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とある貴族の人形遣い (仮)  作者: 涼坂 九羅
1章 転生と人形遣い
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11話 直立二足歩行

 どうにか投稿できたぁ・・・

 両親と合うということで、懸念事項が大きくなった


 俺は、2歳児にもなって掴まり立ちしかできない

 直立二足歩行ができないのだ


 育児とかよく知らん俺でも解る

 健康な2歳児は歩く・・・


 勿論、なにかしらの理由で歩けない子も居る

 しかし、俺の様に『歩くのを恐れて歩かない』のでは無いのとは意味が違う・・・


 そのことに気付いたのは

 あの、アリサ主催の社会科の授業の後だ


 あの後、俺達はいつもの様に歩く練習をしていた


 

 大きな部屋で歩く練習


 サヤカは少し暗い顔をしている

 今俺は、サヤカに手を握られどうにか歩いている状態だ

 自然と顔が見えてしまうのだ

 そんな顔されたら、気になるだろ・・・


「どうしたんだ、サヤカ?」


 サヤカは、俺の顔を見ると少し言い難そうに口を開いた


「レイジ、多分もう歩けるよ?・・・」


 !?

 何を言い出すサヤカさん

 俺は今、サヤカさんに手を借りてやっと歩いていると言うのに・・・


 俺が困惑した表情を浮かべていると、サヤカさんはまた口を開いた


「ぜんぜん、重く無いよ・・・

 多分、自分の足で立ててる」


 俺は驚きの表情で自分の足を見る

 最近、肉が付いて来た幼児特有の柔らかそうなしっかりした足だ


 この足で立ててるのか?

 そんな馬鹿な・・・


 次の瞬間、俺は大きくよろめいた



 座布団敷いて座る


 俺は歩けない

 自分でそう自覚している


 しかし、目の前でサヤカさんが語りだした内容に、俺は驚かされた


「最初の頃は、レイジ、あたしがいないと本当に歩けなかったよ・・・

 でも、最近は、ぜんぜん重く無くて・・・多分、レイジは歩けるよ?」


 心配そうな顔で俺を見るサヤカさん

 彼女の言っていることは多分本当だろう


 なら、何故、俺は歩けないのか?


・・・自覚はあった、思い当たる節もある・・・


 俺は多分・・・歩くのが恐いのだ


 身体のバランスが取れない・・・というのが一番正しい

 幼児の肉体は、18年間で培った俺の歩行技術をゼロに戻す程に難しいのだ


 まず、大人の身体と同じ歩き方は出来ない

 体型が違う、体力も違う

 身体に対して頭が大きいためバランスをとるのが難しい


 あと、歩けば絶対に転ける・・・

 この恐怖心が俺の歩けない理由なのかもしれない・・・


 チキンと罵られてもいいが

 俺は転けるのが恐い・・・

 自慢ではないが、俺は転生して一度も転けたことが無い

 当たり前だ、歩いたこと無いのだから・・・転けることも無いだろう


 実際、サヤカとの練習中に何度か転びかけた

 その時の恐怖は結構キツい・・・


 目の前に地面が迫ってくるのだ

 前世の俺なら、転けそうになっても直に体勢を立て直すことが出来ただろう

 大人の身体とは便利なものだ


 しかし、子供の・・・幼児の身体は、それをする前に倒れてしまう


 恐い

 転ぶのが恐い


・・・ああ、今だから解る、俺は歩くのが恐いから歩けないのだと・・・



 その日から、俺は歩く練習を止めた

 アリサとは心が通じている筈だが、そのことに関しては触れてこなかった


 理由を自嘲気味に聞いたらこう言われた


『こればかりは人形である私には、どうして差し上げることも出来ません

 私たちは糸や道具によって動く様に作られてますから、歩く為の努力が解らないのです


 ただ、歩けない気持ちは解ります

 糸や道具が無ければ、私たちは歩くことも喋ることも叶いません

 ですから、マスターの気持ちは理解しているつもりです


 ・・・人間と人形では、思う所も違って来るでしょうが・・・


 すみませんが、この話に私は口出し出来ません

 マスターがこの苦難を乗り越えることを信じています』


 そうだ、アリサにこんなこと聞くのは違うんだ

 これは俺が乗り越えねばならない問題で、アリサにはどうすることも出来ない話だ


 だけど、俺は動けなかったんだ・・・

 



 朝を迎える

 明日、父様と母様が来るらしい

 俺の姿を見て顔も知らない二人はどう思うだろうか?


 胃が痛くなった


 俺の気持ちを知ってか知らずか、ポチがやって来た

 慰めてでもくれるのだろうか?


「おい、小僧

 テメェーが歩けないのは、テメェーの問題だろ

 一人でネチネチ引き蘢るのはどうかと思うぜ?


