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とある貴族の人形遣い (仮)  作者: 涼坂 九羅
3章 焔とともに幕が開く
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35話 ある侍の物語

 数話に渡り、ある登場人物メインの話が始まります。

 ご容赦下さい…

 餅月さんとは街外れで別れた。

 流石に、屋敷に連れて行く訳にはいけないしな。

 別れ際まで興奮気味で、ウサ耳がピコピコしていたのが可愛かった。

 ああ触りたい…


 サヤカさんと、アリサさんに睨まれました。


 その後は、屋敷に帰宅する。

 なんか今回の事件…『嵐の様に過ぎ去った』感が否めないよな…

 結局、俺はおそらく、何者かの手の上で踊らされただけなのだろうし(その最有力候補が、我が母なのだが…)。

 昨夜まで敵だった奴が、母様の手駒になってるし(赤城)。


 まぁ、俺的には、サヤカさんを救出出来て解決なのだが。

 なんというか消化不良じみたものが残っていまして…


 とりあえず、この2日間は、(現世に)産まれて一番疲れたとだけ…

 帰ったら寝よう…そう固く心に誓ったのだった。



 レイジ達を見送った後、日恵野 静と木暮 大樹は、直に委員会本部から呼び出しを受け、宿泊中だった宿屋に戻ることとなった。

 いきなり本部招集がかかり、即刻帰還せよとのお達しである。


 荷物を押し込んでいる大樹に話しかけた。


「どう思います? 大樹」


「どうもこうも無いだろ、よほど、あの屋敷に俺達を近づけたく無い様に見える」


「同感ですが…

 さて、大樹に問題です、

 僕達二人は委員会上層部にどのように思われているでしょう?」


「目の上のタンコブだろうな」


「そうですね、上層部にとって僕たちは身内であって敵も同然ですからね」


 大樹は溜め息を吐いた。

 この日恵野静という男は基本的に悪を許さない。

 それが身内だろうがおかまい無しだ。

 日恵野 静が優秀すぎて恐れられるのはそれ故だ。


 一度、上層部の成金が、静かに賄賂を渡そうとした事件があった、無論、静はやんわりと断ったが…

 翌日、裏で違法薬物の密売組織に資金を援助していたその成金は静の手によって逮捕された。

 このような事件が他に数件。


 今では、後ろめたいことのある貴族は、進んで静に近付こうとしなくなっている。

 幼馴染みとしては、もう少し清濁合わせ飲んで欲しいが、その精錬潔白さと、実力、黙っていればモテるであろうルックスが合わさり高い人気を誇っているのも事実だ。


 自分も権力争いの候補とされているが、大樹は既に権力を握ることを諦めている。

 自分はそれほど才能の有る方ではないし、それを静と比べられては勝負に成らないからだ。

 それに静なら、国を任せても大丈夫そうなカリスマもある。


 事実、大樹は、静が権力を握り自分はその右腕的なポジションに収まる未来予想を描いていた。

 静が勝ち残る為には努力は惜しまないつもりでもある。


 こんな2人組だから敵も多い。

 今回は、自分たち二人に見られると委員会上層部が困る類いの物と予測出来る。

 相当、後ろめたいモノなのだろう。


 静は自身の荷物を鞄に入れ、立ち上がった。


「僕たちには、本部帰還と平行して『夜守巳三郎』の護送という任務も有ります

 張り切って行きましょう」


 そう、俺達に課せられた任務はもう1つ。

 他の委員と共に、夜守巳三郎を護送することなのだ…



 その男は代々続く『武人』家系に産まれた。

 別に名門とかでは無く、ただただ、古くさいだけの田舎侍の家系だったが…


『武人』は『魔法使い』と違い、家系や家柄に依存することはあまり無い。

 魔法使いなら、たとえどんなに優秀でも七大貴族の血筋でなければ偉くは成れない。よく伸し上がったとしても、七大貴族に優秀な子を作るため養子として迎え入れられるだけだ。

 しかし『武人』は違う、家柄、血統、経歴、…それら全てより単純に『使えるかどうか?』が問われる。

 まぁ、多少、『流派』がモノを言うこともあるのだが…(この世界に流派なんて腐る程あるしな、剣術だけでも100以上ある、田舎剣法も含めればもっと多いか)


 その点に関してこの男は…

 10歳のとき決闘で、家の流派を扱う親を『我流』によって敗り、その直ぐ後に家を飛び出した…その後彼は、道行く武人に決闘を挑み、敗った相手から金を奪い取り生活するという、かなりアウトローな生活を1年続けた。

 もし、自分を負かす武人が居たなら、扱う武具に関係なくその武人に弟子入りしようと考えていたからだ。


 彼はその間、大人の武人を相手にしていた訳だが。

 如何せん、下手に才能があり過ぎた。


 田舎道を通る、田舎の武人程度では彼を倒すことが出来ないまでに彼は強くなっていたのだ。


 よって、彼の心境は、『井の中の蛙』といった感じに…


『あれあれあれ? もしかして俺、最強じゃね?

