29話 人形遣いは落とされるか?
ちょっと長めです…
さらに苦手な戦闘描写…頑張ろ…
もうちょっと夜守戦続きます♪
もう少し、お付き合い下さい!!
アリサは扉を一瞥すると、何の躊躇も無く『アリサ・ボム』を放った。
爆散する扉…アリサは俺とポチを抱え、その煙の中に飛び込んだ…
…今更だが、何処のアクション映画だよ…俺は◯ルース・◯ィルスでも、ト◯・クルー◯でも無いんだぞ!…あの人達が出る映画は大好きだったけどな!!
部屋に飛び込むと、そこには十数体の甲冑に取り囲まれるサヤカと黒尽くめ(赤城)。
…甲冑共はパペットワークで動いているのだろうか?…だとしたら術者は…愉快に歪んだ笑みを浮かべる男、おそらくアレが、夜守だろう…
夜守は甲冑共に囲まれる様にして立ち、俺達に視線を向けると。
その火傷…いや、狂気に歪んだ笑みを崩した…顔を引き攣らせ、頭を掻きむしりながら俺達に叫ぶ。
「…先程から五月蝿いとは思っていましたが…
あなた方は、誰の許しを得てこの屋敷に入って来ているのですかっ!!
ここは、私と『サヤカ』の屋敷なのですっ!
私の許可無く…屋敷に入って来て…あなた方には、他人の家に無断で入ってはならないという、そんな当たり前の常識も無いのですか?」
何を言っているのだ、コイツ…
お前が常識を解くなよ…
呆れて声が出ない…
アリサが前に進み出た…
「外道が…口を慎みなさい…
こちらにおわす御方を何方と心得ます、
恐れ多きも月村家長女・月村美夜子様の御長男で有らせられる、我がマスター、月村レイジ様ですよ?
大旦那様の最高傑作である私の存在が何よりの証拠です。
貴様も上級貴族なら…美夜子様と親しかったお方なら、噂くらい聞いたことがあるのではないですか?」
ここで母様の名前が出て来るのも驚きだが…
アリサさん…俺は何処の副将軍ですか?
アリサさんの目は鋭く殺気を纏わせ、男を睨みつける…
アリサの感情の一端が俺に流れ込んで来た『怒り』…前、賊が入り込んだ時も感じた感覚だ…
甲冑共は男の指示を待っているのか、
半分はサヤカと赤城に武器を向け、
もう半分は俺達に武器を向けている…
夜守は一度、大きく目を見開き、その後、遠い目をして俺を見つめる、
先程までの狂気を孕んだ瞳が嘘の様に、まるで慈しむような、懐かしむ様な視線だった。
しかし、それも次の瞬間には狂気に染め上げられる…いや、加虐的なものが増した気がした…
「ああ、そのガキが美夜子の…
あの牝狐の息子ですか?……」
顔に笑みを浮かべると、男は俺を指差し言い放った。
「しかし、いいのですかな?
例え七大貴族の御子息といえ、私の様な上級貴族の屋敷に押し入るなど…」
「この期に及んで何を言ってやがる!!!」
俺は声を荒げていた。
俺達は見たのだ、裏口の壁で目を刳り貫かれた女の子を、裏口に重ねられた遺体を…
なのに、この男は…
「お前は犯罪者だっ!!! それも最悪のな!!」
男は卑下た笑みを浮かべた…
「…はて?
私には何のことが解りませんが?
『我が屋敷』の『外』に何か落ちていたのですかな?
私は解りませんが…」
…本当にこの男は何を言って居やがる…
それ、解って言っている口調だろう!!
