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とある貴族の人形遣い (仮)  作者: 涼坂 九羅
2章 月村の家伝
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30話 正義の鉄拳

 

 赤城は、俺とサヤカを右腕だけで抱きしめた。

 迫り来る『槍』に赤城はフリーになった左腕を向ける…

 左の袖から、蛇の様に飛び出した『ソレ』は、まさしく蛇の様に『槍』へと巻き付き、『槍』を赤城の手元へと運んで来る…

 一瞬の所行。

 着地する頃には赤城が隠し持っていた『蛇の様な武器』は袖へと隠れ、左手には槍だけが握られていた。


 コイツ…まだ何か隠し持っていたがるな、左袖に入れてるってことは右にも仕込んでそうだな…リアル暗器使いかよ、クソ、カッコいいじゃねぇか、俺にも暗器の使い方教えて欲しいぜ…


…甲冑共は、まるで時間が止まった様に動きを止め、ただの置物へと変わっている。

 ポチは夜守にナイフを向けて止まっている。

 サヤカは俺の隣を離れ、近くの甲冑から剣を奪って構えた。


 夜守は、噴水の様に血が吹き出る『左腕の有った場所』をじっと長め、そして床に転がる『左腕』を凝視し、交互に見た後、傷口を押さえて踞り、まるで堰を切った様に怒声と悲鳴が入り交じった嗚咽を始めた。


 その内容は言語の形を成しておらず、聞くに堪えないモノである。


 ポチがアリサに顔を向ける、

 釣られて俺もアリサの方を見ると…拳銃を取り出し、静かに夜守へと向けるのが目に入った…


「やめろ、アリサ、殺すな!!」


 アリサは銃口を夜守に向けたまま、俺を見る。

 瞳に焦りが宿っているのを感じた。


「殺しはしません、この男の右腕もとばす…!!」


 アリサが俺に何かを伝えようとする前に、夜守が俺の方に飛びかかり、残った右の手で『黒い魔糸』を作り出し、俺へと放つ…


『黒い魔糸』?・・・

 俺が作り出せるのは、今の所、『蒼い魔糸』と、契約用の『仄かに赤い魔糸』しかないのだが…どうやって作ったんだろう?


 そんな、どうでもいいことを俺は考えていた。

 つーか、なんで俺に向けて『魔糸』を放つんだコイツ?

 初めて見る『魔糸』に驚き、動きが止まってしまった…


 即座に動いたのは、赤城だ。

 赤城は俺を蹴り飛ばし、『黒い魔糸』を回避させてくれた…めっちゃ痛かったけどな。


『黒い魔糸』は、大きく方向を変え、俺の方へと飛んで来る。

 赤城の叫びが耳に入った…


「何、ボケッとしてるんですか!! 逃げなさい!!」


 その言葉に俺は我に帰り。

 壁に『魔糸』を飛ばし、追って来る『黒い魔糸』から飛び逃げる…


 ポチが夜守を切り付け、アリサが銃を撃つ光景が目に入った。

 夜守は、ポチの斬撃とアリサの銃撃から『黒い魔糸』を使って身体を守り、俺に『黒い魔糸』を飛ばす…


 なにがどうなっていやがる…


 夜守の何かに取り憑かれた様な様子に、俺は少なからず恐怖した。

 そのせいで、動くのが遅れたみたいだ…避けれない所まで『黒い魔糸』が迫っていた…


 俺が避けれないと悟った刹那…


「レイジは、あたしが守る!!!」


 サヤカが飛び出し、『黒い魔糸』を剣で切り払った…



 日恵野 静がその部屋を訪れると、何やら不穏な魔力で作られた『糸』が幼い少年に迫る直前だった…

 静は直感的に、その『糸』が危険だと判断し、少年を助けに走り出そうとしたが…杞憂だった様だ。

 少年を助けたのは、5歳くらいの女の子…

 意志の強そうな目をした勇敢な女の子だ…それにしても驚いた…


 彼女が剣に宿す『アレ』は、何だ?

 限りなく『魔力』に近しい、『闘気』…そんな印象を受ける…

 彼女は化けるな…


 そんな、余所事を考えながら、あの邪悪な『糸』を出した術者を探る。

 途中、もの凄い形相で僕を一瞥してきた銃を持った綺麗なドールのメイドさんと、先程知り合った黒尽くめ、そして果敢にナイフを振るう人形…そして、『黒い糸』を身に纏わせた男…


 僕は、『黒い糸を纏う』男の元へ駆け出し、途中で右手に魔力を宿す。

 

