15話 モミモミされました
デッカい関節人形に摘まれて寺へと戻る。
もっと、乗り心地がいい人形を用意しろよな…
サヤカさんは、マネキン達に抱きかかえられての移動だ。
ちょっと前に一回起きたけど、悲鳴を上げてまた気絶した。
サヤカさんも大変だ…
寺では、母様がパラソル開いて優雅に寛いでいらしゃっる。
アリサは、母様に紅茶を淹れている最中だった。
俺の姿に声にならない悲鳴を上げ、母様を睨む。
母様は涼しい顔でニコリと俺を出迎えた。
「流石、私のレイジ♪
なかなかに手こずりましたわ!!
さぁ、その柔肌を私にモミモミさせなさい!!!」
巨大な関節人形は無情にも俺を母様の所へ下し、俺は母様にモミモミされた…
もう、お婿に行けないわ…
■
寺の中に入った瞬間、放心状態だった俺は板の間に突っ伏した。
なにも、外でモミモミしなくていいじゃないか…
これでも一応、二十歳なんだぞ?
人並みに羞恥心あるんだぞ?
あんな所や、こんな所をモミモミしやがって…
世界が世界だったら、あんなことしたら親でも逮捕されてるよ!!!
「大丈夫ですかマスター?」
アリサが心配そうに聞いて来る。
「なんで、なんで、助けてくれなかったんだよ!」
つい、八つ当たりしてしまった…ゴメン、アリサ…
しかし、アリサは至極当たり前に…
「負けたマスターが悪いのでは?」
御尤もです…
「それに、
マスターと奥様の勝負でしたし、
修行の一環なら私が口出しすることは出来ません」
まて、あれが修行の一環だと?
ただ、遊んでいただけじゃないか!!
「いえ、あれは『パペットワーク』の…人形遣いとしての戦い方を学ぶのに適した修行でした」
え?
ただ、遊んでいただけじゃないのか?
アリサは俺の前にゆっくりと正座し、口を開く。
「月村家の家訓に、『人形遣いは、影に潜む』という言葉があります
これは、人形を操っている所を誰にも注目されないことが、一人前の人形遣いという意味です
勿論、人形の種類や、スタイルに応じて例外も存在しますが…
因みに、月村家の家訓は全てで53あります」
月村家、家訓多すぎだろ…
どんだけ書きまくったんだ?
速く寝ましょう、とか書いてるんじゃ無いだろうな…
それにしても、『影に潜む』か…
「はい、今回、逃げている最中に一度でも奥様を見かけましたか?」
いや、見てないな…
どうやって、俺達の居場所を特定したのか謎だ…
…あの、マリオネットか?…
「人形遣いには、様々な情報収集方法があります
奥様が何を用いたのかは定かではありませんが…
後、もう1つ、マスターには家訓をお教え致します
『人形遣いは、客を踊らせ、驚かす』です」
「どういう意味だ?」
「そのままの意味よ♪
レーイジ!!!!」
いきなり現れた母様に抱きつかれる。
おい、コラ
さっき散々、人のことをモミモミしまくったろうが!!
なんでこんなにスキンシップ多いんだよ、
母様、本当は何処の国の出身ですか?
「いい、レイジ?
人形遣いは、只、人形を動かすだけじゃ駄目なの…
楽しんで、楽しませる様に、楽しい劇を進めなければならないの♪」
?
何のことだ?
俺の頭に解る様に説明してくれ…
「それとね、人形を踊らせるだけじゃ駄目…
客も踊らせてこそ、一人前の人形遣いよ!!」
人形遣いの心得を説かれている…
コレは聞いとくべきだ!
メモは、メモは…
「レイジ…」
ん?
なんだ、この消え入る様な声は?
サヤカさんの声の様だが、サヤカはこんな声だすだろうか?
「レイジ…助けて…」
顔を上げると、母様が意地悪な笑みをしていた。
「いやねぇ、レイジが産まれて初めて連れて来たガールフレンドですもん♪
私、頑張ちゃったわ♪」
母様が手を向けた方向に居たのは。
部屋の入り口に身を隠す、赤面したサヤカさんだった。
母様、なにをしてくれたのだろう?
