再会
一斉に隣の席を見る生徒たち。喜び、悲しみ、怒り、期待いろんな感情が教室に渦巻く。翼は、ちらっと横目で隣の席の子を見た。目に入ったのは、悠然となびく金色のロングの髪だった。
『きれいな髪の毛だな……』
翼は素直にそう思った。髪の毛だけで気品の高さが分かった。
『ん? 金髪のロング……』
翼は金髪の髪の毛で引っかかった。今日の出来事をもう一度確認 する翼。
「あっ!」
思わず声を出してしまう翼。その声に気付いたのか、隣の子が翼の方を向く。そして隣の子も
「あっ!」
と声を上げる。どうやら隣の子も翼に面識があるようだ。二人は自分が知っている顔なのかもう一度お互いじっくりと見る。そして
「あーーーーー!!」
二人は、お互いの顔を指でさしながら大きな声を上げる。『EBOL 』のペアで騒然としていた生徒たち、美里、慎太郎、清継は翼たちの声に気付き翼たちのほうを見た。
「あ、あんたは、今朝俺の顔をぶった人!」
「人気味悪いこと言わないで、助けてもらった人に対して言うセリフ?」
にらみ合う二人。その異変に美里が翼のもとへ行く。
「どうかしたの? この人がツバ君の『EBOL』?」
美里の言葉に二人は、大塚先生の言葉をここで再び思い出す。
『隣の席に座っているのがこれからの『EBOL』だ!』
「おい、まさか……」
「嘘でしょ……」
二人は、落胆して顔を伏せてしまう。
「ねぇ、ツバ君大丈夫?」
美里が翼のことを心配する。
「ははは、認めない……」
翼が俯きなながら何か言う。
「えっ、ツバ君何か言った?」
美里が翼の言葉を聞き取ろうと耳を近づける。
「認めない……」
「えっ、認めない。何を?」
美里は、まだこの状況を完全に理解できていない。
「えぇ、認めない…… 認めるわけにはいかないわ!」
隣の金髪の子は、うつむいていた顔を上げる。
「先生、『EBOL』のペアを変えることは可能なんですか?」
金髪の女の子が手を上げて先生に質問する。大塚先生の答えに生徒たちが注目する。他の生徒たちも気になっていたようだ。
「可能だよ」
大塚先生の発言により教室がざわつく。
「それじゃ……」
金髪の女の子が次の言葉を制するように大塚先生はこう言った。
「ただし、条件がある」
「条件?」
「まず、一つ目 約三か月間『EBOL』のパートナーに空きがある場合。二つ目『EBOL』同士の『感情エネルギー』がお互いに害を与える場合、そして3つ目……」
「なら、私たちの場合二つ目に該当しています。彼と私では考え方が全く違います。そんな人と『EBOL』はうまくいかないと思います」
大塚先生は、金髪の女の子の話を最後まで目を見て聞いていた。そして今度は、生徒全員に聞かせるかのように全員を見た。
「『EBOL』は、お互いの感情を深く共有することで意味をなす。俺たち人間は、皆全然違う感情を持っている。一つの事に対して持つ感情は、人の数だけ生まれる。だから考え方が違うのも当たり前、喧嘩するのも当たり前、だけど必ず一致する感情があるはずだ。その無限に存在する感情で、奇跡ともいえる確率のなかでお互い共有できる感情を探すことができる唯一が『EBOL』だと思う」
ニカッと笑う大塚先生。
「まぁ、騙されたと思って組んでみろ。喧嘩するほど仲が良いと言うじゃないか」
翼と金髪の女の子は、お互いの顔を見る。
「いいでしょう! ここは先生を信じて見ます。では、多分ありえないですが私たちも感情を共有できる可能性の一歩を進めて見ましょう。自己紹介です。私の名前は、エリス」
「俺は、翼だ」
今度は、翼から手を指し出す。
「何?」
「感情を共有する一歩を踏み出すんだろ」
「調子に乗らないでね!」
そういいながらもエリスは、翼の手を手に取る。そんな光景を複雑な表情で見る美里。
「へぇ~、あれが美里の片思いの翼君か」
「ちょっ、何言ってるのそんなんじゃないから!!」
そう言いながらも美里の顔が赤い。
「おい、美里!」
「ひゃい!」
美里は急に翼に呼ばれ変な返事をしてしまう。
「大丈夫か、美里?」
心配するように顔を近づけてくる翼。
『近い、近いよツバ君!』
「コホンッ! 初めまして翼君、澤井さんのペアの『新里 望期』と言います」
その声に美里から顔を遠うざける翼。
『た、助かった……』
「ということは美里の『EBOL』か。ん? 何で俺の名前知ってるんだ?」
「それは、美里が……」
「あーー! 待って、待って!!」
美里が望期の口を塞ごうとする。
「なんだよ、美里?」
「ツバ君は、知らなくてもいいの!」
そして、翼からすぐに離れようとする美里たち
『もぅ、望期ちゃん勝手なこと言わないで!』
『でも……』
『いいの!』
「ちょっと待って!」
美里たちは、翼に呼び止められる。
――ドキッ!――
『ばれた…… もうお終いだよ』
泣きそうになる美里。
「ど、どうしたの? ツバ君……」
おそろおそろ振り返る美里、そこには頭を下げている翼の姿が。そして
「新里さん、美里のこと頼みます」
『ツバ君……』
「うん、美里のことは任せて! じゃ、またね」
美里たちは教室から出ていく。
「いい友達だね、美里が惚れるのも分かるよ」
「だ、だからそんなんじゃないってば!」
そんなこといいながらも目に涙を溜める美里。
「もう、我慢しなくていいよ美里」
美里は泣いた。
『ありがとう、ツバ君。いつかきっと、今度は私がツバ君を守ってみせるね。それでいつかきっと言うんだ……
――好きって――