27話 しがない殺し屋
あたしは古びた小屋の中に居た。
やはり、手足を縛られ身動きが取れない・・・
闘気を練れば、どうにかこの拘束を突破出来るかもしれないが・・・
「はぁああ〜〜あ、赤城の奴、何時まで待たせる気だ?」
欠伸をしながら、四水という男は呟く。
片手に杖の様な棒を持っており、身に闘気を纏わせている所を見るに、この男も武人だろう・・・
どれほどの強さかは知らないが、逃げても直に捕まりそうな気がした・・・
「おっ、赤城〜〜〜、遅いぞお前、待ったじゃないかよ!!」
いつの間にか小屋の入り口に立っていた赤城と言う男は、無言で四水を殴ると、あたしの身体を持ち上げ荷馬車のある方に歩いていく。
必死に暴れて抵抗してみる・・・
「・・・無駄なことは止めて下さい、そんなに暴れると落としてしま・・・グフッ!!」
「あ・・・」
暴れて動かしたあたしの脚が、赤城の顔に激突した、赤城は蹌踉めきながらもあたしを落とさない様に踏ん張ってみせた・・・
身体に纏う闘気を増幅させ、足跡が付いた顔であたしを睨みつける。
「大人しくして下さい」
有無を言わせぬ迫力・・・恐かった・・・
■
その荷馬車が、屋敷の門を潜ったころ・・・
男は届けられた朗報に浮かれきっていた。
丁度、最後の目玉が駄目だと判明し、軽い絶望を味わっていた所だ。
これほど喜ばしいことは無い・・・
大きな火傷負いながら、必死に探し求めた『瞳のサヤカ』・・・
それが直ぐソコにあるのだ・・・
男の高揚した気分は、目の前に縛られた女の声で台無しにされた。
「・・・た、たす・・・けて・・・」
目のない女は生きていた。
まぁ、丁寧に刳り貫いたからね。
かなり痛いだろうが死にはしないだろう・・・
現に、虫の息ではあるが他の娘達も生きては居る。
これも彼女達が了承したことだ、情けをかける必要も無いのだが・・・
通常、どんなに『無駄』なモノが残ったとしても、サヤカを作る糧となる名誉を与えているのだが・・・ 今日は時間が足りないな・・・
男は娘の拘束を外し、裏口から屋敷の外に捨てた。
他の3人は動かないが、先程の娘は手を這わせながら地面を歩く。
「私は忙しい、何処へなりとも行け」
それだけ言い残すと裏口の扉を閉めた。
振り返ると、屋敷の使用人を長年勤める男が、『瞳のサヤカ』を連れた男が来客室に来ていると告げる。
私は和やかに来客室を目指した・・・
■
レイジは夜守家屋敷を眺めていた。
まるで『魔王城』・・・中世ヨーロッパの城をモチーフにした様な美しい建築だが、俺には悪鬼の住まう城にしか見えない・・・実際、住んでいるか・・・
「小僧、裏口に回るぜ」
もう既に屋敷は目の前だ、サヤカが連れ去られてから大分時間が経過している。
サヤカは無事だろうか?
屋敷の裏口に回ると、二人の人影が、屋敷の壁に見えた。
門番か?
「いや・・・ありゃ、小僧、さっき知り合ったばかりの奴が居やがるぜ・・・」
ポチの言葉に反応したのはアリサだった。
無言で銃を持ち出す・・・アリサさん、それショットガンじゃないっすか・・・
「四水っていう方だ・・・もう片方は知らない女の子だぜ」
アリサは、馬車から飛び出すと、もの凄いスピードで人影に向かって行った。
人影が叫び声を上げる。
「おいおいおい、人形の姉ちゃん、ちょっと俺の話をきいて・・・!!」
響き渡る銃声、それを弾く鉄の音・・・えっ? 弾く音? 四水って人、銃弾を弾けるの? マジ、どこの三世の一味だよ!!!
次に響き渡ったのは、アリサの怒声。
「その女の子はどうなって居るのですか?
貴男がやったことですか?
もしそうなら・・・」
「いやいやいや、人の話を聞け!!
