プロローグ 異世界へ
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いつも通りの朝、ジリリリリと耳障りな音を鳴らす時計。
「なんだよ……んあ? もうこんな時間か、はぁ~、仕方ないから起きるか……」
そんな騒音の中、明らか様に嫌々、体をベットから起こす少年。矢野優太は、見た目平凡、学力平均のやる気の出せない脱力系男子だ。
適当に切られた黒髪、適度に清潔な服装、良くも悪くもない顔つき、鏡に映る自分に優太は「今日も平凡だ」と一人納得する。
しかし、自分は平凡と思っているが、母親似の整った顔立ちに度々女子に間違えられたりしたりしていたのだが……
「ゆうたー、いつまで寝てるの! 遅刻するわよー!」
「分かってるよー、今、行くからー」
そう言いながらも、優太はゆっくりと着替え、階段を降りていく。すると、食卓で母である美紀は困った様に、それでいて優しく優太が降りて来るのを待っていた。
「まったく、何でそんなにのんびり屋に育ったのかしら?」
「母さんの育て方が良かったからだろ? 行ってきます」
困り顔の母親をよそに、優太はバターの塗られたパンだけをかじると、そそくさと学校へと向かうのだった。
「ふぅ、本当に困った子ね」
残された美紀は、溜め息をつくと台所に向かった。
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学校に遅刻したら、先生からのお説教と言う、面倒で不名誉な事態が起こるので予鈴が鳴る前に自分の席着く優太。
すると、優太に話し掛けて来る人が居た。
「ゆう君、またギリギリだね! いつも、思うんだけど何でこんなに遅いの?」
話し掛けてきた人物は、クラス1の美少女……天野幸子、サラサラの黒髪を肩まで伸ばし、綺麗と可愛いが絶妙に整った顔立ち、誰にでも気軽に話し掛ける、フレンドリーな性格……まさに、天使と呼んでも過言ではない。
「天野、俺は動きたくないんだ。そう思っていると、いつの間にかギリギリになるんだよな」
「えっと……そもそも、動きたくないって思考が原因だと認める事から始めよ?」
そんな、絶世の美少女に話し掛けられても、平凡、平穏、平常を愛する優太は、平常運転だ。
優太の掠れる様な声に、ツッコミを入れる幸子。そんな二人に……特に優太に、視線が突き刺さる。
「幸子、あんまりそいつを甘やかすな、何処までもだらけるぞ。それに、矢野! お前は幼馴染みだからと幸子に甘えるな!」
「さっちゃん、おはよーあんまり優太くんばかり構うと晃くんが拗ねちゃうよー」
鋭い視線中に居る二人に話し掛けるのは、堅物の剣道部主将、大野晃。正義感の強いイケメン、成績は常に上位、家が剣道の道場で大会では、いつも優勝を飾るパーフェクトイケメンだ。
そして、小柄な女子生徒は、幸子の友人である小崎絵美。いつも、笑顔が絶えず、クラス内の女子グループのムードメイカーと言っても過言ではない。
「ん~、でもなんかほっとけないと言うか……こう、手の掛かる弟みたいで? いつも、家の前を通る度に心配になるんだもん」
「さっちゃんはやさしすぅ~ぎ~、晃くん頑張れー」
優太の我関せずの態度と、幸子の言葉に頬を引きつらせる晃に気付いた絵美が突然、晃にエールを贈り始める。
