雨売り少女
富山に雨を売っている女の子がいるらしい。
そうききつけて取材班がやってきたのは、富山の山奥だった。
またガセネタをつかまされてと口々に文句を言いながら、獣道を歩く。
決まってこういうあるかないかわからないというものは、下っ端の仕事になる。
今回も指名されたのは例に違わず2年目社員の三人だった。
のっぽで無口な音声の田口。
真面目なスポーツ刈りで人当たりの良いADの佐久間。
おちゃらけたデブでカメラマンの山越。
入社後の最後の研修も兼ねているというこの取材に、三人はどうにもやる気が起きなかった。
住人が住んでいる集落での聞き込みは何も意味をなさなかった。
聴く人聴く人知らないの一点張りで、心が折れながらも上司に指定された山に入った。
山を登りながら思うことは、この1年間のことだった。
なにかと3人で組まされることが多かったなとか、デブの山越はいつも腹が鳴っていたなとか。
はじめは絶対上手く3人でやっていけるはずがないと思っていたこととか。
仕事が忙しすぎて彼女に愛想つかされて、仕事選び間違ったかなと思ったこととか。
地面を踏みしめながら山道を歩く。
車も入れずはじめからずっと歩きっぱなしで疲れた。
休憩しようと田口が言い出す。
無口だけど田口はいつもこちらの気持ちを察してくれる。
デブは待ってましたと食料を広げる。
こいつのこういうところにも存分にたすけられる。
上司に指定されたところまであと少し。
俺はこいつらに何をしてあげられたかなと反省しながら歩みを再開させる。
なんだかんだ順調に進んだ先にあったのは湖のほとりにたたずむ上司の姿だった。
雨売り少女なんて最初から出まかせだったのか、今までの苦労はなんだったのかと怒りに近い感情が湧いてくる。
バシャリ、突然バケツの水を三方向からかけられ驚く。
上司、田口、山越のにやり顔。
「昇進おめでとう」
どうやら新しいドラマ「雨売り少女」のアシスタントプロデューサーに決定したらしい。
今回の取材のために3か月も費やしたぞとか、本当に馬鹿なんじゃないかとか、いろんな感情はあったけれど、
なんていいやつらと仕事できているんだろうかなんて思っていたら泣きながら笑っていた。
プロデューサーより女優より誰よりも今回の仕事を大事にこなそうと思った。




