20話 遠くは離れた列車の中
コレは悪夢である・・・
縦横無尽に俺を責め立てるパパ様の木刀。
それを躱すこともできず、只、されるがままに打ち据えられる俺・・・
パパの稽古は実践型でした。
・・・言い訳させてくれ、剣の軌道は見えていたつもりなんだけどな、次の瞬間には打たれてんの・・・
それを何回か繰り返した後、あっけなく俺はグロッキーです。
うん、空が青いね・・・鳥が飛んでる、あれ、なんて鳥だろう?・・・
そんな、どうでもいいことを考えている訳だが・・・
近くでまだ響き合う、木刀と木刀が打つかり合う音。
「あたしは、レイジの為に強くなる!!」
「・・・・・・・・・・・・・来い」
遠目に見ると凄い光景だ、5歳児といい歳の大人が木刀で叩き合っている。
それにしても、サヤカは良く動く・・・俺が躱せなかった一撃を避け、パパ様の隙を突く、パパ様もサヤカの一撃を軽く往なし、サヤカの隙を突く・・・
そんな攻防が続いている。
やべぇ、レベル高い・・・
「お疲れ様です、マスター」
アリサが、濡れたタオルと、水の入ったコップを持って来てくれた。
俺はそれを受け取り、水を一気に飲み干す。
「サヤカは凄いな、俺じゃあ、あんなに動けない・・・」
アリサは微笑むと、遠目に二人の訓練を眺めた。
「マスター、どうか御気になされません様に・・・
人には適材適所と言う言葉があります
サヤカさんは武人としての才能に秀でているのです
サヤカさんと初めて会った日のことを覚えていますか?」
覚えているが、それがどうしたのだろう?
「あの時、サヤカさんの魔力はゼロでした、だから私の魔力探知機能をもってしても接近を許したのですが
この屋敷に来てから、サヤカさんは自身の魔力総量を増やす修行をされていました・・・
・・・ですが、現在、サヤカさんの魔力はゼロのままなのです」
それって暗に、魔法使いとしては才能無いって言ってる様な・・・
「はい、まさしくサヤカさんに魔法使いとしての才能はありません
しかし、旦那様曰く、『武人』としての才能は高いそうです
もう既に、『闘気』を纏う所まで取得されているのだとか・・・
武人にとって魔力とは邪魔な存在でしか無く、不要です
旦那様は、『魔力が低い、もしくは無いことも一種の才能』とも仰られておりました・・・」
えーと、つまり、莫大な魔力を保有する俺は、武人としての才能が無いと・・・
アリサさんがニッコリ笑った。
あ、俺、無いんだ・・・薄々、感づいていたけどね・・・
■
レイジがピクニックを楽しんでいる頃(?)・・・
そこから遠く離れた場所から、二人の若い男が列車の旅を楽しみながら(?)、レイジの住む地域へと向かっていた・・・
男達は個室で向き合う様に座る。
片方は、整った顔立ち、育ちの良さそうな物腰、誰が見ても上物と分かるスーツ、茶髪と碧眼と・・・誰が見ても、上流階級の人間だ。
対照的にもう一人は、2メートルはある大柄な体格、ガサツな態度、着崩したスーツ、短く切りそろえられた短髪・・・誰が見ても、この二人が親友同士だとは思わないだろう・・・
駅の職員でさえ、彼等に声を掛けることは無い。
何故なら彼等が、魔法使い専門の刑事組織『七大委員会』の『委員』だからだ。
さらに、この二人が『七大貴族』子息・・・さらに、特に有望とされる12人に数えられていると知っていれば・・・きっと、この列車は貸し切りになるだろう・・・現在はそうなっていないが・・・
茶髪の青年が大きな欠伸をした。
彼は個々最近、碌に眠っていない。
列車の中ぐらい眠ればいいのに、今も、手元の書類を覗き込み何やら考え事をしている。
その姿を向かいあって見る、木暮大樹はほとほと疲れていた、目の前で仕事されると休んだ気にならん。
「おい、静、そろそろ休んだらどうだ?
