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アスファルト

作者: そふろじー

 とある夏。今年は冷夏かと叫ぶテレビはいつの間にか静まり返り、静かに最高気温更新のニュースを垂れ流していた。

 私が最後に冷夏という言葉を使ったのはいつだろうか。そもそも、人生でそんな言葉を使ったことがあるだろうか。

 私はそんな情報に踊らされている人間が嫌いだった。流行に迎合するということに価値を見いだせなかったからだ。

 事実、私の周りで流行に一番乗りする人は確実に金欠で悩んでいる。そんなことで悩むこと自体無駄なのだ。悩む暇があれば働くこと、これが私の生き方であった。

 今日は少し早めに仕事が片付いたので、私は同僚とバーに寄った。こんな日の酒は、私を元気にしてくれる。

 「こんな日に飲む酒は、実にうまいものだな」

 「ああ」

 こんなふうに毎日を過ごしていた。堅実な人生、これが私の幸せなのだ。

 ある夏の朝、私は子供にせがまれ海に行った。かわいい子供と遊ぶ。しかし、深くは入らない。怪我でもしたら大変だから。

 そしていずれ夏も過ぎ去り冬が来る。四季のサイクルが繰り返す。私も老い、病に倒れた。

 私はすることも無くなったので、過去でも思い返すことにした。

 しかし、私には思い返したってさほど面白いことはなかった。酒だって美味しさを覚えているわけではない。たしか昔、海に行ったこともあるような気がするが、そんなに楽しめただろうか。

 子供がいたが、至って普通の成績って普通に進学して堅い道を歩んでいった。

 私はどうやら気付かないうちに堅実にとらわれて楽しいことを見失ってしまったらしい。しかも、子供も巻き添えにして。

 テレビは暖冬のニュースを放映していた。私は生きてきたこの一本道がすべて霞んで行くように思えた。

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