俺はこの娘の手当をしていただけだ
今の俺には、お前等と争う気は無いし、理由も無い」
「私には争う理由はありますよ?」
馬車が辿り着く頃には、侍とメイドが一触即発な雰囲気を作り出していた・・・
それにも驚いたが、もっと驚いたのは屋敷の壁に身体を預ける血塗れの女の子。
身体は・・・特に上半身は血塗れで、顔は血で真っ赤、目に巻かれた包帯は真っ赤に染まり血が噴き出している、悲鳴を上げるその姿は痛々しいを通り越していて・・・
・・・何だコレは?
誰がコレをやった?
着物姿の男を睨む。
男は俺の視線に気付くと、真っ黒な魔王城に視線を向けた。
「重ねて言うが、俺じゃない
今はまだ無理だが、その娘に聞いても犯人は俺じゃないと語るだろうよ」
だとしたら・・・
サヤカが同じ目に遭っている光景が頭に浮かぶ・・・
俺も魔王城を睨みつける、冷静な敵意と殺意を乗せて・・・ああ、俺、怒ってるわ・・・
そこか冷静だった俺がそう言うと、
俺は屋敷の高い壁を、魔糸を使い飛び越えていた・・・
「おい!!、まて小僧・・・ってアリサちゃんも、なに、取り出してんだ!!」
「手榴弾です、正確には手榴弾・アリサモデル、通称『アリサ・ボム』ですが・・・
通常の手榴弾より威力は高いですよ?」
「じゃ、なくて、オメェ、んなもん爆発させたら敵に気付かれ・・・」
「ポチ、私達は夜守巳三郎を『暗殺』しに来たのではなく、サヤカを助けに来たのですよ?
アリサはこれより電撃戦仕掛け、サヤカちゃんを救助します」
次の瞬間壁の一部が、大きな爆発音とともに砕けちり、出発前にポチに積ませていた謎の大きな荷物を背負ったアリサが現れた・・・
「マスター、抜け駆けは駄目ですよ?」
笑顔が恐かった・・・
後ろからポチが現れる。
「たくよぉ、俺様みたいなキラー・パペットが最も活躍するのは『暗殺』なんだぜ?
ちーと時間くれれば、病み上がりのオッサンの一人くらい簡単に片付けてやったのによぉ・・・」
ポチは身体からナイフを抜いている。
口元が恐ろしく歪んでいた・・・
「人形の姉ちゃん、これ凄いな・・・
なんで俺との戦闘でコレ使わなかったんだよ・・・いや、使われなくて良かったけど」
後ろの方で四水が驚愕の声を上げていた。
爆発する瞬間、咄嗟に女の子を守ったからだろう、女の子に覆い被さる様な体勢だった。
結構、良い奴なのかもしれない・・・
「マスターのモノとなる屋敷を、私が独断で破壊する訳にはいかないからですが?」
「おいおいおい、それじゃあ俺は手加減されていたってことじゃ・・・」
「単純な近接戦闘なら勝負は解りませんよ?
アリサの本領は、あんなモノではありませんが・・・」
「マジかよ・・・
まぁ、いいや、手加減されていたことには釈然としないが・・・ほら、受け取れ!!」
四水は何かをアリサに投げた、アリサが受け取り俺に見せる。
屋敷の簡単な見取り図と、現在、サヤカが居る位置が書かれていた。
「なにかトラブルが起きていなければ、あの娘はその部屋に居るぜ
赤城と一緒だから、命の危険は無いとおもうが・・・
さっさと行ってやれ、俺はこの娘を医者に連れて行く」
その時、俺は確信したね。
この人、良い人だわ。
「・・・貴男達の目的はなんなのですか?」
訝しむ様なアリサの視線に、四水は方を竦めてみせた。
「コレばっかりは、流石の俺でも口止めされてるからなぁ・・・
ただ、人形の姉ちゃんの御陰で、簡単な仕事が面倒くさい仕事になった、しがない『殺し屋』とでも思ってくれや・・・」
「やっていることが、『殺し屋』の範疇超えてませんか?
それになんで、貴男方の仕事にアリサが関わって来るのですか?」
「そりゃあ、お前がいらん手紙を・・・あっぶね、言う所だったぜ」
四水は慌てて口を押さえる。
俺はアリサが舌打ちしたのを見逃さなかった。
「まあ良いです、
・・・足止めの件はこれで水に流すとしましょう」
「ん、じゃあ、頑張れよ」
四水は、血塗れの女の子を抱え、街の方に歩いて行った・・・
俺の中で、四水=メッチャ良い人が確定した。