しらばっくれるなよ、現に今、サヤカを殺そうと…
俺はサヤカに目を向けると、
サヤカは男に殺意を孕んだ瞳を向けていた、
ついでに居る赤城は俺の視線に気付き笑ってみせた…この男、本当に何者だ?…
夜守も俺の視線に気付き、なにか思いだしたかの様に声を出す…
「…ああ、『アレ』ですか…
『あの二人』はですね、我が屋敷に忍び込んだ賊です…
レイジ様の御手を煩わせずとも、私が片付けます故、ご安心を…
全く、物騒な世の中になりましたな」
…キレた、何かがキレた…
この国の法律では、男が宣う馬鹿げた自己弁護でも、罪にも問われないだろう…
何分、俺を怒らしたのは、サヤカを『賊』と言ったことだ…どっちが賊だ!!
俺が声を上げようとしたのを、アリサは手で制して止めた。
アリサの怒気が増した気がする…
「…よく聞け外道、『義』は我がマスターにあるのですよ?
このままでは、
賊を擁護し、場合によっては隠避させた罪に貴様も問われるが…宜しいか?」
男は何を言っているのか解らないという顔でアリサを見る。
「…頭の回転も遅い男ですね…
そこの黒尽くめは、月村の屋敷に押し入り、当家の『使用人』を誘拐した『賊』なのです。
我がマスターは、勇敢にも『使用人』を助け出すため、すぐに『賊』を追いかけました…
そして、そこの『賊』を追いつめて行った所…貴様の屋敷に逃げ込んだのです」
冷たく平淡で、それでいて有無を言わせぬ声色…
男の顔は途端に引き攣りだした…
「早急に、そこの『賊』と『使用人』を我々に引き渡さない場合…どうなるかは解りますか?
…貴様も言った様に、最近物騒になってきた様ですね?
我々は『偶然』にも、この屋敷の『直ぐ近く』で、瀕死の重傷を負った少女と、哀れにも非道な悪鬼に命を奪われた少女の遺体を3体…発見しております
ここからは、『もしも』ですが…この屋敷から、『証拠』が見つかった場合…
言い逃れは叶いませんよ?」
徐々に顔から余裕を消した男は、アリサの言葉を遮り、声を荒げた。
「…あああああああ、読めました、全て読めましたあああ
アイツは、全く、したたかな女ですねぇえええええ!!!!!!!」
なんだ!?
コイツ、誰に八つ当たりしてるんだ!?
ポチが俺の前に出て、ナイフを抜く…
アリサは、何処からとも無く双剣を取り出し構える…
「いいです、いいです、いいです………
…そう言えば、そこのガキは、まだ居ないことになっていましたね?」
俺の存在は、『正式』には未だ公表されていないらしい…
男の魔力が増幅するのと、甲冑共が襲いかかって来たのは同時だった。
■
マスターに向かって来る甲冑共…サヤカさんの方に向かっているのも含めれば12体ですか…
サヤカさんの方は、あの黒尽くめにどうにかして貰いましょう…
ポチは…既に消えてますね…それでいいです。
マスターも御強くなられました、この程度の『人形』に遅れは取ら無い程に・・・
本当に御強くなられました…
アリサ・ブレードに魔力を乗せます、
試したことは無いですが、試してみましょうか?
