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エピローグ

あれから二日。

私は図書館裏に来ていた。

目の前には、散り始めた桜の木がある。

透和と出会った始まりの場所。

(だいぶ、散っちゃってるな……)

花よりも葉の割合が多くなった木を見上げながら思う。

思い出すのは、透和を初めて間近で見た、あの時のこと。



一年前、この桜の木の下で眠ってた透和。

あの時は一年後、こんな思いでこの桜を見上げることになるなんて、想像もしていなかった。

一度きりの遭遇だと思ってたから、次の日に待ち伏せされた時は本当に驚いた。

何でかその後も会うことになって。

そうこうしてる内に仲良くなって。

付き合うことになった。



思い返してみると、あの頃の私は何でも一人で考えすぎていたように思う。

大学に入って、飲み会なんかでいろんな人の恋愛の失敗談をたくさん聞かされるようになって。

“恋愛”に対して、どこかで臆病になってた。

“恋愛”は怖い。

そんな思いが先走って。

“恋愛”は一人で出来るモノじゃないのに。



――「一人で何でもかんでも完結させてんじゃねぇ!」



二日前に聞いた、透和の言葉が蘇って。

ふ、と口元に笑みが浮かぶ。



「――奈夕!」



名前を呼ばれ、振り返る。

振り返った先にいたのは、たった今まで思い出していたその人で。



「悪い、遅くなった!」



そう言って駆けよってくる透和。

その姿に、自然、頬が緩む。



「ううん、そんな待ってないから気にしないで。それより早く行こ。お昼終わっちゃうよ」



言って、私は笑顔で透和の下へ駆け寄った。




◇◇◇◇◇




期待しない。

信じすぎない。

深読みしない。



それが私が透和と付き合う上で決めた、傷付かないための三か条。




その三か条は、確かに私を守ってくれたけど。

それは同時に、透和を傷付けた。


相手を考えない、独りよがりな決め事だった。




ホントは、三か条なんかに頼らずに。

傷付くことを恐れずに。

ちゃんと向き合わなくちゃ、いけなかった。



それに気付けなくて。

私たちは、お互いがお互いを傷付けあった。

でも、今。

そのことに、ようやく気付けたから。



――きっともう、大丈夫。



END.


これで、「傷付かないための三か条」は終了です。

お付き合い、ありがとうございました。



このあとは、後日談的な話をいくつか出す予定です。


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