何となく思いついたオリキャラを登場させるために書いたオリジナル短編(仮)
クオリティがかなり低いですがお楽しみいただけたら幸です
喧騒賑わう街中を一人の男性が歩いていた。短く刈り上げた頭に軍帽を被り軍服に見を包んだ姿は誰がどうみても軍関係者だ。実際彼の左胸には幾つもの勲章が掲げられておりその階級の高さが窺われる。
男性は街中にある市場を少し過ぎた所で曲がり路地へと足を進めた。そこはこの街の中でも特に治安が悪い地区へと繋がる道で普段は滅多に人が通らない道だ。しかし彼はまるで自分の家の廊下を歩く様に慣れた足取りで進んで行く。
しばらく歩くと道端に『なんでも屋スパロウテイル』と書かれた看板があった。彼は看板を確認するとその店のドアを数回ノックした。
『開いてるよ』
中からそう聞こえてきたので彼は店の中に入った。入ってまず目に入ったのは、ドアの正面にあるテーブルに足を投げ出して椅子の背に体を預けて寝ている青年の姿だった。服装は白いシャツに黒い皮のジャケット、黒いスラックス。首には剣十字のネックレスをぶら下げている。
???「ようこそ。『なんでも屋スパロウテイル』へっ何だあんたか」
???「久しぶりだなジェイス。相変わらず客に対する態度ではないな」
ジェイス「へいへい」
ジェイスと呼ばれた青年は足をテーブルから降ろしゆっくりと立ち上がった。
ジェイス「それで、こんな寂れたなんでも屋に何か御用でございましょうか、マルコフ大佐殿?」
ジェイスは胸に手を当て腰を曲げて敬礼し男性、マルコフ大佐に来店の目的を尋ねたが、その態度は丁寧というより慇懃無礼と言った方が正しかった。
マルコフ「用があるから来ているんだ」
ジェイス「まあそうでしょうね。立ち話も何ですし、どうぞお座り下さい」
ジェイスはマルコフに店の中で一番上等な椅子をマルコフに薦め、自分は先程まで背もたれに身を預けていた椅子に座った。
マルコフ「今日はとある調査を依頼したい」
椅子に座るなりマルコフは口を開きそう言った。
ジェイス「ふ〜ん。それってあんた個人の?それとも−−」
マルコフ「軍からの依頼、と受け取ってくれて構わない」
ジェイス「ほう?」
『軍からの依頼』と聞いてジェイスは片方の眉を上げた。マルコフは時折個人的にスパロウテイルを利用することはあったが、軍として依頼に来ることは滅多になかった。
ジェイス「内容は?」
マルコフ「行方不明者の捜索をして欲しい」
ジェイス「行方不明者?例の事件のか?」
マルコフ「そうだ」
ジェイスが真剣な面持ちで聞くと、マルコフは神妙な態度で頷いた。
ジェイスの住む街では近頃行方不明事件が横行していた。行方不明になる人は老若男女様々でこれと言った共通点もなかった。また行方不明になる場所も時期もバラバラで、街外れの森だったり山だったり白昼の街の中でいなくなった事例もあった。街ではこの事件に対し『神隠し』、『人さらい集団の来襲』更には『軍の人体実験』など様々な憶測や噂話が流れていた。
ジェイス「けど何で俺に?調査なら軍の方でやってるでしょうに」
マルコフ「簡単に言えば人で不足だ。近頃隣国との関係がまた悪化してきてな。そちらの方に人員を割いたため調査の方まで回らなくなってしまったんだよ」
ジェイスの住む街が所属している国は大昔から隣国との関係が悪く常に戦争状態だった。数十年前に停戦条約が結ばれ国交が回復してからもいざこざや小競り合いが絶えなかったが此処数年はそれもなく双方とも穏やかな日々が過ぎていった。だが最近になって再び関係が悪化し、いつ戦争になってもおかしくない状況だった。
ジェイス「成る程。それで猫の手ならぬ雀の尻尾を借りに来た訳ですか」
マルコフ「その通り」
ジェイスは軽く茶化す様に言ったが答えるマルコフの態度はあくまでも真剣そのものだった。軍としてもこの問題は軽視できないのであろう。
マルコフ「勿論報酬は払うし。必要経費も全てこちらでもとう。何なら特別手当を付けてもいい」
ジェイス「マジでか!?」
マルコフが上げた条件にジェイスは勢いよく食いついた。
ジェイス「……ふう。分かりました。この依頼お受けしますよ」
少し悩んだフリをしてジェイスは依頼を承諾した。だが先程の態度からして引き受けるのは明らかだったが。
マルコフ「すまんな」
ジェイス「別にいいって。俺とあんたの仲だろ。で、報酬は?」
マルコフ「取り敢えず前金で10000、完遂したら30000出そう。それ以外の必要経費はその都度連絡してくれ。支払い方法はいつもの様にしておく」
ジェイス「了解」