一体が私に向け、『ウォーハンマー』を振り上げます。
それを加速機能を用いて避け、すれ違い様に胴に剣を振るいました…
甲冑は胴体で両断され、床に鉄の落ちる音が木霊する。
残り11…
数ではありませんが、面倒です…サヤカさんが私の後ろに居れば、持って来た『アレ』を遺憾無く発揮できるのですが…
黒尽くめの方を見ます、彼はこちらを見ると困った様な顔をしました…
もう、只の『賊』では無いことは理解しています。
この男にしても、四水にしても、何かしらの『思惑』のある第三者に動かされているのでしょう。
何処の誰が差し向けたのかは解りませんが、少なくとも敵ではない様です。
ふと、マスターの声が私に届きました。
(俺があの二人を連れて来る…だから、アリサは出来るだけ敵を引き付けてくれ)
マスターのしたいことを理解しました。
この部屋の天井は高く、問題は無いでしょう…ただ…
甲冑の攻撃を飛び回りながら躱すマスター…
三体の甲冑を相手に、捕まること無く翻弄する姿は流石です。
しかし、マスターには『攻撃手段』が無いので避け回るだけ…
仕方ありません。
私の加速をもってしても、二人を救助することは困難でしょう。
しかし、レイジ様なら二人を救助出来る筈です。
それに……
私は、加速でマスターの近くに居た甲冑に近付き、その胴を切り裂きました…後、10体。
■
アリサが隙を作ってくれた御陰で飛ぶことが出来た。
天井に魔糸を付着させ、ターザンの様に反対側へと飛ぶ…
甲冑が槍を突き上げて来たが、当たらない…
そして無事に着地…受け身は完璧…
そこでは、黒尽くめがサヤカを庇いながら戦っていた。
甲冑の攻撃を防ぎながら、黒尽くめが俺を見る。
「おや、王子様のご登場ですか…」
「レイジっ!!」
二人の視線が俺に集まる…
一体、切り掛かって来たので、粘着性の高い魔糸を放ち動きを鈍らせ躱す…『いとをはく』かっ!!
懐かしい技だな…
俺は『いとをはく』しか出来ないから、緑色の芋虫型のモンスターだな…いや、アイツ『たいあたり』で来たじゃん…俺はアイツ以下なのか?
…どうでもいいこと考えれる辺り、俺、実は余裕だな…
雑念を払い、甲冑共を見据える。
残り10体…
俺と、黒尽くめと、サヤカは、取り囲まれる形だ…
一度飛び移ったから、相手も警戒するだろう…
現に夜守は、俺とサヤカを交互に忌々しそうな視線を向けている。
アリサは警戒されたからか、甲冑共に銃を向けられている。
そのせいか、防戦を強いられている気がするが…あれだけ撃たれて、一撃も喰らっていない辺り、流石だな…
ポチとは感覚を共有している為、今何処に居て、何をするつもりなのか…手に取るように解っていた。
勝負は一瞬で付くだろう…アリサの、アノ大荷物は使わなそうだ…
「サヤカ…それと、黒尽くめ!!
俺に近付いてくれ、この場を離脱する!!」
サヤカは直に俺の隣に来て、黒尽くめは敵を牽制しながら近付いて来る…
「流石に警戒されてますよ?
私と彼女を連れて飛べますか?
私なら人数に入れなくて大丈夫ですよ」
赤城(黒尽くめは、もう止めた、コイツもいい奴かもしれんし)は俺に聞いて来る…
一人なら飛べない、飛んでる最中に落とされる、だが、俺は俺の人形を信じてる。
「問題ない、赤城が居てくれないと困る
あと、最悪、一撃は防いでくれ」
「…解りました…あの馬鹿は死刑ですね…」
なにか呟いたか?
まぁ、いい…
サヤカが無言で俺の身体に抱きつき、俺達二人を赤城が抱きかかえる、俺は右手で天井に魔糸を飛ばし、一気に引張った…
やはり、赤城とサヤカが捕まっているから身体に負担が掛かる。
しかし、殆どいつも通りに飛べた…そして予定通りに、敵の関心が一斉に俺達へと向く…
上から夜守を見る、俺達を仕留めたと確信した目…
…しかしな、お前は一人忘れているぞ?
円卓の下に隠れていたソイツは飛び出した。
ナイフ片手に飛び上がる…
夜守の関心が俺に向いている以上、甲冑達はソイツに反応出来なかった。
夜守がソイツの存在に気付いたのは、ソイツがナイフを振り上げた瞬間…
「俺様みたいな、男前を忘れているようじゃぁ…器がしれるぜ? なぁ、三下ぁ?」
振り下ろされたそれはナイフとは思えない威力…
夜守の左腕は吹き飛んだ…
そして、甲冑共の動きが止った様に見える。
パペットワークで動かされている以上、術者の『手』を切り落とせば止まる。
そう考えての行動だった…
…止まる前、甲冑の一体が槍を放って来た…




