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とある貴族の人形遣い (仮)  作者: 涼坂 九羅
2章 月村の家伝
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26話 差出人

 男は愛しの女性が描かれた肖像画を眺める。

 妖麗な女性・・・『サヤカ』が描かれていた・・・


 そして自分のキャンパスに描かれた彼女を見る・・・


 9割型完成・・・


 ただ、男の『サヤカ』には決定的に掛ける物が合った


・・・瞳が無い・・・


 男の『サヤカ』には瞳が無い、瞳が描かれる場所には暗い空洞が開けられている。

 ここまで完成した肖像画で瞳だけ真っ黒というのは、どうしても狂気的なにかを感じずにはいられないだろう・・・


 否、この部屋に入った時点で狂気を感じない人間は居ないか・・・


 壁一面、無数に飾られた『サヤカ』の肖像画・・・

 最も古い物は『骸骨』から始まり、次に『肉』が付き、『髪』が付き、『皮』が付き・・・今、描いている『サヤカ』には新しく『耳』が付いていた・・・男は何人も人を殺し、この・・・否、ここに描かれている大作を作り上げて来た・・・後は、瞳だけ・・・


 男は席を立ち、ある部屋へと向かう・・・


 その部屋には、この間新しく集めて来た『サヤカ』が椅子に座っていた。

 全員、目隠しされ、手首を縛られ、脚を固定され、猿轡を噛まされている・・・4人、この中にあの『サヤカ』より、『サヤカ』に近しい『瞳』はあるのだろうか?


 男は工具を手に取った。

 瞳の取り出しはより慎重にやらなければならない。

『人形』にとって『瞳』は命だからだ・・・



 俺は、馬車に揺られながら落ち着かない気持ちをどうにか沈めていた。

 それは、アリサやポチ(馬車を動かしているのはポチ)も一緒のようだ・・・


 そう言えば、先程、思いだしたことがあったのだ、アリサに聞いてみよう。


「母様と父様には連絡しなくていいのか?」


 いやまぁ、普通、こういう事件があったら最初に親を頼れよって感じだが。

 俺は完全に、母様も父様も存在を忘れていた・・・

 あの二人なら、この状況を打開出来るのでは?

 と、思い聞いてみたのだが、アリサの残念そうな顔をみて察した。


「申し訳ありません、マスター

 奥様と旦那様には既に連絡を試みているのですが、お二方の所在は以前掴めておりません」


 あの親はこんな時に何をやっているのだろうか?・・・いや、多分、こんな事件が起こっているとは知らず、夜な夜なハッスルしているに違いない・・・


 自分でも不思議に思うのだが、そんな親達に怒りは沸いて来なかった。

 母様にしても父様にしても、こんな事件が起きるとは思っていなかっただろうしな・・・

 第一、俺は前世で大事な時に親が居ないという状況を何度も経験している


・・・語弊があってはならないから言っておく、別に放置されてたとか虐待されてたとかではない、前世の両親は基本的に自分でどうにか出来ることは自分でしろ、って人たちだったんだ・・・


 それに、愛情は注いでくれたモノの、あの人達、生活能力ゼロだったし・・・

 そのおかげで、俺と兄妹達は逞しく育った訳だが・・・


「奥様と旦那様が屋敷に戻り次第、星見が事情を説明することになっております。

 ・・・後、マスターの御耳に入れておきたいことが・・・」


 アリサの表情が若干、翳りを見せた・・・

 話す内容は、あまり良い話では無いのかもしれない・・・


「・・・実は、私は独断で2年前、ある人物に手紙を送っていました

 今回の事件に関わることで、件の貴族を逮捕する様に求めた物です


 ここにその写しがございます

 ・・・マスターに許可無く出過ぎた真似をして申し訳ありませんでした」


 アリサが出して来た手紙を受け取り、一読する(どうでもいいけど、この世界の言葉を読める様になりました♪)。

 

 手紙には核心的なことは触れられておらず、ただそういう事実が『あるかもしれない』という文体でサヤカの語ってくれた事件が書かれている・・・

 手紙には差出人の名前は明記されておらず、見るからに怪しい。

 しかし、手紙には月村の印が押されており、もしこれを見た人間が動いてくれているなら、こちらが幸いしたのかもしれない。


 しかし、二年前となるとサヤカを助けた直後にコレを書いて、何者かに送ったことになる。

 その何者かが動いてくれているなら、今回の様な事態にならなかったのではないか?


 アリサは苦笑いしていた・・・


「はい、実はそのことで御耳に入れておきたいことがあったのです

 今更ですが、私がその手紙を送った『七大委員会』の委員の方が、夜守家の屋敷がある街に『調査』の為に訪れております・・・非常に不本意ですが、助力を願うべきだと思います、如何なされますか?」


 かなり、嫌味を含んだ口調でアリサは教えてくれた。

 まぁ、確かに今更だよな・・・今更だけど・・・会うべきか?