交渉が終了したあとマルコフは「頼んだぞ」とジェイスに言い残し店を後にした。
ジェイス「さて。お仕事しますか」
ジェイスは壁に立て掛けていた大剣を背負うと鼻歌交じりに意気揚々と店を出発した。
ジェイス「−−とは言ったものの、どうするかな」
街の中心部でジェイスは一人呟いた。高額な報酬につられて引き受けたものの、ジェイスに行方不明者を探す知恵も人脈も皆無だった。似たような、と言っても失せ物探し程度だが、を受けたことはあったがその経験が活かせるとは思えなかった。
ジェイス「まあ悩んでても仕方ないな。聞き込みでもするか」
取り敢えず聞き込みでもしようかと歩きだしたその時、
−−ドゴッ−−
???「キャアッ!」
ジェイス「ごふあっ!」
誰か、声からして女性だろう、がジェイスの背中にダイブし、ジェイスは地面と熱い口づけを交わした。
ジェイス「〜っつう!誰だよ一体!?」
???「わわっ!ご、ごめんなさい」
ジェイスが声を荒げると、ジェイスの背中にのっかていた女性はジェイスの声に驚いて急いで降りた。
???「あ、あの、お怪我はありませんか?」
ジェイス「大有りだ!誰が好き好んで地面……いえ、大丈夫です。それより貴女こそお怪我はありませんか、お嬢さん?」
ジェイスはあわよくば慰謝料をせしめようと大声で文句を怒鳴ろうとしたが、女性の姿を見るなり態度が一変した。ぶつかってきた女性はまるで絵画から飛び出して来たかのように美しかった。太陽の光りを思わせる金の長髪は絹糸の様に輝き、白く滑らかな肌はどんな白磁の壷にも負けないほどで、碧く潤んだ瞳は最高級のサファイアの様であった。服装はシャツの上から皮のジャケットを羽織り、ホットパンツにブーツとかなりラフな格好だった。
ジェイス「ところでお嬢さん、貴女のお名前は?」
???「エ、エルズベスです」
ジェイス「ではエルズベスさん。此処で会ったのも何かの縁。どうです、そこのカフェでお茶でも?」エルズベス「い、いえ。今はちょっと……」
初対面のジェイスの申し出に、エルズベスは引き気味に断った。
ジェイス「そうですか。ではもうそろそろお昼なのでランチはどうでしょう?近くにパスタのおいしい店があるんですよ」
エルズベス「いえ、ですから……(どうしよう。早くしないと)」
尚も食い下がるジェイスをエルズベスがどうにかして断ろうとした時、
『おうおう!邪魔だ邪魔だあ!コス様のお通りだあ!』
『手前えら道を開けろお!』
何とも耳障りな声が街中に響き渡った。
エルズベス「うわっ!追いつかれた!」
ジェイス「またあいつ等かよ」
ジェイスが呆れていると人込みを掻き分け三人の男が現れた。
???「何だ何だあ!?また雀野郎のお出ましかあ!?」
ジェイス「それはコッチの台詞だカスヤロウ」
???「『コス』だ!」
ジェイスと口喧嘩を始めた男の名前はカス……ではなく『コス』。ボサボサの頭髪、裸の上半身に毛皮のジャケット、麻のズボンに毛皮の腰巻きという出で立ちはどこからどう見ても山賊である。実際コスは山賊で残りの二人はコスの子分である。
コス「テメエまた俺様の邪魔をする気だな!」
ジェイス「そんな趣味は俺にはねえよ」
以前ジェイスは依頼でコスを軍の拘置所送りにしたことがあり、それ以来コスな何かにつけてジェイスにイチャモンを付けて騒ぎを起こしていた。
コス「ふん。何を言う。そのご婦人にデートを申し込んだのは俺様が先だ。」ジェイス「マジで?」
驚愕の事実にジェイスは思わず素の口調でエルズベスに聞いた。
エルズベス「えっと。デートって言うか……」
コス「さあお嬢さん!そんな胡散臭い雀野郎なんてほって置いて、俺様と愛の逃避行と洒落込もうではありませんか!」
ジェイス「逃避行のドコがデート何だよ?彼女を犯罪者にでもする気か?あとテメエに胡散臭いとか言われたくねえよ」
大袈裟な動作でエルズベスをデート(逃避行)に誘うコスに、ジェイスは冷ややかにツッコミを入れた。
コス「五月蝿いわ!さあお嬢さん。こちらへ」
ジェイス「どうする?」
エルズベス「……ブンブン」
ジェイス「嫌だってさ」
ジェイスがエルズベスにコスの申し出を受けるかどうか尋ねると、エルズベスは力一杯首を横に振った。
コス「グググ。雀野郎、貴様やはり俺様の邪魔をする気だな!」
ジェイス「いや。完全に彼女の意志だろ」
コス「黙れ!どうせお前がそう言わせているに決まっている!お前等、今日こそは目に物見せてやれ!」
『『合点承知!』』
コスの命令で、取り巻きの二人は獲物(ククリ刀)を掲げジェイスに突進した。
ジェイス「やれやれ。ちょっと離れててくれ下さい」
エルズベス「あ、はい」
