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とある貴族の人形遣い (仮)  作者: 涼坂 九羅
2章 月村の家伝
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18話 アントワネットの悲劇

 俺の練習相手となるマネキン、名をアントワネット・・・


 ・・・ケーキが好きそうな名前だな・・・

 そういえば、この世界には某マリーさんみたいな人は居たのだろうか?

 俺はまだ、アリサさんからこの国の歴史しか習っていない、唯一、世界史じみた所は『大戦』の所ぐらいか・・・しかし大戦も、そもそも何故に戦争となったのか教えてくれなかったな・・・


 さて、母様がパペットワークの使い方を懇切丁寧に教えてくれた、だからそれを纏めたものを脳内で整理する・・・理解力も上がっているのかもしれんな・・・


 まず、人形の腕や足、首などの、よく動く部分に魔糸を結ぶ所から始める。

 結ぶと言う表現は本当に的を得ていた、魔糸をアントワネットに近づけた瞬間、まるで引き込まれるかの如く魔糸が吸い込まれたのだ。アントワネットと魔糸の接続部分は、俺の掌から出る魔糸の出方と酷似している。例えるなら、へその緒で繋がった感じかな?・・・


 後、驚いた。

 自分が立っている地面と、アントワネットが立つ地面の感触が両方解るのだ。

 魔糸のセンサーがアントワネットに代わった感じだな。


 しかし、変に思った。

 母様の『手駒』であるマネキンは、隠れんぼ中、魔糸で繋がれている所なんか見えなかったのだが。

 アントワネットに繋がる俺の魔糸は視認出来た。

 それを母様に聞くと・・・


「ああ、それね!!

 例外を除いて、繋げた瞬間、術者以外には見えなくなるのよ♪

 

 まぁ、術者にも見えなくすることは可能だけど・・・

 最初のうちは、見て慣れなさい♪

 

 基本的には、人形遣いが糸を見てないと駄目でしょう?

 見えなくなるのは観客だけで良いの♪」


 なるほど、そういうものか・・・

 でも、俺は昔、アリサの動かす人形に糸が付いてるのを見たぜ?


 そのことを聞くと、母様は答えてくれた。


「自分が使役している人形がパペットワークを使った場合、

 例外として、その人形が使っている魔糸を使役している者は視認出来るわ!!


 だから、私の場合、ルーカスが使う糸を視認することが出来るわね♪」


 ルーカスは、母様の『手駒』の中で、一番厄介な人形だ。

 最近、俺の敗因はルーカスによる所が多い。

 あの普通サイズのマリオネットは、


 巨大間接人形のタロス君や、無駄に数の多い不気味なマネキン達より、遥かに質が悪いのだ・・・


 しかし、ルーカスは魔糸を使っていたのか・・・そういえば、蜘蛛の巣を張って俺を捕らえてたなアイツ・・・


「ここからは、私の技術も含まれるのだけど・・・レイジには教えてあげるわ!!


 一度、パペットワークで結んだ人形との魔糸は、人形遣いが保有する魔力の影響範囲を出ない限り切れることはないわ!!

 例え、遮蔽物に阻まれたとしても切れてないから安心して♪」


 マジか!?

 絡まったりしないのか?

 いや、そんな馬鹿なことこの母様は一度もしなかったな・・・

 つーか、こんな木の多い森で、あれだけ人形を動かしているのだ・・・本当に問題はなさそうだな・・・


「私の場合、魔力の影響範囲が狭いから、途中でルーカスにハブしてもらわないといけないの・・・

 ルーカスとはパペットワーク使えるし、『契約』しているから私の影響範囲外にも出れるしね♪」


 そう、昔から聞きたかったのだ、『契約』とはどういう意味なのか?

 あと、疑問に思ったのだが、アリサにしてもポチにしても、魔糸が見えないのだが・・・


「ねぇ、かあ様、質問です

 契約って何ですか? あと、ポチとアリサには魔糸がみえないよぉー」


 ふふふ、と笑って母様は説明してくれた。


「なんで、ポチとアリサの魔糸が見えないのか?

 それは、特殊な魔糸を結ぶ『契約』という作業をしているからよ!!


 契約をすることにより、人形は人形遣いと魂で結ばれるわ。

 だから、魔力供給さえ十分なら、術者の魔力影響範囲外にも出れるし。

 なんと、心で感覚的に指示を出したり会話することが可能なのだ!!


