悲しみのエモーションハンター
エリスは止めを刺そうとする、しかし
――ドーン!――
大きな爆発が起きる。
「キャっ!」
エリスがふっ飛ばされる。
――ズ、ズザザーン――
エリスは受け身を取ることができず、体でダメージを受けてしまう。エリスは、体に傷を負ってしまうがどうにか立ち上がる。
『何が起こった?』
翼は、エリスが止めを刺したかように思った。しかしダメージを負ったのはエリス。
「なんで……そんな……ありえない!」
エリスは驚きの顔を隠せないでいる。
『あいつがあんな顔をするなんて…… 何が起きてるんだ?』
翼もエリスの表情から異常な事態が起きていることを察する。
――ビュッ――
「うっ!」
黒い腕がエリスの首を掴む。エリスが苦痛で顔を歪める。
『腕が伸びた!?』
「ギャーーーーォ!」
人間とは思えない叫び声を上げて男は姿を現した。
――ブン――
エリスは、首を掴まれたままぶん投げられた。
「キャー!」
――バン――
強く壁に打ちけられてしまうエリス。
「大丈夫か、エリス! いったいなにが……」
翼は男を見た瞬間、思わず息が止まるような心持ちになる。なぜ
なら翼の目に写ったのは朝の男ではなく、間違いなく『心害種』だったからだ。
「うっ!」
翼は突然の頭痛に襲われる。
――『おとうさん、おかあさん待ってーーー!』
周りが火の海のなか翼を残して去っていく二人――
『くそっ! こんな時に……』
翼は、痛みを我慢するものも苦痛に顔が歪む。『心害種』は、止めを刺そうとエリスに一歩ずつ距離をつめていく。
「エリス、逃げろ!」
痛みのなか翼はエリスに精一杯叫ぶ。しかし、エリスに反応がない。
『まさか、ぶつかった衝撃で意識が……』
「おい、起きろエリス! 敵がそっちに向かってるぞ!!」
翼は助けに行こうと動ことするが
――ズキンッ――
体の痛みで思ったように動けない。『心害種』は、エリスに近づくと
――ガシッ――
エリスの頭を持ち片手で持ち上げ、エリスの顔を見る『心害種』。『心害種』は満足そうに笑っている。
――エリ……――
『な……に……? 誰か私を呼んでるの?』
――おきろ……――
『おきろ? 何を言って……』
――ズキン――
『頭が……痛い! なにこれ…… 頭が割れそう!!』
エリスの意識が戻り始める。しかし、意識が戻るにつれて痛みがズキン、ズキンと増していく。うっすらと開いた目の先には黒い手が見えた。
「キャーーーー!! いだぃ…… 痛い!!」
エリスは痛みで強制的に意識を起こされた。悲痛の叫びを上げる。エリスはそれでも抵抗しようと『心器』を発動しようとするが
――プスン――
エリスの『心器』が発動しない。
『なんで!!』
『心器』は自分の感情を武器に変化させ戦う武器。感情が定まらない状態では『心器』は発動しない。エリスの感情を『心害種』が痛みと恐怖で支配している。
――ギリ、ギリ、ギリ――
『心害種』は徐々に力を強くする。
「うわぁーーー!!!」
エリスが痛めつけられてる所を見ている翼。
「エリスーーー!!」
痛みのなかエリスが翼の方を見る。翼もエリスと目が合う。するとエリスは、パクパクと口を動かし始めた。
『なんだ……?』
翼はエリスの口の動きをしっかり見る。
――に・げ・て――
翼に向けてのメッセージだった。今にもまた意識がなくなりそうのなかエリスはそれを伝えたのだった。
『逃げてだって……』
「ふざけるなぁーーー!」
『逃げること…… それだけはそれだけはできない!』
翼は自分を鼓舞して、よろよろとどうにか立ち上がる。右手にギュッと力を込める。
「『心器』発動!」
――プスン――
しかし、やはり翼の『心器』は発動しない。
「なんでなんだ…… 俺の感情に答えろよ! 俺はもう…… 二度と失うわけにはいかないんだ!!」
翼の目から悔し涙が流れる。そんな翼を見て、エリスはまだ口を動かす。
――に・げ・て――
『逃げなさい翼!』、火の海のなか叫ぶお母さんの光景。
あの記憶がまた頭をちらつく。手が震える、足がガクつく、体全体が震える。涙が止まらない。
『俺は…… エモーションハンターにはなれないのか……俺は、誰も助けられないのか!?』
今となってエリスの朝の言葉が心に響く。
「自分の命も、守れない人が他人の命なんて守れるはずがないでしょ! 私は、嫌いです! あなたのように自分の命を軽はずみする人を…… 必ずそういう人は何も守れない!」