 折角、歩くのを手伝ってくれた女の子の好意を無駄にする気かぁ?」


 どうやら説教しに来たらしい

 その方がポチらしい説教だな


 自然と暖かい気持ちになれた


「小僧が辛気くさい顔しているから

 我が家の女性陣はみんな、雰囲気ブルーだ、どうにかしろ!!」


 そう言って部屋から出て行った

 アイツはよく解らん

 でも言いたいことは解った


 自分のことだ、『どうにかしなくてはならない』



 サヤカは一人、屋敷の掃除をしていた

 近くでアリサが指示を出しているのは、彼女が一応メイドとして雇われたためだろう


 メイドの教育の一環なのだ


 心無しか、サヤカが暗い顔をしている

 気のせいではないだろう・・・


 彼女としても、言い難いことだっただろう

 俺に・・・、俺が歩けると告げたときの表情が思いだされる


 彼女は困惑していた

 俺に言おうか迷っていた


 でも、俺に告げてくれた


 翌日、俺は歩く練習をしなかった・・・


 彼女は、どうして良いか解らなくなっただろう

 俺のことを心配してくれただろう・・・

 

 俺は、そんなことにも気付かなかったのか、自分のことが馬鹿だと思う


 サヤカに声を掛ける前に、アリサが俺に気付きやって来る

 サヤカも俺を見て、目を見開き、そして驚きの表情を浮かべた

 そして、喜びの表情に変わる


 心配してくれていたらしいな


 アリサは俺の隣に来て


「当家の殿方は、皆様、女泣かせの傾向があります・・・

 マスターはどうか、『人』の心が解る殿方で居て下さい

 お願い致します


 後、お召し物が汚れて居ますので

 替えを用意して参ります」


 それだけ言うと、アリサは屋敷の奥へと歩いて行った


 俺はサヤカの前に向き直る

 目線は、彼女より少し下だった


 俺はまだ背が低い


「サヤカの言う様に歩けたよ

 でも、まだ、下手なんだ・・・


 ココまで来るのに、何回も転んじゃった・・・


 また、練習手伝ってくれるかい?」


 俺は立っていた、直立二足歩行・・・できたのだ

 最初は転けた、何度も転けた、でも・・・あれだ


 転けるのを怖がっていたら、何時までも歩けないし、良いことなんて無いのだ


 サヤカはゆっくり頷いて

 微笑んでくれる


「レイジには恩がある、あたしでよければ幾らでも付き合うよ」


 近くで改めて見る彼女の顔は、今まで以上に可愛く見えた



 歩くということは素晴らしい

 地面に足をつけて歩くと言うのは、人類の進化を実感出来る


 素晴らしい


 その一言に尽きる


 今日、父様と母様が来られる

 

 その前に・・・、俺は件の『遊び』を再開する


「レイジ・・・、この遊び、楽しいの?」


 大奥ごっこ・・・

 襖を只ひたすら開けて行く遊び


 多分・・・いや、絶対・・・

 


 楽しく無いだろう



 うん、多分、始めたら2分で飽きる

 そういう自信がある


 だけどな、だけど・・・

 俺の焦燥感の原点はこの遊びにあるんだ!!


 結果的に歩ける様になったけど

 俺を焦らせたのは、この遊びの前に挫折したのが原点だ


 なら、やらない訳には行かない


 俺はわざわざ、助走を付けて走り出した

 横からサヤカが並走する

 俺が転けるからだ、安全のためサヤカも走る


 目の前に第一の関門

 俺はコイツの前に挫折した

 今こそ、積年の恨みを晴らす時!


 勢い良く開こうとする・・・


 予想より簡単に開いた

 いや、開かれた・・・


 俺が開こうとした瞬間、反対側から開かれた

 俺はそのまま、開かれた襖の反対側へダイブ


 俺を受け止めたのは、固い筋肉質の男だった


・・・oh、ゴリマッチョ・・・


 そう、ソコにはゴリマッチョが居た

 温厚そうな顔をしているが

 何処のボディービルダー?

 と、言いたくなる、凶悪な筋肉


 黒く焼けた肌は、健康的な色をしている


 俺は、男の顔を見上げようとして尻餅をつく


 身長高っ!!


 俺を引き起こしてくれる、サヤカも驚いている

 天井に着きそうな・・・、いや、着いてるな


 めっちゃ、長身の男だった


 だからだろう、この男の印象が強すぎて、男の後ろに隠れた人間の存在に気付かなかった

 飛び出して来る

 その影は女性、小柄な、つーか、ロリな感じな女の子だった

 そして、その女の子は信じられないことを口にする


「やっと逢えた、私のレイジ・・・

 これからは母さんと一緒に暮らそう!


 そうだ、それがいい!!


 どうしよう、ダーリン!!

 予想以上に私たちの息子、可愛いんだけど!!!」


 この人、一回の台詞で何回ビックリマーク付ける気だ・・・

 



 この後の、レイジ君の人格形成に必要な話でした


 それに、転生者といっても、歩く、ということは

 努力しないと出来ないと痛感して貰いました・・・


 自分でいうのもアレですが、ファンタジー転生物の主人公が『歩けるようになる』というだけに、これだけ文字数使っているのは作者だけの様な気がします


 でも、作者的に『歩く』というのは当然のようで

 素晴らしいことだと思うのです


 レイジ君には、それを実感してもらいました・・・


 これからも、人形遣いをよろしくお願いします

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