身体に良く無いぞ?」
静と呼ばれた青年は、書類を膝の上に置き。
大樹に向けて微笑んだ・・・
「じゃあ、仕事はコレぐらいにして
大樹に愚痴でも聞いてもらうかな
最近、愚痴る暇もないくらい多忙だったし・・・」
急に暗い顔をブツブツ何か呟きだした・・・
ヤバい、鬱モードが始まる。
注:ここから始まる静の愚痴は、読み飛ばしてもいいです(by 作者)
「・・・なんで僕、学院の生徒会長と七大委員会の委員を両立してるんだろう? そりゃあ、将来の為に盤石な地盤を作らないといけないのは分かるさ・・・。七大委員会の委員も、学院の生徒会長も、経歴としたら花々しいからね。でもね、でもだよ・・・、僕だって16歳で若いんだ、遊びの1つや2つ、3つや4つぐらいしたいさ、それを父様達はよってたかって、なにが『仕事のことを考えろ』、『お前には遊んでいる暇は無い』っだ!! 自分の都合しか考えてないくせに、証拠に僕がする仕事は全て父様に利益がある。どうせ、同じ立場で仕事するなら、皆の為になる仕事をさせろっての!! 今回の手紙だって、僕に届く前に父様が握り潰して、僕だったら手紙の届いた2年前に直に駆けつけていたのに・・・。被害が増えたらどうする気なんだ、あの、馬鹿親父は!!!」
口調が徐々に荒々しくなって行く・・・
相当ストレス溜まっていたな、これ・・・
大樹はいつものことなので平気だが、普段の彼しか知らない人が『コレ』を見たらどう思うだろうか?
静・・・日恵野 静は、一頻り叫んだ後で、直にいつもの調子に戻った。
「すまん、大樹
少々、取り乱したみたいだな
いつも、愚痴を聞いてくれて、ありがとう」
幾分、スッキリした顔付でそう言った。
コイツとは長い付き合いだ、一晩中、愚痴を聞かされたこともある・・・コレぐらい雑作もないことだ・・・そして俺は、聞いている振りをするスキルを身につけたのだ・・・
「ああ、俺で良ければ何時でも愚痴を聞いてやる」
この二人の友情は深い・・・
■
日恵野静と、木暮大樹が乗る列車に、もう一組、先程の二人とは違う理由で近寄り難い2人組が居た。
怪しくて近寄り難いという意味だ・・・
片方は、前身黒尽くめの男・・・レイジが見たら、何処の組織の人間だ、酒の名前付けてるだろ絶対・・・とか、突っ込んでいる風貌だ。
もう片方は、着物を来た男、杖の様な長い棒を持っている。杖じゃないと分かるのは、男がその棒を使って背中を掻いているからだ、長過ぎて掻き難そうにしているが・・・レイジが見たら、コイツ絶対にアホだろと突っ込んでいることだろう、風貌は『何処の三世の一味だ・・・』とか突っ込みそうだ。
背中を掻きまくっている男が、黒尽くめの男に叫ぶ。
「あああ、痒い
なぁあ、赤城、悪いんだけど俺の背中掻いてくんない?」
赤城と呼ばれた、全然赤く無い、むしろ黒ですな男は、着物の男に言い放つ。
「陣ちゃん、自分で掻けよな・・・
ほら、頭使って?」
陣ちゃんと、可愛らしい名前で呼ばれた、全然、可愛らしく無い着物の男は。健気にも言われた通り頭を使って試行錯誤し、ついに気がついた・・・
「いやいやいや、俺、掻けないから頼んだんだよね?
ほら、地味に手の届かない所が痒いし、コレ使ってもぜんぜん長過ぎるし、だから頼んだんだよね?」
一頻り突っ込みを入れたが、赤城と呼ばれた男は読書を始めている。
「お〜い、俺の話は無視ですかぁ〜・・・」
陣の言葉は虚しく響く・・・
「陣ちゃん、俺達は遊びに逝く訳じゃないんだ、真面目にしようぜ」
ページを捲りながら呟く赤城の言葉に・・・
「お前が先に俺を揶揄ったんだよね!?」
「いや、背中掻こうとして馬鹿な体勢続けてた陣ちゃんが悪い
なんていうか、揶揄ってオーラが出てた・・・」
「俺、んなオーラ出してんの!?」
コレは、プロの殺し屋二人の会話である。
ポイント入れて下さった読者様、お気に入りに入れて下さった読者の皆様
ありがとうございます!!
作者は飛び跳ねて喜んでおります!!
今回、登場した4人
すみません、作者がペース配分間違えたので初登場を1話に纏めてしまいました・・・スミマセン・・・
一気に登場人物が増えましたが、これからも人形遣いをヨロシク御願いします!!
・・・登場人物をマトメて紹介するヤツとか、書いた方が良いのかな?・・・