 だが、・・・時は一刻を争う・・・会っている暇など、無い!!


「承知しました、私もそれが賢明だと思います

 このまま夜守の屋敷に向かいましょう」



 日恵野 静は、宿から見える夜守家の屋敷(西欧の城をモチーフにした建築)を見ながら、一人もどかしさを感じていた・・・

 この街に来てから数日、静と大樹の調査により、状況証拠だけだが夜守巳三郎は限りなく黒であると判明している・・・


 あの手紙に書かれている様なことが事実なら、奴隷商共の間ではかなりの有名人だと思われます・・・

 しかし、犯罪者共は癪だが賢い。

 僕がこの街に来る情報を知り、直に雲隠れしたのでしょう。

 しかし、今、この街で奴隷商はおろか、どこの街でも居る小悪党の集まりや、薬物の密売人すら見かけることは出来ません・・・とても『治安の良い街』ですね・・・明らかに異常でした。


 だから、奴隷商一人捕まえるのにかなりの時間を喰らいましたが・・・


 組織だって動いていない犯罪者共にここまでの動きは出来ません。

 無論、この街に大きな犯罪組織は無い筈です。

 裏の世界での横の繋がりは馬鹿には出来ないですが、ここまで警戒されるとなると裏で犯罪者共を操っている存在を考えざる負えなかったのです。


 そこで浮上したのが、やはり夜守家・・・


 犯罪者は隠せても、人の口に戸は立てれませんね。

 街中の酒場を大樹に当たってもらい、その多くの店で夜守巳三郎の『良く無い噂』を集めることが出来ました・・・


 中でも信憑性の高い噂をピックアップし、より絞り込みます。


 最終的に僕が目を付けたのは、

 スリ集団に使いっ走りにされていた少年の話でした。


 その集団のリーダーは誰かに盗んだ金の一部を献上していたというからです。

 その金を受け取ったのが夜守、というのは、あまりに話が出来すぎているので無しですね。


 少年に会い、実際に話を聞き(多少の暴力を加え)、スリ集団のボスを特定し、隠れていたボスを炙り出し、そのボスから献上された金の受け渡し先を聞き出し(なかなか、喋らなかったので暴力を加え)、それがまさかの奴隷商、そして次は奴隷商を炙り出し・・・etc


 ここまでのことを、静は数日でこなす・・・

 普通、ここまでのことをするのに常人ならどれくらいの時間を掛けるだろうか?

 静は、七大委員会でも優秀すぎて恐れられているのだ・・・


 奴隷商を捕まえて証言を得てもなお、決定打に欠ける。

 上級貴族を落とすにはもっと決定的な武器が必要だ・・・

 かといって、屋敷に押し入る訳にもいかず・・・


 静が溜め息を付いて窓から離れると・・・

 部屋には見知らぬ黒尽くめの男が一人。

 大樹は外に出かけているし、流石の大樹もスーツでもないのに黒尽くめは無い。


 確実に不審者・・・

 さらに、対魔法使い戦に特化した静に気付かれず、部屋に入り込めるとなると・・・


 武人だろう・・・それも暗殺系の・・・


 身構えたりはしない、暗殺系の武人に不用意な隙を見せる訳にはいかない。

 それに、もしかしたら、部屋を間違えただけ、って、いう可能性もある(限りなくゼロだけど)。


 出来ることなら無駄な人死には出したくは無い・・・


「日恵野の御長男ですね?」


「む、正確には日恵野 満干の長男です

 日恵野にも多くの人間が居る、僕の従兄弟の誠司だって長男ですよ?」


 僕の返答に、黒尽くめは少し笑った様だ・・・


「そうですね、失礼致しました

 この度は早急に静様の御耳に入れたい案件があり、失礼を承知で参上させて頂きました」


 黒尽くめは、敵意の無いことを示す様に深々と頭を下げた。


「なんですか、早くに聞かせて下さい

 じゃないと、恐い相方が帰って来て、君を殺しかねないからね」


「了解しました


 後、数刻もすれば夜守の屋敷で騒動が起きる『かも』しれません

 場合によっては火の手も上がる『かも』しれないです・・・


 『もしも』そんな事態が発生したら、静様には、『要人救助』の名目で屋敷に突入してもらいたいのです」


 訳が解らなかったが、言いたいことは解った。

 面白い・・・『もし』そんな事件が起きたら、僕は速やかに屋敷に突入するとしよう・・・


「無論です、あの屋敷には夜守巳三郎という『要人』が住んでいますからね・・・

 『もしも』そんな事態になったら、速やかに行動すると約束しますよ」


 二人は同時に不敵な笑みを浮かべた・・・


 

 



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