の説明をさせていただきます。」
優太が訓練場の広場へ着くと、ランドが確認し、そのまま進行していく。
「まず始めに、試合中には救命結界と言う魔法を使っているため、どんな攻撃を受けても死ぬことはありません」
そう言って、人形をランドが切りつけるが、傷跡一つ無い。
「次に、ハンデとして、ブレイン様は剣技のみで戦って貰います。ユウタ様はどんな手を使っても構いません」
これは恐らくブレインが提案したのだろう、剣技だけで充分だと言う自信の現れだろう。
「そして、最後に戦闘続行不可能、または降参したら負けです。よろしいですか?」
ランドの言葉に、二人は頷く。
そして、ランドは二人に質問する。
「他に聞きたい事はございますか?」
すると、優太がすっと手を挙げた。
ランドは「どうぞ」と発言を促す。
「武器の持ち込みは、大丈夫か?」
「……はい、許可しましょう……確認はさせて貰います。今、出せますか?」
ランドの言葉に、優太は頷き。腰に差して有った剣を取り出した。
ランドが剣を受け取り、確認する。
「魔剣ですか……怪しい気配はありませんね……大丈夫ですが、これは何処で?」
「一応魔導師何でね、リティに教わって作った物だ……」
優太の言葉に、「なるほど」とランドは納得したようだ。
しかし、ブレインは鼻で笑う。
「小賢しい事を……本当にお前が作った物かは知らんがまあ、良いだろう」
「はぁ、早く終わらせようぜ……めんどくせぇ」
不穏な空気に、ランドはやれやれと思いながらも、試合開始の号令をする。
「それでは、試合開始!」
こうして、戦いの火蓋は切って落とされたのだった。
おまけ
ジ「いやぁ、始まりましたなぁ陛下」
王「全く、知らんかった」
ジ「まだ、引きずって居られるのですか?」
王「儂って王だよな! 王だよね?」
ジ「自信を持ってくだされ……」
王族ようの席での一幕……
やぁ、試合がはじまっちまいましたねぇ……果たして、どっちが勝つのか………こうご期待




