宣戦布告、いたしましょう。
やっと2話目を書くことができました……
ここ1年で大国ベネジルトは急成長を遂げた。
貿易、戦力、富――――全てにおいてトップを誇り、ついに二月ほど前、世界征服をも果たした。
そんな大国の使者が先日、天候を司ることだけがとりえのこの小国ソノスタジオに訪れた。
曰く「お前の娘の第6王女を嫁に欲しいと世界王は申されている」。
「はぁ…………」
娘の身を案じて、王は深く溜め息をつく。
断りたかったもののあそこで断れば、一瞬でこの国は……この小国は潰されるだろう。
しかし何故世界王はわざわざ「第6王女」と指定したのだろうか。
ルーノアを知っていた?
…………まさかな。
王は頭を振った。
「しかし――――」
王は玉座の上で一人呟く。
「あの子は本来なら――――――」
そこまで言って言葉を切る。
老いた彼の瞳は、その時だけは鋭く光っていた。
「……来たか」
彼はそう言うと微かに笑い、その場をあとにした。
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「あーーーづーーーいーーー」
さんさんと太陽が降り注ぐ中、砂漠の真ん中で少女は一人、呟く。
この灼熱に焼かれ続けてもうかれこれ5時間にはなる。
彼女の国から大国ベネジルトに行くには、必須的に通らなければ行けないのがこのムーヴィルの砂漠――――通称、永久の砂漠、だ。
少女――小国ソノスタジアの第6王女ルーノアは、太陽を睨もうとして直視できず、そのまま歩みを止めない駱駝の首に無理矢理しがみついた。
「お前、よく暑くないなーー。いや、暑いよな。お前は偉いんだよな……」
ルーノアはそう言うと気を取り直して居住まいを正す。
普通、一国の姫の外出となれば、護衛などが付くはずだが、彼女にとってそれはいても居なくてもいい存在だった。というのも、元から剣術に長けていた上に体術もここ数年のうちに取得し、国で催された武道大会では準優勝という成績を収めたほどだからだ。
それがあってか、彼女の父も彼女が「一人で行きたい」と言ったとき、特に何も言わなかった。
「はぁ……にしてもいつになったら日が沈むんだ……。今日はそこらで野宿だな」
彼女はそう言ってふと、違和感を感じる。
「…………?」
前方をじっと、目を凝らして見つめる。
――――なんか黒いモノが…………。
そう思ってルーノアは、はっとした顔になる。
「……これはヤバイ」
ぼそりと呟く。
――――確かベネジルト付近には砂漠でも生きていける種類の狼がいるよな……。
ルーノアが考えるそぶりを見せたのは一瞬で、すぐに決心したのか駱駝から降りる。
「お前はもう気付いてると思うけど、危険生物が前方から来るからこっからは私がお前を引いてくな」
駱駝に笑いかけながらゆっくりと手綱を引き歩く。
――――6匹……?いや……7匹か…………。ちょっとキツイかもなぁ……。
暑さで流している汗とはまた違う種類の汗が背中を伝う。
――――もうそろそろか。
「悪い、ちょっと待っててな」
彼女は駱駝の頭をぽんぽんと軽く叩いて、自分だけ狼の方へと歩いていく。
右手にはしっかりと剣が握られている。
狼との間合いが6mに到達すると、彼らは一瞬にして彼女を取り囲む。
「グルルルルルルルッ……」
低く唸り、標的を確認するようにゆっくりと彼女の周りを回る。
「…………人肉なんて喰っても上手くないっての」
彼女はそう言って剣が届きそうな位置を想定していく。
そして――――
「――――っ!!!」
狼が彼女に向かって一斉に飛び掛る。
ルーノアはそれを紙一重で次々にかわすと、瞬間的に一匹の狼の腹を剣で斬りつける。
「キャインッ」
犬のような泣き声を上げたかと思うと、そのままバタッと砂の上に倒れる。
「…………一匹でこれじゃあ骨が折れそうだな……」
ぼそり、とルーノアが呟く。
ルーノアが狼を一匹斬りつけると、仲間の狼達が一層いきり立った。
怒りを露にして、彼女に再び飛び掛る。
直感で狼達を切りつけるが、どうしても隙、という物は誰しも出来てしまう。
「っ…………!」
左腕に熱が迸った。
脳で理解するより先に身体が動く。
「キャインッ…!」
反射的に、左腕についているものを切り付ける。
彼女の腕に噛み付いていた狼は、赤い液体を撒き散らして、ボトリと落ちた。
じわじわと衣類に赤いシミが出来ていくのを横目で見ながらあと2匹となった狼を見据える。
あとの5匹は腕を噛まれる直前までに斬りつけていたらしく瀕死状態に陥っている。
「……厳しいな……」
口の中でボソリと呟く。
折角ここまで来たのにこんな事でくたばってしまっては、今までの苦労が水の泡だ。
自分にそう言い聞かせ、気持ちを奮い立たせようとする。
しかし、現実は彼女に厳しかった。
「!!」
運悪くルーノアはあまりの暑さに今更目眩を起こしたのだ。
すると、その隙を待っていたかのように2匹の狼が彼女に飛び掛り――――
「キャインッッ」
しかし、予想に反し2匹の狼は彼女に届く前に倒れた。
「…………?」
まだ少し目眩が残るのも無視し、振り向く。
そこには、短髪の眼鏡をかけた男が3人の護衛を連れて立っていた。
「はじめまして、ルーノア姫。私はサクレンと言います。アルリード王の補助をさせていただいているものです。本日は、ベネジルトにお越しいただきありがとうございます。迎えの者を向かわせたはずだったのですが、遅かったようで、この様な事態になり大変申し訳ありません」
サクレンと名乗った男は一方的にそう言ってルーノアに笑いかけた。
「…………」
「とりあえず手当てをする為に早く都に入りましょう」
「……はぁ……」
有無を言わせぬようなはっきりとした彼の口調にとまどいながらも従う。
こうしてなんとかルーノアはベネジルトに生きて着く事ができたのだった。
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「おぉ!!すごい!!!」
思わず馬車から顔を出す。
街は人々の活気に満ち溢れており、そこかしこで歌や楽器の音が聞こえてくる。
まるで祭りでもやっているかのようだ。
「そういっていただけると光栄です。……つい最近まではこのように活気ある国ではございませんでしたが、しかし、我らの王がたった2年で立て直したのです」
サクレンは本当に嬉しかったのか少し声に熱っぽさがこもっていた。
「すごいな!……じゃなくて……すごいですね!!アルリード王がどんな立派な方か、楽しみになってきました」
これは本音だ。
ついさっきまでは本当に嫌で仕方がなかったが、こんな活気溢れる街を作り上げることのできる人だ。
(多少は)立派な王なのだろう。
「それは、王もきっとお喜びになるでしょう」
彼はそういうとにこりと笑った。
しばらくして馬車が止まった。
「着きましたよ。……ようこそ、我がミナチール城へ」
サクレンが改めて、というようにかしこまり優雅に礼をする。
「……すご…………」
その城は彼女が想像していたものより遥かに立派だった。
ここから結構ギャグが入っていく……かな((