『エリス、お前の言う通りだったな……』
ブランと右手が垂れる。心が折れ、諦めかけたその時、
「自分の感情を受け止めろ、翼!」
翼は、驚きで心臓が高鳴った。
「こ、この声は……」
声の行方を探すように翼はキョロキョロと周りを見渡す。
「こっちだ! 翼!!」
翼は声がした場所を見つける。そこには慎太郎がいた。
「なんで……お前が……」
「自分の感情を受け止めるんだ、翼!お前ならできる!!」
「自分の感情を受け止める……」
「そうだ。 自分の一番強い記憶を感情に変えてみせろ! お前の誰も失いたくないという気持ちが本物ならできるはすだ! 」
「自分の一番強い記憶…… ぐぁーー!」
また頭を抑え出す翼。あの時の記憶がまた翼を苦しめる。
「悲しい…… 悲しい…… 心が押し潰されそうだ」
「その感情を力に変えろ、翼!」
「で……できない……」
「また目の前で失いたいのか! ばか野郎!!」
ハッとする翼。
「今のお前は、昔のお前とは違う! お前は感情を力に変えるエモーションハンターだ!!」
「あぁ……そうだった…… 俺はエモーションハンターだ……」
――パン、パン――
翼は、両手で頬を叩く。
「ありがとう、慎太郎。俺はどうかしていたみたいだ…… 」
「もう、大丈夫だな…… 翼!」
目にギラッと光が戻る翼。
「あぁ、俺はもう一度誓う。 俺は、もう何も失わない! 」
右手に再び力を込める翼。右手にエモーションが溜まり始める。
「ぐぁーー!!」
「がんばれ、翼!!」
『俺は、この記憶からずっと目を背けていた。忘れてしまえばいいとさえ思った…… しかしこの記憶が俺の感情の糧になるなら悲しみを心に刻み、俺は前に進む!』
――バシュ――
一筋の青色のの光線がエリスを掴んでいた黒い腕を撃ち落とした。
――ブチン――
黒い腕がちぎれ、地面に落ちる。
「ウギャーーー!」
『心害種』は腕を抑え苦しみ悶える。エリスは、地面に落下しかけるが
――ギュッ――
翼がギリギリのところでエリスを抱き抱える。
「エリス! 大丈夫か!?」
「ゴホ、ゴホッ、ど……どうして……逃げなかったの……?」
「朝にも言ったろ、俺は目の前で何も失いたくないって」
「あなたみたいな人…… 私は嫌いよ……」
「知ってる」
ニカッと笑い、翼は敵と向かい合う。翼の右手には白い銃が握られていた。
「ギャーーーー!!!」
『心害種』は腕を吹っ飛ばされながらも立ち上がる。それを睨み付けている翼。
「エリス、ここで少し見ていてくれ」
エリスを壁にもたれかす翼。
「今度は、大丈夫なの? 」
二人の間に少しの時間ができる。
「あぁ、今度こそ大丈夫だ…… 」
翼が右手の銃にエモーションを力の集め出す。すると、光が強くなるほど翼の目からは涙が溢れてくる。
――ビュッ――
『心害種』が、翼へ突っ込んでくる。
「ハーツオブサッドネス (悲しみの心)」
――ズドン――
青い巨大な光線が『心害種』を消し飛ばした。
――ハァ、ハァ、ハァ――
翼は、肩で息をしている。巨大な光線は辺りを消し飛ばしながら彼方へ消えていった。
「どうしてあなたは泣いてるの?」
翼の顔には、涙が頬をつたって落ちていた。
「さぁ、ただ心の底から悲しみが溢れてくるんだ…… 」
――バタン――
翼は、力尽きてその場に倒れてしまう。
「えっ、ちょっとしっかりしないさいよ!」
エリスが助けにいこうとするもエリスも体が動かない。
「少し休めば大丈夫だよ」
慎太郎が翼のもとに駆け寄ってくる。
「あなたは確か…… 」
「慎太郎だよ。 翼を守ってくれてありがとう」
「いえ…… 私はなにも……」
エリスがさっきの翼を思い出す。
『私は彼に助けられたのね……』
「おい! 大丈夫か!?」
遠くから騒ぎを聞き付け先生たちが走ってくる。
「怪我人が二人です。 早く担架をお願いします!」
その後、二人は保健室まで運ばれた。この騒動に関してはまだわからいなことがあるため翼、エリスの二人の回復を待って聞き込み調査が行われる予定だ。
――コツ、コツ、コツ――
「う~ん、完全に意識を乗っ取られちゃいましたね。まぁ、エモーションハンターの素質を持つものでも『心害種』になれるとことが分かったので良しとしましょう。 おもしろいものも見れましたし…… さてさて、そろそろ仕事に戻りましょうか」
――ビュッ――
謎の男はそう言って消えていった。