プロローグ
期待しない。
信じすぎない。
深読みしない。
それが、あいつと付き合っていくために作った、傷付かないための三か条。
例えばあいつの誕生日。
驚いた顔が見たくて、内緒で料理を作ってあいつのマンションに行った。
そしたらあいつはいなくて。
【どこにいるの?】とメールしたら。
【さっき誘われて飲みに行くことになった】なんていう返事のメール。
それでも直接会って祝いたいと待ってたけど、結局夜の0時を過ぎても帰ってはこなくて。
夜中の1時、作った料理を一人で食べて、ケーキを持って家に帰った。
【今日中には帰れると思う】
帰れるって断言してたわけじゃないものね。
例えばクリスマス。
イブ前日になって、「試験のために友達と勉強会をすることになった」と言われ、予約はキャンセル。
私は一人、買ってあったクリスマスケーキを食べた。
後日、友人からクリスマスの日、女の子と二人で楽しそうに買い物をしているあいつを見た、と聞かされた。
友達の性別も、勉強会をする人数も聞いてなかったし、まぁ嘘は言われてないのかもね。
例えば正月。
正月は家族と過ごすからって、特に約束はしてなかった。
私の友人たちは皆、恋人や家族と予定が入ってて、両親は年明けそうそう仕事。
暇を持て余して、初詣にけっこう大きな神社まで足を伸ばした。
参拝するための長蛇の列に並びながら見つけてしまったのは、五列ほど前に並ぶあいつと女の子。
年の近い従妹がいるのかもね。
後日あいつに聞いたら、年の近いイトコは全員が男だと言われた。
……。
そろそろ、潮時なのかもしれない。
傷付かないための三か条は、確かに私を護ってくれたけれど。
それでも全く傷付かなかったわけじゃない。
悲しくなかったわけじゃない。
もういい加減、限界だった。