 俺、自分の流派始めれるんじゃね?』


 と、ここまで増長した。

 海を渡り西欧の武人と手合わせしてみたいとまで考えていた。

 どこの世界でも若者は、期待と野望を胸に海を渡りたがるモノである。


 そんな彼に転機が訪れたのは、船代を稼ぐ為に金を財布に貯めていた時だった。


 いつもの様に、道行く武人に決闘を挑む。

 その老人は一言で言うと、見窄らしかった。

 お世辞でも、外見は武人には見えない80代の老人。

 身体からは全く闘気を感じられないが、

 このご時世に、武人でもないのに腰に刀を3振りも差す人物は居ないだろう。

 服は見窄らしいが、刀は業物だと一目で分かる。

 そもそも、この歳の老人が一人で刀差して歩いてる時点で変である。

 非常に胡散臭い爺だったが、爺さんの差す刀を売れば旅費が埋まりそうだったので、深く考えなかった。


 彼が決闘を挑むと、老人は煩わしそうな顔をした。


『今日は気分がのらんのぉ』


 老人は、無造作に伸ばした髪をボリボリと掻きむしり。

 少年を、頭の先からつま先まで舐める様に見て来た。

 そして一言。


『悪くも無いが、良くも無いのぉ

 如何せん、精進が足らん、

 この程度の実力で挑まれてものぉ…』


 少年はその言葉に怒り。

 ほぼ一瞬で闘気を練り上げ、老人に切り掛かった。


 決闘は、峰打ちが基本だ、しかし峰打ちとはいえ鉄の塊を振るう以上、殺傷能力は高い。

 ただ、刃で切創を加えるよりか生存率が高いかどうかの違いである。

 常人がコレを喰らえば骨折じゃあ済まないだろう。

 まぁ、武人なら闘気を纏っているので『骨折程度』で済むのだが…


 抜刀もしていない老人に上段から勢いよく切り掛かる。

 褒められた行動では無いな…

 しかし、彼の刀は宙を切り、さらに何処からか足を引っかけられた少年は、大きく前のめりに転んだ。

 驚愕しつつも直に立ち上がり刀を構えようとするが、刀が無い。


 少年の刀はいつの間にか、目の前の地べたに胡座をかいて座る老人の手に有った。

 急いで取り返そうとするが、老人が掛けて来た砂が目に入り、また転ける。


 今度は立ち上がる前に、いつの間にか老人に背中へ座られ起き上がれなかった。


 ここまで、ほんの1分。

 少年はここまでの敗北を産まれて初めて経験した。


『儂の勝ちじゃのぉ』


…こんな負け方をすれば、逆に清々しい…


 少年は上に座る老人…いや、老師に声を張った。


『こんな体勢から失礼する!!

 俺の名前は、四水 陣

 是非、あんたの弟子にしてくれ!!』


 後に彼は語る。


『俺の人生の間違いは、あの爺に弟子入りしたことだ…』と。



 着物を着た武人が、長い杖の様な棒を小気味良く振りながら、夜中の路地を歩く。

 レイジが見れば、『自分の武器をバトンの様にして遊ぶな!!』とか、言いそうな光景だ。

 彼、四水 陣の癖である。手持ち無沙汰になるとやってしまう。

 今、彼は、もの凄く暇であった。


 赤城がこの街を出たのは2日前のこと。

 当初の計画では、直に合流する手はずだった。

 しかし、四水は動けずに居る。

 理由は、動かすことのままならない者を拾ってしまったからだ。


 四水は、古びた小屋の様な平屋建ての民家の前で立ち止まり、その戸を引いた。

 中に居るのは、この家の住人である、やせ細った初老の男と、目に包帯を巻かれ夢に唸される少女であった。

 四水メインの話が続きます。

 けっこう好きなキャラなので、この数話で掘り下げます♪

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