そんな中、優太当人は心底面倒臭そうに、三人に話し掛けた。
「盛り上がってる所悪いんだけど、もうすぐ予鈴がなるぞ?」
そんな、優太の言葉に三人が席に戻ろうと、歩き出そうとした時、それは起こった。
広がる魔法陣、輝き出す数人の生徒、その中には幸子、晃、絵美他に次の授業の社会科の教科担任、そして優太自身も含まれていた。
(これは、異世界召喚? 凄まじい程のテンプレだな……)
冷静に状況を考えながら、これから起こるであろう面倒な出来事に頭を抱えるのだった。
輝きが収まり、周りを見渡すとそこは真っ白の部屋だった。
「神の間……とでも言うのだろうか? 天野達は何処だ?」
この状況下においても、冷静な優太は流石は平凡、平穏、平常を愛するだけはあると言えるだろう。
すると、突然、頭に響くように、透き通った女性の声が聞こえてきた。
『異世界より、選ばれし者よ。我が世界を救う為に、力を貸して欲しい』
「断る……それで、他の奴等は何処に居るんだ?」
『そうか……えっ!? そ、即答!? ちょ、ちょっと待って、ほ、ほら、何か求める物とか、元の世界に帰る方法とか知りたいでしょ?』
突然の拒否、余りの所業に思わず焦った声を出す、神? に、優太は「はぁ~」と溜め息をつくと、神? に話し掛ける。
「とりあえず、他の奴等がどうしたか教えてくれないか?」
『んん、分かった。まず、正義感が強そうな少年が見過ごせないと、頷いてくれた。次に、小柄な明るい少女も頷いてくれてな、あとの者達も、それぞれの理由で、了承してくれたぞ』
神? が威厳ある話し方に戻して、話してくれた情報に悩む仕草をする優太は、神? に一つ質問をする。
「……天野はどうしたんだ?」
『天野? ……ふむ、君の幼馴染みか、既に帰る方法を報酬とし、あちらに転移しておるわ』
「……そうか」
優太とて、人並みの感情があるため、幼馴染みである幸子のことが気掛かりだった。
そして、元の世界に帰るには、行くしかないか……と考え、神? に、さらに、質問する。
「はぁ~、分かった。だが、戦う様な力は俺には無いぞ?」
『安心しろ、お前が望む力を出来る範囲で与えてやる』
「それは、スキルと言うものか?」
『ふふ、スキルとは違う物だ。あちらの世界では、珍しい力だぞ?』
優太の質問に、何処か面白そうに笑う神? 眉をしかめながらも、優太の意識は別の場所にある。
(スキルが、常識的な世界か……ステータスがあると、考えた方がいいな)
考え終えた優太は、早速、力の事を聞き始める。
「で? その珍しい力とやらは、何なんだ?」
『その人間の持つ性格を具現した物だ。例えば、正義感の強い者は、聖剣や、心に反応して力が上がるとかだ』
さらに悩む優太、自分の性格……
そして
「はぁ~、俺は、極力動きたくない。なるべく動かなくても戦える力がいいな」
『む、難しいな、全くは無理だが……〈魔法創造〉はどうだ? これなら工夫次第でどうとでも出来るぞ?』
「じゃあ、それでいい。所で、どんな力何だ? 〈魔法創造〉というのは」
『それは、具現化されるまでのお楽しみだ。あちらについてから調べるといい……では、行くがいい』
そう言われ、歩き出そうとした時……
『まっ、待って! 願い事聞いてないぃぃ!!』
(もしかして、ドジっ子なのか?)
