表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/33

会いたい(透和視点)

ネタバレが嫌いな方は、奈夕サイドの本編が終了した後に透和サイド(透和視点、とある友人視点)を読むことをお勧めします。


ガンッ。

苛立ちのままに、目に付いた看板を蹴り飛ばした。

派手な音を立てて転がる看板に、さらに苛立ちが増した。




あの、校舎裏で奈夕に逃げられた、あの日から。

奈夕のマンションに行っても。

文系学部の校舎に行っても。

大学のカフェテリアの行っても。

どこへ行っても。

奈夕と会うことは出来なくて。

もう一か月以上、奈夕に会えてない。


――避けられている。




最初は、一方的に避ける奈夕に怒りが湧いた。

――逃がすものか。

そう思った。

でも。




大学を辞めたわけじゃないのは、分かってる。

大学構内で奈夕を見かけた、と知り合いが言ってたから。

なのに。

会えない。



――気が変になりそうだ。





何でもいい。

どうでもいい。

とにかくムシャクシャして仕方なくて。

手当たりしだいに喧嘩を買った。

物に当たり散らした。





苛立ちのまま歩いていると、ついさっきの店での会話が、脳裏に(よみがえ)る。



――「今……なんつった?」

――「え?トウワ、さん?」

――「なんつったって聞いてんだよ!ああ?」

――「っ、あ……あの女が、トウワさんと別れてくれて、良かっ」

――「ざけんじゃねぇ!」

――「がァ……っ!?」



気付けば、殴り飛ばしていた。

そこからの記憶は、途切れてる。

周りがやたらと騒がしかった気もするけど。

正直、覚えてない。

ただ、目の前が真っ赤になって。

ひたすら暴れまくってた気がする。

意識がはっきりした時には、店の中がめちゃくちゃになって。

ふざけたことを抜かした男をボコボコにしてた。

カズが止めに入らなかったら、今もまだ殴り続けてたかもしれない。




「ははっ」



思い出して、笑いが漏れた。

自分の思いが常軌を逸してるのは、気付いてる。

この間、俺の喧嘩を見てたギャラリーの一人が顔を真っ青にして「狂ってる」と呟いてた。

きっと、俺の行動は周りから見れば“狂ってる”んだろう。

思えば、最後に見た奈夕の顔は真っ青だった。




大切にしてる、つもりだった。

誰よりも何よりも大切に。

でも。

“狂ってる”俺では、きっと大切になんて、出来てなかったんだ。

だから奈夕はあんなに真っ青な顔をして。

今でもずっと、俺から逃げ続けてる。




「はっ」



何だか無性(むしょう)に可笑しかった。




最初は、近くにいられるだけで良かった。

それだけで、満たされてた。

だけど。

会う回数を重ねるごとに、次第にそれだけでは我慢できなくなった。



奈夕にも俺が奈夕を好きなのと同じくらい、俺のことを好きになって貰いたかった。

好きになって貰いたいと、思ってしまった。



これは、高望みしすぎた(むく)いなんだろうか。



奈夕の笑顔が好きだ。

その笑顔を護りたいと思ってた。

なのに。



「……くくっ」



笑える。

そう思ってた俺自身が奈夕から笑顔を奪った、なんて。

どんな笑い話だ。




でも。

俺には奈夕を傷付けることしか、出来ないのだとしても。

俺は奈夕を諦めきれない。

自分でも、こんな俺なんかに好かれてしまった奈夕を可哀想だと思うけど。

それでも。





――なぁ、奈夕?



(会いてぇよ……)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