ジェイスはエルズベスを自分から遠ざけると大剣を抜いた。
『『死にさらせやあ!』』
取り巻き達がある程度近付いた所で
「地竜拳っ!」
拳を地面と擦り合わせる様に振り地を這う衝撃波を繰り出した。
『『ぎゃあああっ!!!』』
衝撃波の軌道上に並ぶように突撃していた二人は避ける間もなく攻撃を受け会えなく撃沈した。
『け、剣を抜いておきながら……』
『拳とは、卑怯な……』
ジェイス「……いや卑怯って言うなら拳以前の問題だろ」
ジェイスのツッコミに周りで見ていた通行人達も同意するように頷いた。
コス「全く情けない!こうなったら俺様直々に引導を渡してやる!」
ジェイス「だからそれはコッチの台詞だ」
コスは斧を振り上げると勢いよくジェイスに向かって走り出した。対してジェイスは特に行動する素振りはない。
コス「喰らえい!漢の唐竹割りい!」
コスはジェイスの頭に渾身の力を込めて斧を振り下ろした。
−−ドゴウッ−−
だがコスの攻撃はアッサリとジェイスに避けられ地面を穿るだけだった。
ジェイス「いい加減くたばりな!獣皇戦破っ!」
コス「ぶるうああああ!!!」
ジェイスの放った獅子の頭部の形をした闘気をモロに受け、コスは雄叫びを上げて吹っ飛んだ。結局ジェイスは抜いた大剣を一度も使うことなくコス一味を倒した。
その後、コス一味は駆け付けた軍により直ちに連行された。
ジェイス「ふう。全く。あいつ等ときたら毎度毎度……」
エルズベス「あ、あの!」
ジェイス「はい。なんでしょう?」
エルズベス「ジェイスさんって傭兵でしょうか?」
今までジェイスの闘いを静観していたエルズベスはジェイスに傭兵かどうか尋ねた。
ジェイス「傭兵、ではないですが。似たような仕事をしています」
エルズベス「似たような仕事?」
ジェイス「はい。なんでも屋『スパロウテイル』を経営してます」
エルズベス「なんでも屋……」
エルズベスは少し思案した後、
エルズベス「あの、お願いがあります」
ジェイス「引き受けましょう」
エルズベス「はやっ!?」
ジェイスは軍からの依頼があるにも関わらずエルズベスの依頼を内容も聞かず即引き受けた。
エルズベス「そ、そんな直ぐに決めて良いんですか?」
ジェイス「良いんです。女性からの依頼は断らない主義なんです」
エルズベス「は、はあ」
ジェイスのスタンスにエルズベスはア然した。
ジェイス「それで、どういった内容ですか?」
エルズベス「……人を、人を探して欲しいんです!」
−−この依頼が、ジェイスの運命を大きく変える事を、彼はまだ知らない−−
登場人物紹介
名前:ジェイス・B・スパロウ
年齢:19
性別:男
職業:なんでも屋
武器:大剣、拳
容姿:茶色の短髪。茶色の瞳。そこそこのイケメン
性格:女性に優しく野郎に厳しいエセ紳士。ただしマルコフは別。守銭奴まではいかいががめつい。
備考:街でなんでも屋『スパロウテイル』を営む青年。両親は幼い時に他界。両親と死別して直ぐに軍将校であるマルコフ大佐の元で生きる術を学んだ。女好きで金にがめつく依頼の優先順位は、
女性>高額報酬>>>マルコフ>超えられない壁>男性
職業柄戦闘することもしばしば。戦闘スタイルは剣術と格闘技を融合させたスタイル。
名前:ソリン・I・マルコフ
年齢:50
性別:男
職業:軍大佐
容姿:白髪混じりの黒髪を短く刈り上げている。瞳の色は黒。なかなかの燻し銀。
性格:厳格で規律に厳しいが優しい面もあり部下からの信頼は篤い。
備考:幼くして両親を亡くしたジェイスを独り立ち出来るまで育て上げたジェイスの後見人。独り立ちした今でも依頼と称して彼の様子を時折見に行っている。ジェイスに行方不明者の捜査を依頼。既婚者でさらにもうすぐ10歳になる孫までいる。
名前:エルズベス・T・リンドバーグ
年齢:17
性別:女
容姿:金の長髪に瑠璃色の瞳。肌は色白。かなりの美人
備考:ジェイスが街で出会った謎の女性。街でコス一味に追われていたところをジェイスに助けられる。ジェイスの強さを見込んでジェイスに人探しを依頼する。
名前:コス
年齢:33
性別:男
職業:山賊
武器:斧
容姿:ボサボサの黒髪で瞳の色も黒。不細工
性格:傲慢
備考:街の外れの山を拠点とする山賊の頭。ジェイスにより軍の拘置所に入れられて以来何かと彼にちょっかいを出す様になる。不細工だが筋肉質で攻撃にパワーはある。が動きが単調なため直ぐに見切られる。何故か取り巻きの二人から尊敬されている。
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