 人形は男にナイフを突き立てるが、『黒い糸』が邪魔して届かない様だ…

 メイドさんの弾丸も弾かれている…


 相当、高位の魔法…形状からすると『魔糸』ですか…

 夜守巳三郎は『人形遣い』である、だから『魔糸』が使えても何ら不思議ではないのだが…


 この様な『魔糸』…見たことが有りませんね…


 僕が現れたことに、人形はナイフを振るう手を一旦止め、僕に敵意を向けて来ました。

 ウインクして返すと、凄く嫌そうな顔をされましたが敵意は納めてくれた様ですね…


 魔力を宿した右手で『糸』に触れます…

 もの凄い魔力ですね…厄介極まり無いですが…

 しかし、所詮は『魔力』で作られたモノ、僕にどうにか出来ない代物では有りません…


 夜守は僕に気付いた様です、驚きの表情を浮かべた後、少年に向けていた『魔糸』を全て僕へと差し向けてきました…少年と少女は、初めて僕の存在に気付いたらしく目を丸くしています、可愛いですね…


 さて、日恵野の家伝を披露しますか…



 いきなり現れた優男は、右手で『黒い魔糸』を『払う』だけで、ソレを消滅させてみせた。

 そして、夜守に近付くと、左手に『黒い』なにかを『纏わせて』、夜守を殴り飛ばした…


 夜守はガラス張りの壁へと激突し、意識を失った様だ…

 大きな音が響き、ガラスにヒビが入った…

 俺は驚き尻餅をついてしまった…恥ずかしい…


 俺は、一連の動きをしてみせた男を、ただ呆然と眺める。

 俺に気付いた男は、優しく微笑み、俺とサヤカの元に歩いて来た。

 うん、あれだ、イケメンだ…

 俺も転生して、みてくれはいい感じになって良かった、と思っていたが。

 目の前のイケメンは次元が違う…なに、その、顔…自信が無くなるだろ!!


「大丈夫ですか?

 怪我は有りませんか?」


 俺に左手を差し伸ばして来れる。

 それを掴むと…なんだこの繊細で暖かみのある手は?

 これが先程、夜守を気絶させる程に殴り飛ばした手か!?

 巫山戯るな!! イケメンは何処をとってもイケメン仕様なのか!?


「…ありがとう」


 とはいえ、ちゃんと礼は言う。

 礼が言えない大人にはなるな…と、前世の爺さんに言われて育ったからな…


 俺のそんな様子に、笑みの段階を1段階UPさせた男は俺の頭を撫で始めた…


「君はいい子ですね…名前はなんて言うんだい? 歳は幾つ?」


 おい…お前、俺の新たな敵じゃないだろうな…

 戦っていた強敵が、さらに強い敵に簡単に負けるとか、少年誌だから面白いんだぞ?

 俺はご免被りたい…特に『犯罪者』は、当分、ご免だ…


 何故か、サヤカが頬を膨らませて俺の腕に抱きついて来た。


「レイジから離れて」


 男は、さらに笑みのランクをUPさせ…


「…僕の目の前で、何が起こって居るのでしょう?

 こんな愛らしい子供が、こんな愛らしい仕草を見せてくれるなど…」


 駄目だ、この男、強いけど駄目な人だ、そんな臭いがプンプンする…

 男が、暴走する前にアリサさんが男に声を掛けた…


「…日恵野 静様と御見受けしますが、随分と遅いご到着ですね?

 私は二年近く遅刻する人間を初めて見ました…」


 日恵野…と呼ばれた男は、一瞬、動きを止め、

 直にアリサの方に向き直ると、華麗な土下座を決めた…なんで?


「貴女が、あの手紙の送り主様でしたか…

 この度は私の到着が遅れたが為に、あの外道を野放しにしたこと、深くお詫び申し上げます!!!」


 手紙…ああ、アリサの出した手紙か…じゃあ、この人が『委員会』の人か…

 アリサは、日恵野を一瞥すると、低く冷たい声で告げた…


「謝るのは私ではありません!!

 そちらにいらっしゃる、我がマスターと、サヤカさん…

 それと、その外道のせいで、命を落とした者達に謝って下さい!!」


 アリサの言葉に、日恵野は気付かされたとばかりに顔を上げ、立ち上がる。

 そして、俺とサヤカの所に来ると膝を付いて頭を下げた。


「この度は、私が遅れたが為に要らぬ被害を出し

 君たち二人に恐い思いをさせてしまい、すまなかった…

 あの男は、ちゃんと我々『委員会』が裁きを下すから安心してくれ

 今回は本当にすまなかった!!」


 子供相手にちゃんと謝れる大人…凄いと思う…


 男は立ち上がると、部屋に居る全員を見回した…そして…


「さて、あなた方がどういう身分なのか教えて頂けますか?

 それと、ドールのメイドさん、貴女が背負っている荷物のことで少しお話があります…

 それを持ち運ぶのは不便でしょうし、万が一にも民間人に見られたら大変です

 私共で預かりたいのですが…」


 アリサは大荷物を下ろすと、ソレを開いてみせた…


「確かに、そうですね

 流石に『コレ』は隠すことが出来ませんし…」


 現れたのは、パパ様の部屋に置かれていた『重機関銃』だった…

 ソレ使ってたら、夜守、死んでたんじゃないか?


 やっぱり、長引きます

 ああ、30話で終わらせたかったぜ…


 もう少し、2章にお付き合い下さい。


 日恵野さんですが、出来る人なんだけど、駄目な人です♪

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