そんな焦った声に、苦笑いと親近感をもって、優太は振り替えると、願いを口にする。
「願わくば……平和で、平穏なあの世界に帰りたい……」
願いを言い終わると、優太は再び歩き始めた。
『あの目には、不安も、心配も色々我慢しているのか……やる気が無いのは……恐らく本心だな……すまない、君達の幸運を祈っているよ』
一人懺悔の言葉を呟く、神……女神ルリエルは、異世界の子ども達に謝るのだった。
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光輝く道を歩いていると、不意に光が収まり神殿の様な場所に出る事が出来た。
「ここは? 神殿か、テンプレのオンパレードだな……」
「ゆう君!! 無事だったのね! 良かったぁ」
「おいっ! 優太! 幸子はずっと心配してたんだぞ!」
「そうだよ~、後、優太くんが最後だから、早く行った方がいいね」
そこには、転移する前、教室で輝きに包まれていたクラスメイト達が集まっていた。
その中から、幸子が走り出し、その後ろに、晃と絵美が続いて歩いてくる。
「天野? それに、大野と小崎か……ここは何処なんだ?」
「えっ? えーと、まず女神様から、この世界の事聞いたよね?」
「ああ、この世界が危ないから救ってくれと言っていたな」
頭を軽く掻きながら、思い出すよう言う優太に、幸子は頷く。
「そう! 細かい事は、この国の王様が教えてくれるって、言っていたけど……」
「く、国? ここは何処かの国なのか!?」
あっさりと出た、国という単語に、流石に驚きが隠せない優太に、驚く幸子達。
「ゆう君もしかして、女神様から聞いてないの!?」
「ああ! ついで、この世界の名前も、あいつの名前も聞いていない! あの、ドジ女神め!」
「落ち着け! 優太! ここは、女神信仰が最も厚い国〈リルティア〉だ、この国でその言葉は洒落にならないぞ」
優太はそんなやり取りを経て、ある程度情報をもらった。
まず、この世界は女神ルリエルが創り出した世界、〈エールランド〉という世界らしい。そして、転移者達は皆、お告げと共にこの〈リルティア〉に送られたということだった。
「それで、今、絵美達は王様の所に移動中なの。さっちゃんが優太くんが居ないからって、ずっと待ってたんだよー」
「はぁ~、悪い、所でもう限界なんだが……まだ、王様の所に着かないのか?」
少し話し込んだ自覚があったので、素直に謝る優太。しかし、直ぐに、いつものぐうた……のんびり屋が顔を出し、前を覗き込む。
「案内人は、神聖な場所みたいで、付けられないらしいから……あっ、扉が見えて来たよ! ほらっ!」
幸子が指差す先には、豪華で重厚な扉が姿を現していた。
「何があるか分かりません。先生と、大野くんで扉を開きましょう」
転移者達の中で、唯一の大人である、社会科教員の工藤進が、万が一を考えて、そう提案する。
「分かったよ、先生、いっせーので開けよう」
「はい」
「「いっせーのっ!!」」
ギィィィイ
重厚な扉が開き、その先に待っていたのは……大勢のメイド達だった。
「「「「ようこそいらっしゃいませ」」」」
「お待ちしておりました勇者様方。それでは、早速陛下の元へ案内いたします」
メイド達の先頭に立つ、二十代後半の整った顔つきに、栗色の髪をオールバックにしている執事が恭しくお辞儀をしてくるが……クラスメイト達の反応は、メイド一色だった。
男子はメイド達に「「おぉ~」」と歓声を上げ、女子はそんな男子を冷めた目で見ている。
「ゆう君も、メイドさんが好きなの、そうなの?」
「……疲れたなー、まだかなー」
「幸子! 俺は、メイドになんかなびかないぞ!」
「晃君、さっちゃんは優太君にしか、聞いてないよ?」
そんな、しょうもない事を話しながら、案内人の執事に付いて歩いて行く。また、優太が話しを逸らしたのは、メイドに動揺したからで、幸子の目に深淵が見えたからではない、ないったらない。
「はぁ~、面倒臭いなぁ~」
これから起こる事を考え、優太は深い深い溜め息をはくのだった。
しばらく歩き、優太が思ったのは、(まだ歩くのか……)だった。
さらに歩く事、数分さっきと同じ、豪華で重厚な扉の前に到着していた。
「この先に、陛下は居られます故に、無礼の無いようにお願い申し上げます……」
ガチャンと、さっきの扉の様な、錆びた音では無く、しっかりとした音を響かせ、扉が開く。
その先で、待っていたのは、豪華絢爛な玉座に座る、60代ぐらいの老人……〈リルティア王国〉国王、ジゼル・リルティア王であった……
こんな、感じで書いていきます。コメントは……素人なので、お手柔らかにお願いします。