母様はサヤカへと近付き、腕を引っ張り、俺に姿を露にさせる…
こっ、コレは…サヤカさんがロリロリな服を着ているだとっ!!!
何だそれは、フリフリの付いた衣装…そう、俺の世界で言う魔法少女が着てそうな衣装だった、魔女っ娘だああああ!!
前にも言ったかもしれないが、サヤカは美少女だ・・・
特に目が印象的な美少女だ・・・
それが、それがコスプレしているだと・・・
大きいお友達が寄って来るぞ!!
それにしても、我が母よ・・・
人形のセンスは最悪だが、服のセンスは良いじゃないか・・・
萌えが解っていらっしゃる・・・
「やっぱりね、息子のガールフレンドには可愛い服着て貰いたいじゃない♪
・・・もしかしたら、娘になるかもしれないし・・・」
最後、なにか呟きましたよね!?
息子2歳の段階から、親が嫁探ししないで下さい!!
サヤカは可愛いけど、息子だってコレから先、母様の知らない所で素敵な出会いの一つや二つ・・・
ある・・・あるかも・・・しれないんだからな!!
サヤカだって俺とそんなこと言われて嬉しい訳・・・
「お、お義母さま、そんなことは・・・」
サヤカさん・・・なんで、俺の母のことを『おかあさま』と呼ぶ?
しかも、多分、『お母様』じゃなくて『お義母様』だよね?
えーと、うん、フラグ立てた覚えが無い・・・何が彼女を・・・
「お義母さま、安心して下さい、あたしがレイジを守ります」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「まぁ、頼もしいわね
レイジのことをヨロシクね!!」
「はい!!!」
守るって、・・・
俺はどれだけヘタレに思われているのだろうか?
あれか?
俺は、母性本能くすぐるタイプだったのか?
「なにを今更言っているのですか?」
アリサの言葉で止めを刺された気分だった・・・軌道修正しなければ・・・
■
「パペットワークを教える前に、
レイジの為に、どうやって人形を動かすのかを教えて上げるわ!!」
昨日は結局、寺に一泊した。
疲れていたし丁度良かった、この寺も屋敷と同様に手入れが行き届いており、快適だ。
まだ見ぬ、管理人さんに尊敬の念が消えないな・・・
母様と俺は、魔法の勉強を寺の本堂で行っている、なんか凄く微妙な感じだが・・・
母様が見せて来たのは、長くて蒼い糸の束であった・・・
その糸は何故か、母様の手のひらから伸びている様だ・・・
「これのことを『魔糸』、『魔力糸』、『納豆の糸』とか言うわ!!」
必死のボケだがスルーする。
少し寂しそうな顔をしていたがスルーだ・・・
本当だぜ?
いちいち相手にしてたら疲れるからな・・・
「・・・この魔力糸を人形に付けることによって、パペットワークを始めることが出来るわ
今日はまず、糸を紡ぐ作業から始めましょう♪」
母様の説明に寄れば、人形遣いは、この糸が作れなければお話にならないらしい。
だから、まぁ、必死に努力して作ろうかと思ったのだけど・・・
「簡単に、作れちゃったわね・・・
・・・流石、私のレイジだわ!!!」
そう、簡単に作れちゃったのだ、しかも長いのが・・・
試しに引っ張て見たが伸びる、伸びる・・・掃除機のコードみたいに伸びるな・・・
なんか変な感じだ・・・
某クモ人間になった気分だ・・・いや、ヤツは手首だったか・・・
「あんまり伸ばすと、魔力ギレを起こしちゃ・・・そうだわ、レイジは莫大な魔力量を持っているんだったわ、それに・・・」
ん?
なにやら、母様は何かを納得したようだ・・・
そういや俺、チートな能力持ってるらしい(今まで実感無い)から、その影響で直に魔法を会得したのか!?
だとしたら、やったぜ!!
コレで魔法が使えるぜ!!
今の所、人造糸製造機みたいな感じだが別に構わない、
俺はコレから魔法を完璧に使いこなしてみせるのだからな!!