 因みに、契約は『偽りの魂』を入れられた人形にしか使えないから覚えておいてね」


 ここ数年の謎が解けた瞬間だった・・・

 なるほど、俺の心が筒抜けだったのはそういう理由か・・・納得・・・


 でも、アリサと心で会話できないのですけど・・・

 母様は少し残念そうな顔で答えてくれた。


「アリサの声が聞こえないのは、多分、まだ、レイジの精神が幼いからね・・・

 筒抜けになってるのも、そう・・・

 だから安心して、私も叢雲に筒抜けだったけど8歳くらいでどうにかなったから♪」


 ・・・俺、精神年齢21歳なんですけど・・・



 さて、動かしてみますかアントワネットちゃん!!


「よーく、アントワネットが動いている所をイメージして!!

 コツさえ掴めば、後は簡単だから♪」


 イメージする・・・あの、ホラーな動きをイメージする・・・


『ギギ・・・』


 アントワネットから不気味な音が聞こえる・・・

 そして次の瞬間・・・


『ギギギギギギギギギギギギギギ・・・、ギ・・・ギギ・・・ボキ!』


「あ・・・、アントワネットちゃん!!!」


 母様がアントワネットの無惨な骸に抱きつく・・・

 俺は自分が引き起こした光景に、(この世に)産まれて初めてトラウマを植え付けられて動けない・・・


 アントワネットは、不気味な音を発しながら、今まで見たことも無いくらいホラーな踊りを披露し、自ら海老反りして、胴体で割れた・・・無惨な最後だった・・・


 駄目だ、これ絶対に夢に出る、唸される・・・

 アントワネットの亡霊・・・恐ろしい・・・


「待っててね、アントワネットちゃん、直に治すからね♪」


 え・・・治るの?

 母様がアントワネットの部品に魔糸を結ぶと、何やら魔力を流し始めた。


 そうすると、アントワネットの部品が少しずつ集まり、どんどん元の形に戻って行く・・・

 完全に元通りになるのに5分も掛からなかった・・・


 元通りになったアントワネットが俺をじーと見る・・・


 悪かったよ・・・ゴメン・・・

 マジ、ゴメン・・・

 だから見ないで・・・許して・・・

 まだ、俺しにたくないの・・・


 俺が怯えていると、母様はニコリと笑った。


「大丈夫♪

 アントワネットは怒ってないよぉ〜


 初めて、パペットワークを使うと皆ああなるんだ♪

 私も一杯、ヤラカしたなぁ・・・」


 壊れたマネキンの前に佇む母様・・・容易に想像出来たわ・・・

 それよりもこの、元通りになったヤツ、どうなっているんだ?


「かあ様、アントワネットは、どうやって治ったの?」


「ああ、これね

 レイジは『自動修復機能』って言葉聞いたことがない?」


「なんか、アリサが持ってるって言ってた」


 会話を思いだす、確か前、アリサは・・・

 自動修復機能、魔力探知機能、自動照準機能、変形機能、武器内蔵機能、加速機能、が自分に付いていると言っていたな・・・『など』って付いてたからまだあるかもしれんが・・・


 母様はニコリと頷くと続けた・・・


「自動修復機能は、その名の通り、人形の受けた損害を自動で修復する機能よ

 この子の場合、Dランクの自動修復で、機能継続が不可能になっちゃうと、こうやって手動で魔力を流さないといけないのだけど・・・


 アリサちゃんの場合、特にこの機能に特化している筈だけど・・・」


 マジ!?

 初耳だ、帰って確認だな・・・


「私の自動修復機能はSランクです、マスター

 因みにSランクですと、例え粉々になっても、魔力残量が十分なら修復可能です」


・・・はい、お約束ですが驚きました・・・いつの間に立ってた、おい・・・


 俺の後ろから現れたのはアリサさん、神出鬼没すぎるだろ・・・

 母様は平然としてるし・・・え、なにこれ普通のことなのは?・・・


「奥様、マスター、至急お戻り下さい

 私では対処し切れない事態に陥りました・・・」


「手短に説明をお願い!!!」


「はい、


 奥様とマスターが構って差し上げないものですから、旦那さまが屋敷の隅で拗ねました

 とても、私達では対処出来ないので御戻り下さい・・・」


 パパ・・・

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